「老後は夫婦でのんびり暮らしたい」そんな風に定年退職後の豊かな暮らしを夢見ている人は少なくないでしょう。しかし、事前準備を怠っていると、いざ老後を迎えたとき理想と現実の違いに落胆するだけでなく、最悪、老後破産を迎えることになるかもしれません。今回は、実際に起こった老後生活のエピソードを交え、老後破産を防ぐために必要な準備について考えていきます。

年金生活にまさかの落とし穴!生活水準を落とせない妻

Tさんのお宅では、ご主人がお金を管理していました。ご主人が仕事をしているうちは収入もそこそこあったので、Tさんが高い買い物などをしても、特になにも言わずお金を出してくれていたそうです。

ところが貯金と年金で生活するようになってからは、「人生長いし、さすがに今まで通りでは先々に不安がある」ということで、ご主人も節約をすすめるようになりました。けれどTさん自身は、急に節約と言われてもなかなか生活水準を落とせず、そのことでご主人と喧嘩になることも増えたそう。

最終的には「早いうちから老後について話し合い、認識を共有しておけばよかった」とお互いに反省したようです。

老後資金3000万が1年で…準備万端に見えた夫婦の大誤算 

職業人生の最初から最後まで大手メーカー1社で勤めあげ、潤沢な退職金や年金で老後資金は万全、念願だった老後の暮らしを夫婦で満喫していたはずのMさんですが、わずか数年でお金の悩みを抱えてしまったのです。

年金暮らしのMさん夫妻の年収は2人合わせて250万円ほどですが、会社の退職金が約2,100万円ありました。さらに、子どもが独立し結婚したこともあって、退職のタイミングでそれまでかけていた生命保険を思い切って解約、解約返戻金として約700万円を受け取ったことで、預金残高は退職前の約300万円から、突如3,000万円を超えました。

「老後2,000万円」と聞いて頭に残っていたMさんは、これなら余裕を持った暮らしができそうだと、現役時代はなかなか行けなかった夫婦水入らずの海外旅行や憧れの豪華クルージングなどに頻繁に出かけるようになります。

とても楽しく過ごしておられたようですが、急に旅行や孫へのプレゼントにつぎこむようになった2人を見た息子さんが不安に思い確認したところ、支出が収入を大きく上回っていて貯金をハイペースで崩していっている状態だということがわかりました。

老後に貯金を崩していくのは普通のことですが、Mさんの場合、65歳の退職時に3,000万円あった貯金はわずか3年で2,000万円を切りました。この調子で行けば70代後半、女性の平均寿命より10年早い段階で貯金が完全にゼロになります。