『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ポール・キング監督にインタビュー!
最新映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』がいよいよ12月8日(金)から日本公開となる。tvgrooveは今作を手がけたポール・キング監督に来日インタビューを実施。作品に込めた思いや、製作の裏話などについて語ってもらった。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、ティム・バートン監督による映画化作品『チャーリーとチョコレート工場(2005)』でもおなじみ、ロアルド・ダールによる児童書「チョコレート工場の秘密」の登場人物ウィリー・ウォンカの若き頃を描く物語。ウィリー・ウォンカをティモシー・シャラメ(『君の名前で僕を呼んで』『DUNE/デューン 砂の惑星』)が、オレンジ色の小さな紳士のウンパルンパをヒュー・グラント(『ノッティングヒルの恋人』『ラブ・アクチュアリー』)が演じている。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』にはたくさんの夢をもらえたし、幸せな気持ちになりました。『夢のチョコレート工場(1971)』『チャーリーとチョコレート工場(2005)』と二度映画化された名作の前日譚となりますが、今作のプロジェクトはどのようなきっかけで始まったのでしょうか。
キング:今作のはじまりは、僕の前作『パディントン2』が終わったあと、プロデューサーのデイビッド・ヘイマンが僕に今後の予定を聞いてきたときのこと。「この後は空いているよ」と答えるとデイビッドは「君に2単語だけ伝えてあげよう。“Young Wonka(若い頃のウォンカ)”だ」って言ったんだよ。
「最高だ」と思ったけど、過去にも二度映画化された名作ということもあって「いったん考えさせて」と伝え、児童書「チョコレート工場の秘密」を読み直したんだ。この本は小さい頃読んだことがあったんだけど、ウィリー・ウォンカやウンパルンパみたいな非常に愉快でちょっとグロテスクなキャラクターがいることくらいしか覚えてなくてね。
読み直してみたら、今作が非常に深くてエモーショナルな物語だということを思い出した。飢え死にしそうな貧しい少年チャーリーが最後にはチョコレート工場を引き継ぐことになるんだけど、僕は読みながら涙ぐんでしまったよ。こんなにすばらしいキャラクターとファンタジーにあふれ、最高のコメディにあふれた作品だなんて、完全に忘れていた。「これは僕がいつも映画作りをしながら目指している作品だ」って思わされたんだよ。
ティモシー・シャラメがウィリー・ウォンカ役に抜てきされた理由は?ウォンカ役を演じた彼はいかがでしたか。
キング:ティモシーはすばらしい俳優だよね。僕が初めて彼を観たのは『君の名前で僕を呼んで』だった。その時点ですごい俳優だとは思ったけど、「彼がこの映画の役に適役だっただけという可能性はある」とも思っていた。でも次に『レディ・バード』で彼を見たとき、全然違う役で、再び最高の演技を見せていた。それで僕は「彼は本当に最高の俳優なんだ」と実感させられたんだ。それからもティモシーは各出演作で、それぞれ異なるキャラクターに挑戦し、毎回すばらしい演技を残してきている。
だから今回彼を選んだのは最高のキャスティングだったと思っているけど、ウィリー・ウォンカ役への挑戦は彼にとっても大きな決断だよね。若い頃を演じるとはいえ、ウォンカというキャラクターはジーン・ワイルダー、ジョニー・デップという偉大で優秀な俳優たちが演じてきた役なんだから。大きな一歩だったと思うけど、輝かしい演技で応えてくれたよ。
温かみのある映像と奇想天外な出来事が両立された今作には最新の映像技術もたくさん使用されていると思いますが、VFX(視覚効果)とリアル撮影はどのくらいのバランスで行なったのでしょうか。また、ロケーション撮影はどれくらい行われたのでしょうか。
キング:船が停泊する港はロケーション撮影だし、最後の広場のシーンはオックスフォード大学の図書館エリアで撮影したよ。
