新型コロナウイルス対策が日本経済に大きく影響する中で、今注目されているのが「エンゲル係数」です。“貧困指標”ともいわれ、2015年に続き2020年2月に大きく上昇したことが話題となりました。社会科の授業で習ったはずのエンゲル係数ですが、どんなものか覚えていますか?この記事ではエンゲル係数のおさらいと、とらえ方について社会人の視点で見ていきましょう。
私たちの生活のエンゲル係数はいくつ?
エンゲル係数は、1世帯の消費支出の中に占める食費の割合のことです。総務省の「家計調査」をもとに、2019年の単身世帯(学生を除く)のエンゲル係数を計算すると、下記のような結果となります。
1年間の食費53万1,153円÷1年間の消費支出196万5,371円=27.0%
*食費には、食料品費、お惣菜代、外食費、飲み物代、お菓子代等を含む
この27.0%がエンゲル係数となります。ちなみに、34歳までの若年層の単身世帯(学生を除く)にしぼった男女別のエンゲル係数は、下記の通りです。
【男性:34歳までの単身世帯の平均】
1年間の食費60万1,952円÷1年間の消費支出201万2,524円=29.9%
【女性:34歳までの単身世帯の平均】
1年間の食費50万5,646円÷1年間の消費支出214万7,500円=23.5%
1ヵ月間の金額で比べると、男性は消費支出16万7,710円に対し食費の合計は5万163円、女性は消費支出17万8,958円に対し食費の合計は4万2,137円です。
自分のエンゲル係数を計算してみよう
この食費には、自炊の「食料品費」はもちろん、外食の「ランチ代」や、休憩時間の「コーヒー代」なども含まれます。自分のエンゲル係数が上記の平均と比べてどれくらいか、消費支出と食費にあてはめて調べてみましょう。
例えば、消費支出が15万円前後で、そのうち6万円を食費にかけているのであればエンゲル係数は40%となり、全体的な値よりも高いといえるでしょう。
そもそもエンゲル係数とは?貧困指標といわれるワケ
「エンゲル係数」は、ドイツの統計学者エルンスト・エンゲルが提唱したものです。
また、食費は生命維持にかかわるため簡単に削ることができないとされ、収入が上がる(下がる)ほど消費支出に占める食費の割合は低くなる(高くなる)というのが「エンゲルの法則」です。
日本でも年収が高くなるにつれてエンゲル係数が低くなる傾向があります。総務省の「明日への統計(2019)」によると、エンゲル係数は、年収265万円未満の世帯では31.5%、年収449万円から523万円の世帯では26.5%、年収1,056万円以上の世帯は22.2%です。
日本全体がまだ貧しかった戦後すぐのころは60%台だったエンゲル係数は、経済成長によって生活が豊かになるとともに低下してきました。2005年には22.9%という最低値を記録しています。こうしたことから、エンゲル係数は「貧困指標」として生活水準を示す資料として用いられてきました。