◆今後の展開を知っているからこそ、巧みな脚本にうなる

 すでに一度観た身で再放送を視聴し始めると、初見では気づかなかった地味な演出や、コミカルな中に隠されているテーマを発見できます。

 例えば、主人公・アキが東京からやってきた当初、祖母である夏は「わらし」と呼んでいましたが、次第に「私の孫」となり、「アキ」と変化していった部分。開始1週間で関係性や親密度の変化を自然に表現していたという点に、脚本の巧みさを感じました。

◆コミカルで明るい『あまちゃん』に、軽薄さがない理由

 また、地方の過疎問題や、観光客や外部の人には魅力的に映る「昔ながらの雰囲気」だけでは生活していけないジレンマを、深刻な問題として丁寧に提示していたのも新しい発見でした。

 コミカルで明るいテイストながらも『あまちゃん』に軽薄さがないのは、物語の中に問題提起やテーマが軸としてはっきり存在し、それがストーリーの中で説教臭くならずにちゃんと訴えかけられているからなのでしょう。

Blu-ray 連続テレビ小説「あまちゃん」総集編 (NHKエンタープライズ)
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 また、小池徹平さん演じるストーブさんこと足立ヒロシは、その甘いルックスや登場回の早さから、初回放送時は多くの人がアキの相手役だと予想しながら視聴していたと思います。

 しかし、そうではないと知っていることによって、彼の行動や演技が違った視点で見られるのは面白いところです。クズで裏のある男、そんな彼の演技を深く感じることができます。