コロナ禍だった影響もあるんだけど、物語の世界を再現するために大量のセットを建築して撮影したんだ。僕らは「現実に作れるものはすべて作ろう」という方針で作業を行った。“触感”ってすごく大事で代わりが利かないものだと思っているし、チョコレートって文字通り食べられるものだろう?観客のみんなには“現実味”を感じてほしかった。
VFX(視覚効果)とリアル撮影のバランスは、片足をファンタジーに突っ込みながら片足でリアルを感じるくらいに保ったつもりだよ。すべての映画でこのバランスが適切だとは思わないけど、ロアルド・ダール(原作者)の世界観を構築するにあたっては正解だったんじゃないかな。
ロアルド・ダールの児童書「チョコレート工場の秘密」は、1971年版、2005年版と二度映画化されていますね。今回の映画からはウンパルンパのデザインや彼の歌曲など、1971年版を思わせる要素を多く感じましたが、キング監督の中で、これら二本の映画はどのような位置付けにあるのでしょうか。
キング:1971年版も2005年版もすばらしいと思うし、どちらの映画も真摯(しんし)に原作に向き合ってそれぞれのアプローチで映像化した作品だと思う。ただ僕は世代的に、1971年版を観て育っているから、どうしても1971年版の影響を強く受けているね。緑髪で顔がオレンジ色なウンパルンパのデザインとかね(笑)
でも今回は過去を描く映画ということもあって、僕は(映画ではなく)ロアルド・ダールの原作に立ち返って今回の映画を作ったんだ。幸運なことにダールのアーカイブでも長い時間を過ごさせてもらえたから、ダールがウィリー・ウォンカというキャラクターを詳細に掘り下げて作り上げたこともわかった。本にはなっていない話もたくさんあったんだ。ダールはウォンカの過去や、チョコレート工場を譲ったあとにどうなるかについても考えていたんだよ。
だから僕たちはそれをもとに、「もしダールが若い頃について本を書いていたらどうなっただろう、どんな格好をさせただろう」と想像しながら今回のウォンカを作り上げたんだ。
悪役たちもとてもチャーミングでしたが、その愛嬌は監督のこだわりでしょうか。
キング:僕は彼らがとても自己中なところも魅力的で面白いと思う。ダールの原作のすばらしいところは、悪者がとことんワルなところなんだ。そこがすごくおもしろいんだよね。
原作のテーマも今回の映画と同じく“欲望”だけど、悪党3人組(チョコレート組合)にはそれぞれ異なる欲望を反映させたよ。スラグワースは権力のあるビジネスマンであることにこだわっているし、フィクルグルーバーはおしゃれ服を着て、すてきな物をなんでも買えるお金持ちでありたいと望んでいる。プロドノーズは彼ら権力者集団の一員であることが何より大事で、警察署長はチョコレートが大好きだ。
どん欲さをそれぞれ異なる形で表現したつもりで、おもしろくなっているんじゃないかな。
本作は夢見ることの大切さ、ピュアな思いということがテーマになっていますが、亡き母の約束を叶えようとするウォンカと、夢見る少女ヌードルにはどのようなメッセージを込められたのでしょうか。
キング:1971年版の映画で流れる「Pure Imagination」という曲に興味を持ったんだ。夢を見ることは自由だし、夢は願えば叶うものだって歌っているよね。今回の映画でも、ウィリーは母親から「すてきなことはすべて夢見ることから始まる」「夢を持ち続けなさい」と言われる。
でも今回の映画では、「夢は必ずしも願っていれば叶うわけではない」ということも描いているつもりなんだ。僕の娘がいくら「他の惑星に住みたい」と言ったって、たぶん実現しないしね(笑)
「Pure Imagination」は“夢は願うだけでいい、簡単に叶う”と歌うけど、僕はそこには反対だ。夢が願うだけで叶うとは思わない。この世は人々に試練を投げかけるから、何もせずに叶えられる夢なんかないんだよ。壁に立ち向かって、世界を変えようと戦わなきゃいけない。それが夢の実現につながるんじゃないかな。
(インタビュー終わり)
夢へのエネルギーと目を奪われる魔法にあふれた最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はいよいよ12月8日(金)から日本公開。