ついに今週末公開!
11月10日(金)、ついにMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)最新作『マーベルズ』が日米同日公開。今回は公開に先立って、今作をネタバレなしでレビューする。
『マーベルズ』のあらすじ
アベンジャーズ最強ヒーロー、キャプテン・マーベルの新たな物語。
キャプテン・マーベルとの“ある過去”の因縁から復讐を誓う謎の敵が現れる。その狙いは、地球をはじめ彼女が守ってきたすべてを滅ぼすことだった。
最凶最悪の敵サノスを圧倒する力でも救えない危機が迫るなか、彼女を家族のように慕う敏腕エージェント〈モニカ・ランボー〉、彼女に憧れるアベンジャーズオタクの高校生ヒーロー〈ミズ・マーベル〉と、3人が入れ替わる謎の現象が発生。
これまで一人で戦ってきたキャプテン・マーベルは仲間との運命的な繋がりからチームを結成し、新たな“強さ”に目覚めていく。(公式HPより)
予習すべき過去作は?
今作はMCUの長編映画としては33本目にあたり、『キャプテン・マーベル』シリーズとしては2作目。キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースが(本編にしっかり)登場する映画としては『キャプテン・マーベル』『アベンジャーズ/エンドゲーム』に続き3本目となる。
しかしMCUにはDisney +(ディズニープラス)で限定配信されているドラマシリーズや特別番組なども存在し、何を観ていれば今作を楽しめるのか不安になっている映画ファンもいるだろう。
結論から言うと、本当に最低限でいいなら『キャプテン・マーベル(2019)』だけ観ていれば問題ない。
可能であれば後述する『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』は観た方が楽しめるが、『マーベルズ』本編で、ある程度その2作の前提知識は補完してくれる親切な作りになっているため、「ドラマシリーズを観る時間はない!でもキャプテン・マーベルの新作は映画館で観たい!」という方は、『キャプテン・マーベル(2019)』だけで新作に臨むのもアリだ。
先に述べたとおり、『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』は可能であれば観ていただきたい。なぜかというと、“マーベルズ”という3人組を構成するキャプテン・マーベル(キャロル・ダンヴァース)、モニカ・ランボー、ミズ・マーベル(カマラ・カーン)のうち、モニカ・ランボーがスーパーパワーを手に入れる経緯が『ワンダヴィジョン』で、ミズ・マーベルがスーパーヒーローになる経緯が『ミズ・マーベル』で描かれているからだ。
なお、『アベンジャーズ/エンドゲーム』は観ておいて損はないが、『エンドゲーム』は大量のヒーローの物語を描いている都合上キャプテン・マーベルにそこまで時間を割いていないので、後述の前提知識だけ読んでいただければ今作の鑑賞は必須ではない。
さらに、前作『キャプテン・マーベル』に登場した“スクラル人”については「シークレット・インベージョン」というシリーズが多くを語っているのだが、「シークレット・インベージョン」も『マーベルズ』の鑑賞に必須の作品ではないため、そこもご安心いただきたい。
もう一度結論を述べるが、極論『キャプテン・マーベル』だけ観れば問題なし、できるだけ「ワンダヴィジョン」「ミズ・マーベル」は予習していただきたい。それで十分最新作『マーベルズ』を楽しめるはずだ。
いそがしい人のための前提知識解説
ではここで、「いそがしいけど『マーベルズ』だけは映画館で観たいから、最低限の知識を教えてほしい」という方のために、過去作のネタバレありで前提知識を解説しておこう。
『キャプテン・マーベル』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』「ワンダヴィジョン」「ミズ・マーベル」の重度のネタバレ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』「シークレット・インベージョン」の軽度のネタバレを含みます。
キャプテン・マーベル/キャロル・ダンヴァースについて
キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースは、元は地球人の優秀な戦闘機パイロットだが、後述する「事故」によって記憶喪失になり、クリー人という種族の一員として訓練されてきた。
クリー人はスクラル人という高度な変身能力を持つ種族との長い戦争状態にあり、スクラル人を根絶しようと追い立ててきた歴史を持っている。
キャロルは腕から強力なエネルギーを放出する「フォトンブラスト」という力を持っているが、これはクリーに備わっている力ではない。爆発事故によりスペースストーンの力を浴びた影響で彼女だけが使えるようになった特殊な力だ。
