冷静なガーウィグはジョークにも持論でまっすぐ対応冷静なガーウィグはジョークにも持論でまっすぐ対応

バービー』監督のグレタ・ガーウィグが、第81回ゴールデン・グローブ賞での司会者のジョークについてコメント。最新作「ナルニア国物語」のプロジェクトに関しても語った。

グレタ・ガーウィグ監督(『バービー』『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』)がBBCのラジオ番組「4’s Today」に登場。ゴールデン・グローブ賞での出来事や、今後のプロジェクトについてインタビューに応じた。

グレタ・ガーウィグ監督作品『バービー』は、2023年に14億4,200万ドル(約**円)世界興行収入を記録。今作は今年のゴールデン・グローブ賞から新設された興行成績賞を受賞した。

「『バービー』を作ったチームと一緒にステージに上がれたのはとてもすばらしく、感動的だったよ」と、ガーウィグも心から光栄に感じているようだ。

ガーウィグは「(『バービー』は興行成績賞に)とても似合ってると思った。私たち全員がもっとも望んでいたのは、人々とつながり、映画自体や映画館での経験を共有してもらうことだったからね。(興行成績賞は)新たな賞だけど、我々が望んだそれを称える賞のように感じたし、それこそが私たちが常にやりたかったことだった」と、『バービー』を映画館で共有した人々が作品を盛り上げ、それが興行成績賞につながったことの達成感を噛みしめた。

物議をかもした『バービー』ジョークについて

しかし、第81回ゴールデン・グローブ賞授賞式では物議をかもす一幕もあった。司会者を務めたコメディアンのジョー・コイが、“セクハラじみたジョーク”を口にしたのだ。

彼は『バービー』と『オッペンハイマー』を比較し、「(『オッペンハイマー』は)マンハッタン計画に関する、ピューリッツァー賞を受賞した721ページにおよぶ本に基づいており、『バービー』が基づいているのは大きなおっぱい(ブービー)があるプラスチック人形だ」と発言したのだ。

他の部分では笑いが起きていた会場も、「バービー」と「おっぱい(ブービー)」をかけてネタにするようなジョークには誰もが気まずそうな表情・不快そうな表情・完全な真顔といったリアクションを取り、笑い声が会場を満たすことはなかった。

その後も空気はなかなか好転せず、会場全体が映った時にはセレーナ・ゴメスが「もう見てられない」といったリアクションをとる様子なども確認できた。

ケン役ライアン・ゴズリングもなんともいえない表情で困っていた(Golden Globes / YouTube)

ケン役ライアン・ゴズリングもなんともいえない表情で困っていた(Golden Globes / YouTube)

しかし、話題がこのジョークに及んでも、ガーウィグが動じることはなかった。

「まあ、彼の言葉に間違いはないよね。彼女(バービー)は(大きな)胸と共に大量生産された人形の元祖だから、彼は正しいよ。そしてご存知のとおり、今作のプロジェクトはプラスチック人形に基づくものだから、見込みのなさそうなプロジェクトだったかもしれないね。バービー(人形)自体の構造・作りにはキャラクターも物語性もなく、彼女は物語に投影されるモデルでしかないもの」とガーウィグは冷静に分析。

『バービー』が“胸やお尻は大きく、スリムで足が長い”といったステレオタイプな理想を具現化された人形であることは映画の中でもネタにされている事実であり、今作には『オッペンハイマー』のような原作小説がないことも事実であるため、ジョー・コイの発した言葉自体が間違っていないという見解には納得だ(そのジョークを発するべきであったかはさておき)。

しかし、原作小説がなく“ただの人形”だったからこそ深い洞察のある映画が誕生したこともガーウィグは明かしている。

「(バービーを作った)ルース・ハンドラーが赤ちゃん人形で遊ぶ娘を見ていたときに気づいた洞察は、『娘は母親ごっこをしたがっていない』『彼女は大人の女性になりきりたがるの』ということ」と、バービーは子どもが憧れる“大人の女性”として作られたことを説明するガーウィグ。

続けて「バービーは1959年から存在してる。彼女は悪役であると同時にヒーローでもあった。そこには一見表面的な事柄しかないけど、ある意味では(映画プロジェクトを)始めるのにとても豊かな場所だと感じたの」と、女性を縛りつけたステレオタイプでもあり、女性が憧れたスターでもあった“バービー人形”に、ガーウィグは物語の大きな可能性を感じたのだった。

Netflix版『ナルニア国物語』のプロジェクトについて

そしてグレタ・ガーウィグには今後のプロジェクトも存在する。それがNetflix(ネットフリックス)による、C・S・ルイスの人気児童小説「ナルニア国物語」の映像化プロジェクトだ。

「私は『ナルニア国物語』に本当に深い畏敬の念を持っているので、ちょっと恐怖も感じてるんだ」「私は子どもとして『ナルニア』が大好きだった。大人としては、C・S・ルイスは思想家であり作家。私は今作を手がけることを怖がってる。それは(関わる人間を)怖がらせるくらい、価値の高いことだと思ってるの」と、あまりに有名な今作に手をつけることは名監督グレタ・ガーウィグですら恐れをなす仕事のようだ。

「特に私は非イギリス人(アメリカ人)の立場なので、作品を適切に作りたいという感覚を感じてるの…たとえばアメリカ人がシェイクスピアをやるとき、そこには『我々は特別な注意を払って扱うべき』というようなちょっとした畏敬の念があるのと似た感覚。シェイクスピアも自国の人ではないからね」と、イギリスの名作小説をアメリカ人の立場で手がけるということも恐怖の理由になっているようだ。