『屋根裏のラジャー』の主題歌を担当したア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセル『屋根裏のラジャー』の主題歌を担当したア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセル

『メアリと魔女の花』などで知られるスタジオポノックの最新作『屋根裏のラジャー』が12月15日(金)より公開となる。tvgrooveは同作の主題歌を担当したア・グレイト・ビッグ・ワールド(AGBW)イアン・アクセル(※)にインタビューを実施した。

※共に主題歌を担当したAGBWのチャド・ヴァッカリノレイチェル・プラッテンは不在。

彼の名はラジャー。世界の誰にも、その姿は見えない。なぜなら、ラジャーは愛をなくした少女の想像の友だち≪イマジナリ≫。しかし、イマジナリには運命があった。人間に忘れられると、消えていく。失意のラジャーがたどり着いたのは、かつて人間に忘れさられた想像たちが身を寄せ合って暮らす≪イマジナリの町≫だった―。残されたのは無力な自分と、ひとりの少女の記憶だけ。「屋根裏の誓い」の真実が明らかになるとき、ラジャーは、大切な人と家族の未来を懸けた最期の冒険へと旅立っていく――。(『屋根裏のラジャー』公式HPより)

ア・グレイト・ビッグ・ワールドといえば、クリスティーナ・アギレラとデュエットしたシングル「Say Something」が、「第57回グラミー賞授賞式」にて<最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)賞>を受賞した実力派男性デュオ。かねてより彼らのファンであった『屋根裏のラジャー』のプロデューサーである西村義明氏は、彼ら以外に本作の主題歌を担当する者はいないと確信し、楽曲提供をオファー。西村氏の熱いラブコールに感銘を受けたAGBWはオファーを快諾、そして見事「Nothing’s Impossible featuring. Rachel Platten」が完成した。

本インタビューでは、西村氏からオファーを受けたときの心境、「Nothing’s Impossible」に込めた想い、客演として参加したレイチェル・プラッテンとの知られざる関係、ア・グレイト・ビッグ・ワールドの今後の計画など、余すことなく質問。筆者の質問に対し、真摯にそして丁寧に答えてくれたイアンのインタビューをとくとご覧あれ。

―久しぶりの来日ですが日本はいかがですか。

日本が大好きなんだ。9年前に来日して以来、ずっとここに戻りたいと思っていた。長らく待たせちゃって申し訳ないと思っている。だけど、前回の来日では本当に本当に感動したし、日本にいるファンとのつながりを強く感じた。また戻ってこられて本当にうれしいよ。

幼少時は大のゲーマーだった!?

―インスタグラムのストーリーに京都での様子を投稿していましたね!京都にはプライベートで行かれたのですか?

@agreatbigworld / Instagram

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休みの日があったから、京都に行ったんだ。電車で京都に行って、任天堂の建物の前を歩いた。僕は大のゲーマーで、「スーパーマリオ」や「ポケモン」「ゼルダの伝説」といったビデオゲームをして育ったんだ。だから、任天堂の旧社を見ることができて本当にすばらしかったよ。僕は自分の子供時代を思い出させてくれるものが好きで、そういったものを大切にしようとしている。大人になっても子供のような気分を持つことは重要だと思うんだ。

―カビゴンの写真に「僕がポケモンだったら…」と書いていましたが、特にカビゴンがお好きなのですか?

カビゴンが大好きなんだよね。僕も寝るのが好きだから(笑)。

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2児の父として『屋根裏のラジャー』の内容に共感した

―今回、12月15日(金)に公開される新作アニメーション映画『屋根裏のラジャー』のプロデューサーである西村義明氏たっての願いで主題歌を担当することになりましたが、オファーを受けたときの心境を教えてください。

とても光栄に感じたよ。僕は西村さんと彼の仕事を尊敬していて、彼は映画や僕らの音楽について本当に美しい手紙を書いてくれたんだ。(映画とAGBWの曲が)なぜマッチすると感じたのかについてもね。彼の手紙にはとても感動した。そして、僕たちはZoomで彼と話し、映画のテーマについて話し合った。それから脚本を読んで、2人の子供を持つ父親として、いま自分が置かれている状況にとても共感したんだ。僕は本当にこのプロジェクトの一員になりたかったし、映画のメッセージについての曲を書きたかった。6歳の息子にもぴったりの話だしね。

©tvgroove

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―西村氏は「歌」よりも「声」を重んじ、AGBWに主題歌のオファーをしたとのことですが、オファー時、歌詞や歌のテイストについて何かリクエストはありましたか?