記憶喪失になっていたキャロルを鍛えたクリーの司令官ヨン・ログは、彼女に「素手で戦えなければ強さとは言えない」と洗脳し続け、本当の強さを発揮しないように押さえつけていた。
しかし、自分をクリーだと思っていたキャロルはひょんなことから地球に一人で降り立ち、自分の過去を知ることに。さらにクリーの洗脳で「悪」だと思っていたスクラルは戦争の敵としてクリーに迫害されていて今は立場が弱いことも知り、キャロルはクリーを敵と認識する。
のちに地球で最強ヒーローチーム「アベンジャーズ」を作ることになる、若き頃のニック・フューリーにも出会い、フューリーや記憶喪失前の大親友であるパイロット、マリア・ランボーの協力を得て、スクラルの難民たちを救出しに向かったキャロルは、クリーの支配者として君臨するAI「スプリーム・インテリジェンス」の洗脳を断ち切り、自身の本当の力を解放。
クリーを圧倒し、宇宙船に避難していたスクラルを助け出したキャロルはその後も宇宙を飛び回るヒーロー「キャプテン・マーベル」として大活躍している。
アベンジャーズ3作目『インフィニティ・ウォー』ではキャロルは戦いに参加しておらず、アベンジャーズは最強の敵サノスに敗北。サノスの手で宇宙全体の知的生命体はランダムに半分が消滅してしまった。
ニック・フューリーも消滅側になってしまうも、消滅直前にフューリーは救難信号をキャロルに発信。それによりキャロルは、アベンジャーズ4作目『エンドゲーム』で地球に戻ってきた。
5年後、残ったヒーローたちの活躍で消滅した人々が戻るも、再びサノスに苦戦するヒーローたち。そこに現れて破格の大活躍をしたのがキャロルだ。キャロルはサノス軍の主力である宇宙船を一人で壊滅させ、サノスとも渡り合う戦闘力を見せた。
モニカ・ランボーについて
モニカはキャロルの大親友であるマリア・ランボーの娘だ。『キャプテン・マーベル』ではまだ幼い少女で、屈託のない笑顔でキャロルやマリアを激励する可愛い女の子だった。
時は経ち大人になったモニカは、地球外生命体の活動や宇宙の脅威に対処する機関「S.W.O.R.D.」のメンバーとして活躍するが、サノスのせいで5年間の消滅を経験してしまう。
運の悪いことに、モニカが消滅している間に母マリアは死去。宇宙で活躍する立場も失って途方に暮れるモニカが対峙することになった事件が、ワンダ・マキシモフの暴走事件だった。
ワンダの暴走を止めるため、ワンダによる結界、通称“ヘックス”に二度目の侵入を試みた時、結界を通りぬけるモニカの身体に異変が生じた。彼女の身体ににも超常的な力が備わったのだ。(この能力の定義は『マーベルズ』で言語化されるためここではただ“超常的な力”とする)
ミズ・マーベル/カマラ・カーンについて
カマラ・カーンはアメリカの高校に通うパキスタン系アメリカ人で、スーパーヒーローオタク。特にキャプテン・マーベルことキャロルの大ファンだ。
ある日アベンジャーズのファンイベントに出かけたカマラは、祖母から送られてきたバングルをつけたことがきっかけで、紫色の光を具現化する能力に開花。訓練によって技に磨きをかけ、具現化した光で足場を作ったりバリアがわりにしたり、拳を巨大に補強したりすることができるようになった。
“ヌール”と呼ばれる「光」の力は彼女の一族が代々守ってきたもので、ドラマシリーズではこの力と大切な人々を守るために戦い抜いた。
彼女の名前“カマラ”はウルドゥー語で“マーベル”と同じ意味であることをドラマ最終話で父から教わり、ヒーローネーム「ミズ・マーベル」が誕生した。
ニック・フューリーについて
ニック・フューリーは、「S.H.I.E.L.D.」の諜報員としてキャロルに出会って宇宙の脅威を感じた後、長官として“アベンジャーズ計画”を始動し、アイアンマンやキャプテン・アメリカなどを集めてアベンジャーズというチームを誕生させ、その後も半ば強引にヒーローたちを導き続けたが、S.H.I.E.L.D.は悪の組織ヒドラに侵食されて弱体化、さらに彼はサノスのせいで5年間消滅してしまうなど、徐々にその権力を失っていく。
「シークレット・インベージョン」ではすっかり権威を失っていくフューリーが、地球人を同士討ちさせようと企むスクラル人の過激派たちに立ち向かった。
グース(フラーケン)について
前作でも大活躍した、猫に見えてただの猫ではない存在、グース。
グースはフラーケンと呼ばれる生物で、口から触手を出してあらゆるものを異次元のような体内に引きずり込み、後で吐き出すこともできる。
その攻撃性は気まぐれに現れるため制御不能で、フューリーはグースに引っかかれたことをきっかけに眼帯をつけるようになった。
以上の情報が頭に入っていれば、『マーベルズ』を十分に楽しめるだろう。
“最強”がチームプレー!
