越山高校野球部の面々にも不安が走る出来事が起きた。準決勝ではここまでエースピッチャーとして牽引してきた翔(中沢元紀)が先発落ちし、成長著しい根室(兵頭功海)が登板する可能性が浮上したのだ。メンバーたちが快進撃を続けてきただけに「なせ翔がベンチに座るのか?」と疑問に思うのは当然である。当落線上に位置づけられた翔と根室も急によそよそしくなり、チームとしてはぎくしゃくしたムードに。誰もいないと思い先発について密談していた南雲と山住はやや不用意だったといえる。

 そんな翔と祖父・犬塚(小日向文世)とのやりとりは涙腺崩壊ものだった。翔の活躍を少しでも長く見るために、視力低下が進行する目の手術を拒む犬塚は、先発落ちの可能性に気を落とす翔を励まそうとキャッチボールに誘う。かつては幼い翔を犬塚がリードしていたことだろう。しかし、眼前のボールを見つけることすらままならない状況でも、翔に不安をかけまいといつものように白々しくとぼける姿は名優・小日向文世だからこそなせる業だった。

 第9話ではいよいよ星葉高校との一戦が始まる。南雲が繰り出す奇策は吉と出るのか凶と出るのか。エースピッチャーの翔とキャプテン・椿谷(伊藤あさひ)を先発から外し、4番バッターを務めてきた楡(生田俊平)を3番に繰り上げるという大ナタは、対策を用意してきたであろう星葉高校以上に、越山高校ナインの動揺が大きいと思う。「メンバー18人全員で戦う」と言う南雲の言葉からすると、代打や投手交代のタイミングが勝負を制するカギになるのだろう。

 不安材料は試合目前にして病院に搬送された山住の容態だろう。山住は練習中の不注意により打球が脇腹に当たったものの平静を装っていたが、やはり無事ではなかったようだ。山住自身が言ったように打球から目を離してグラウンドに入ったことによる事故だが、野球部員たちは動揺を隠せない。とにかく山住の無事を祈りつつ試合に集中したいところだが果たして……。