減税や給付金、各種の優遇措置のニュースで必ずと言っていいほど登場する語句が「住民税非課税世帯」です。

文字通り、住民税が課税されていない世帯のことですが、どのような世帯が該当するのでしょうか。今回は住民税非課税世帯の仕組みや対象となる世帯について解説します。

■住民税の仕組み

住民税とは、都道府県民税と区市町村民税をあわせた税金の呼び名です。地方自治体に納められる税金で、地方行政の財源となります。具体的には地域の教育や福祉、ごみ処理、消防・救急といった公共サービスの維持などに使われます。

税率は自治体によって異なりますが、一般的には都道府県民税が課税所得の4%、区市町村民税が6%となり合計10%で計算されます。

●税額は前年の所得で決まる

住民税の金額は前年の所得によって決まります。2023年の住民税額は2022年の所得に基づいて決定するのです。

納付先は1月1日段階で居住している自治体です。サラリーマンの場合は給与から天引きされ、会社が納税します。個人事業主などは自治体から送られてくる納付書で納税します。

●課税方法と税額

課税方法は所得割と均等割の2つです。

所得割とは、1年間の所得に応じて税額を計算することです。先ほどあげた税率は所得割の税率です。年収から扶養控除や社会保険料などの各種控除を差し引いた残りが課税所得ですが、これに先ほどの税率をかけて税額が決まります。

年収300万円で各種控除が90万円であれば残りの210万円が課税所得となり、そのうち21万円が住民税となります。

一方、均等割は所得に関わらず一律で支払う住民税です。こちらの金額も自治体によって異なりますが、標準金額は都道府県民税が1,500円、区市町村民税が3,500円の合計5,000円です。

■どんな世帯が非課税になるの?

住民税が非課税となるパターンは2つです。所得割のみ非課税となるケースと、所得割・均等割ともに非課税となるケースです。

●所得割のみ非課税となる世帯

・同一生計配偶者や扶養親族がいない世帯で、課税所得が45万円以下(給与所得だけなら100万円以下)の世帯 ・同一生計配偶者や扶養親族がいる世帯で、35万円×世帯人数(本人・同一生計配偶者・扶養親族)+42万円を下回る世帯

上記の条件に当てはまる世帯は、所得割が非課税となります。

●所得割も均等割も非課税となる世帯

・生活保護を受けている世帯 ・障がい者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の課税所得が135万円以下の世帯 ・前年度課税所得が各自治体の定める基準を下回る世帯

上記の条件に当てはまる世帯は所得割も均等割も非課税となります。いわゆる「住民税非課税世帯」は所得割も均等割も非課税となる世帯をさしますので、かなり条件が厳しいことがわかります。

■万が一に備え、非課税世帯について学んでおこう

現在、非課税世帯でない人にとっては、今回の知識はあまり必要ないものに思えるかもしれません。

しかし、社会情勢が激変する現代において、いつ何時、自分の収入が大幅に減少してしまうか予想がつきません。万が一の事態が起きたときに備え、住民税の基本や非課税世帯の優遇措置について把握しておいた方がよいでしょう。

文・馬場正裕(ファイナンシャル・プランナー) 高校教師・学習塾・予備校の講師を経て、現在は金融・保険などのマネー系Webライターとして活動中。主に、金融メディア、SDGsメディア、教育メディアに出稿している。