うん。彼が僕の声や僕たちの曲作りについて惹かれたのは、僕たちが作曲するとき、そして僕が歌うとき、どれだけ脆く、できるだけリアルで生々しく正直であろうとしているかということだったと思う。そして彼は、それがこの映画にとって、とても重要だと感じたんだ。映画や脚本にあるような言葉は出てこないかもしれないけれど、感覚を呼び起こすような、あまり鼻につかない曲を書こうと話し合ったよ。

映画の中のメッセージやトピックの多くは、とても複雑で重いものだけど、それをどうやって歌にするか、それでいて家族や子供たちが聴いて元気が出るような歌にするにはどうすればいいのか…。簡単な仕事ではなかったけれど、とても情熱を持って取り組んだ。あと西村さんも、女性アーティストとのデュエットにすることを望んでいた。だから、その話は最初の段階で出ていたんだけど、曲が完成するまでどのシンガーにするかは話し合わなかったんだ。

映画が歌を引き立て、歌を高めてくれた

―映画『屋根裏のラジャー』はご覧になられましたか?もし観ておられるなら感想と、特に印象に残ったシーン&セリフなど教えてください。

脚本は読んだけど、映画は僕たちの歌が入るまでは観ていなかったんだ。だから、曲が完成してから1年か1年半くらい経って、初めて映画を観た。主人公でイマジナリの一人であるラジャーは、すべてが見える。彼はすべての瞬間を意味のあるものにするんだ。正確な言葉は忘れたけど「誰も見たことのないものを見てきた。誰も見たことのない花を見てきた」というようなセリフがあって。その瞬間に存在し、どこにでも美を見出すというアイデアは、映画の最後に生まれたと思う。そして、僕らの歌がそこにピッタリはまったんだ。なぜなら、僕らの歌の最初の一行は「周りには魔法がいっぱいある」だからね。映画が歌を引き立て、歌を高めてくれたと感じたよ。

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―映画『屋根裏のラジャー』はイマジナリーフレンドのラジャーが主人公ですが、イアンさんは幼少時、想像の友だちはいましたか?

実際、僕には子供の頃、想像の友だちはいなかった。その代わりに僕には犬がいたんだ。彼は架空の存在ではなく、実在の存在だけど、僕にとっては親友だった。多分、それが僕が想像の友だちを持っていなかった理由なのかもしれないね。楽しい回答じゃなくて申し訳ないけれど。

充実した人生には驚きや喜びと同時に痛みや悲しみもある

―「Nothing’s Impossible」はタイトルからも分かる通り、人々の背中を押すようなメッセージ性のあふれる楽曲ですが、制作過程で特にこだわった部分はありますか。

ここにいる一瞬一瞬が奇跡であるという感覚を伝えたかった。僕たちがお互いに、そして僕らが愛する人々との間にあるつながりは永遠だということをね。だから、僕たちが愛する誰かが過去にいたり、離れていたりしても、彼らはまだ一緒にいるし、そのつながりは無限で、時間や空間を超えて存在しているんだ。

僕らは痛みや悲しみと共に、人生に実存する驚きと喜びの感覚も伝えたかった。そして、充実した意味のある人生にはそのすべてが含まれているということも。

―「Nothing’s Impossible」には、「Fight Song」で知られるレイチェル・プラッテンさんも参加していますね。お二方は元々友人だったそうですが、どのような経緯で知り合ったのでしょうか。

僕がレイチェルにニューヨークで会ったのは10年~15年前かな。僕たちはどちらも若手アーティストで、小さな会場で演奏を始めたばかりだった。共通の友人も居たから、時々、ニューヨークで一緒にショーをしたこともあったよ。ボストンで一緒にショーをしたこともあったと思う。それから彼女のキャリアが飛躍的に伸びていって。それを見るのは本当にすばらしいことだった。僕たちは多くの面で似たようなキャリアを歩んできた。アメリカ中の様々なフェスティバルやラジオイベントで偶然会ったり、一緒にショーをしたりすることがあった。

