自身のショーで本音爆発?
コメディアンのジョー・コイがゴールデン・グローブ賞で司会を務めて以来初のスタンドアップ・コメディ・ショーを行った。
ゴールデン・グローブ賞授賞式で司会を務めたコメディアンのジョー・コイ(52)が、自身のツアー「ジョー・コイ ワールド・ツアー」のセントルイス公演で、授賞式以来のショーを行った。
コイは先日の第81回ゴールデン・グローブ賞で司会を務めたが、『バービー』と「ブービー(おっぱい)」をかけたジョークや、テイラー・スウィフトの恋愛関係をネタにした発言が批判の対象となり、ワイドショーで「変なジョークになってしまった」と発言していた。
【動画】授賞式オープニングセレモニー
「俺たちは、俺たち自身を笑いのネタにしてもいいか?」
吹雪によるフライトの遅延によってショーの開始に遅れながらも、熱狂的なスタンディング・オベーションで迎えられたコイ。「なんてこった、これだよ。お前たちがくれるこのビッグなハグが、俺には本当に必要なんだよ」と、アウェーな授賞式を経験した後の彼は、ファンの温かい歓迎を喜んだ。
ゴールデン・グローブ賞で過激なジョークが批判されたことを受けたコイは「たくさんのマシュマロってさ、美味いよな。でもクソ柔らかいんだよ。俺は違う時代から来たから、時代の変化を目撃してるよ。わかるけどさ…クソ…」と、トガった笑いを良しとせず、攻撃的なジョークを批判する現代の風潮を“柔らかい”と表現し悔しそうなコイ。
彼は会場に「俺たちは、俺たち自身を笑いのネタにしてもいいか」と、会場に自分をネタにされて怒る人はいないかどうかを皮肉にも確認し、観客からは拍手と歓声が。会場の誰かが「あいつらなんかクソだ」と叫んだ。
授賞式で気を悪くした様子だったテイラー・スウィフトをはじめとし、自分がネタにされることを笑いにできない人々とジョー・コイ(とそのファン)の間には大きな価値観のギャップがありそうだ。もっともその賛否以前に、テイラーに関しては“過去から恋愛ネタでバカにされ続けた”というバックグラウンドもあることを考慮したいが…。
「言いたいことを言えるし、一切謝る必要はない」
コイは「ここのバカどもに(授賞式を)観たやつなんて1人もいなそうだな、ちょっと嬉しいよ。いや〜この国で生きるのは気持ちいいね。言いたいことを言えるし、一切謝るような必要はないんだ。自分の意見を言える人間であれ」と、“自由の国”ことアメリカでは言いたいことを言えばいいと持論を述べた。
実際、地元の観客も多いであろうセントルイス公演で「ちょっと聞きたいんだが、マジメな質問な。お前らなんでここで暮らしてるんだ?クソ寒いぞ!こんな場所、無人であれよ」と“地元いじり”をするなど、ショーの内容はブラックジョーク満載だったようだ。
天気から携帯電話、年齢を重ねることまでさまざまなジョークを飛ばす中、彼は文化的な感受性や過敏な受け取り方、その影響についても語った。
「ここセントルイスには、君の話を聞いてくれて、理解してくれる人がいて、お互いを攻撃し合っているわけではないってわかるだろ。LAはバカだよ」と、攻撃ではなくジョークのつもりだった発言が受け入れられなかった授賞式に不満を抑えきれない様子のコイ。また、観客との会話の中では「え、君が何の民族か当ててほしいって?嫌だよ、もう今週はトラブルに巻き込まれたんだから」と、厳しい世間の倫理観をネタにするような発言でも笑っていた。
「可能な限り失敗しろ!挽回すればいい」
のびのびショーを楽しむコイが「ああ、本当に楽しいよ」と漏らすと、観客は大きな拍手で答えた。彼は「俺、ここ4日間笑えなかったんだよ。本当に幸せだ。お前らは俺を幸せにしてくれるね」と自身の笑いを愛してくれるファンに感謝するのだった。
コイは“失敗はいくらしてもいい”という価値観を観客にシェア。「誰もがクソみたいな経験をする。誰もがクソみたいな家族を持ってる。俺たちは全員クソだ。完璧なやつなんていない」「お前らには失敗する権利がある!可能な限り失敗しろよ!挽回すればいいんだよ」と持論を展開した。
「リスクを冒せ。リスクなしには、どんな可能性があるか知ることすらできないぞ。俺は戻ったぞバカども!あんなリスクの後にな」と、自身の苦難を振り返りながら観客に訴えかけたコイは、「楽しいショーだったぜお前ら。これが欲しかったんだ。これはセラピーだよ。お前ら愛してるぜ。本当にありがとう」と最後まで感謝の言葉を口にしていたという。
“いじり”的な発言や、攻撃・悪口がジョークとして受け入れられてきたコメディアン界。多様性や社会的弱者の権利を重視することでコンプライアンスが厳しくなった現代、アップデートされた価値観によって自分や他者を守ろうとする者もいれば、突然の風潮の変化に戸惑う者もいる。今後もしばらくは「ジョークの内容」が論争の火種になるかもしれない。