僕たちはお互いにショーを見たり演奏したりすることで常につながっていた。だから、彼女と一緒に仕事をするのはすごく簡単だったね。彼女は僕たちの音楽を知ってるし、お互いがお互いのファンだし。だから(デュエットの)話はとてもスムーズに進んで、「これが僕たちの曲だよ」という感じだった。「これが僕らの考えだ」と伝えると、彼女はすぐに理解してくれた。そして、彼女は僕らなしでレコーディングし、歌声を乗せてくれた。すばらしかったよ。

レイチェル・プラッテンとデュエットできたのは「偶然」以上の「偶然」

―お二方が友人だと知らないファンにとっては驚きの事実ですね!

西村さんが彼女の名前を(デュエット)候補の歌手として挙げたのは偶然というか、それ以上の偶然だった。彼がそう言ったとき、僕らは彼女を知っているし、友達だし、そうすればいいと思った。そのアイデアが彼らから出たことがうれしかったし、なんか自然なことだと思ったんだよね。

―今年もあとわずかですが、クリスマスの予定を教えてください。

クリスマスは家族と一緒にニューヨークで過ごして、新年を迎えてからはタークス・カイコス諸島で休暇を取る予定だよ。カリブ海にある島なんだ。だから、僕らはビーチに行くよ!新年を迎えた後、1月の最初の週にね。そこに行くのが好きなんだ。

―お子さんたちにサンタクロースからすてきなプレゼントが届くと良いですね!

そうだと思うよ。良い年になると思う。ただ、日本で子供たちにプレゼントを買ったんだ。それを家に持って帰るのが本当に楽しみなんだよね。ポケモンのカードや色々なものを買ったよ。だから彼はすごく喜ぶと思う(笑)。彼はポケモンの大ファンなんだ。だから、それが理由で僕が日本にいることに興奮しているよ。

@agreatbigworld / Instagram

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ア・グレイト・ビッグ・ワールドとして叶えたい夢は・・

―ア・グレイト・ビッグ・ワールドとして、今後挑戦してみたいことはありますか?

僕たちが長らく抱いてきた大きな夢の一つは、ブロードウェイ・ミュージカルの曲を書くこと。そして、僕らは数年に渡っていくつかの、特に一つのプロジェクトに取り組んでいるんだ。「ワンダー」というミュージカルだよ。ミュージカルは書くのに時間がかかる。それに非常に協力的なプロジェクトなんだ。たくさんの人が関わり、長い間一生懸命働き、待ち続け、そしてまた働き、待ち続ける。

チャド(AGBWのもう一人のメンバー)と僕は、同時にいくつかの異なるプロジェクトに取り組んでいて、それも大きな夢なんだ。そしていま、AGBWとして新しい音楽をレコーディング中だよ。うまくいけば来年リリースする予定だ。それと、ソロ音楽を発表する予定だから、それにも取り組んでいる。

―日本のファンへメッセージをお願いします。

(日本語で)こんにちは!tvgrooveのみなさん、こんにちは!僕はア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセルです。日本に来ることができてとても興奮していますし、幸せです。久しぶりですね。僕は日本のファンが大好きで、スタジオポノックの最新映画『屋根裏のラジャー』のために「Nothing’s Impossible」について話すこと、そして今週(※)みなさんの前でパフォーマンスできることにワクワクしています。本当に興奮していますし、またすぐに日本に戻って来られるよう願っています。

※12月6日(水)に東京オペラシティで行われた『屋根裏のラジャー』シネマコンサートのことを指している。

@tvgroove スタジオポノック最新作『屋根裏のラジャー』(絶賛公開中)で主題歌を担当したア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセルから日本🇯🇵のファンへメッセージが到着💛 ◼️インタビュー記事はこちら→ https://www.tvgroove.com/?p=126946 #屋根裏のラジャー #スタジオポノック #AGreatBigWorld ♬ オリジナル楽曲 – tvgroove

(インタビューおわり)[取材・文 / 太田美穂]

インタビュー終了後、「きみに渡したいものがあるんだ!」と部屋を飛び出し、自らラッピングしたであろう、おすすめのチョコレートを手に持って戻ってきたイアン。ちょっぴり早いクリスマスプレゼントに筆者の心も温かくなった一日だった。