今作まで、キャプテン・マーベル/キャロル・ダンヴァースは「チームプレーができない人」という印象がある。能力が非常に高いだけでなく、一人で何でも済ませてしまおうとする責任感と自信にあふれる性格のため、アベンジャーズを困惑させることもしばしばあった。
そんなキャロルが今回、「入れ替わり」というハプニングによってほかの2人と協力せざるを得ない状況になるところに今作の面白さがある。
本来『キャプテン・マーベル』は“男性に力を証明する必要も、男性の前で力を遠慮する必要もない。能力を使うか使わないか、どのように使うかは自由だ”という、能力を封じられた女性に対する力強いメッセージが込もった1作。そのコンセプトからすれば、キャロルが“強すぎる”ヒーローである設定は正しく、弱くはなってほしくない存在だ。
とはいえ、“強すぎて敵なし”などという主人公を描き続ければ、人気漫画「ワンパンマン」の序盤のように、もはや危機感は感じられず、“強すぎて笑わせる”ことしかできなくなってくる。それではアクション映画としては刺激不足だろう。ということで、2作目のキャロルには何らかの「強さ」に関係ない苦労が必要だった。
その点今作は予告のとおり、“能力を使うたびに他のヒーローと入れ替わってしまう”という不思議な現象に巻き込まれることによって、キャロルはしっかりパニック状態になってくれる。
苦労を知り、それと同時に協力が不可欠な状況になった彼女は強制的にチームプレーに適応させられ、我々の知らない彼女を見せてくれる。それだけでも、これまでのキャロルを知るMCUファンにとっては楽しい作品だ。
カマラ・カーンという“光”
今作に登場する3人はいずれも“光”に関する能力者だが、エネルギッシュなティーンエイジャーであるカマラは物語にとってもまさに“光”だ。
久々の再会で状況も変わっており、若干ギクシャクしがちなキャロルとモニカの間で、ひたすら無邪気で必死なカマラがいることが、今作の物語に絶妙なエンタメバランスをもたらしている。
今作でミズ・マーベル/カマラ・カーンというキャラクターに少しでも惹かれた方には、後からでもぜひドラマシリーズ「ミズ・マーベル」をオススメしたい。
ダー・ベンの目的
今作のヴィラン(悪役)であるダー・ベンは、目的のためなら手段を選ばない脅威のヴィランだ。
彼女の強さはもちろん、なぜ彼女がそこまでして激しい作戦を続けるのか、その目的と必死さに注目して、さまざまなことを感じていただければ幸いだ。
「入れ替わりアクション」に酔いしれよ!
今作はあらすじのとおり、3人が入れ替わってしまう謎の現象に巻き込まれる。それは彼女たちにとっては自由の利かないトラブルかもしれないが、観客からすればなかなか見ないアクションを目撃できるチャンスだ。
水樹奈々ら吹替声優陣も「『誰が攻撃して誰が攻撃を受けているんだ』と混乱して何度もスローモーションにして確かめた」という、目まぐるしいアクションをぜひ大画面で味わうことをオススメしたい。
パク・ソジュン登場!
韓国ドラマファンにはおなじみ、「梨泰院クラス」パク・セロイ役のパク・ソジュンが、『マーベルズ』ではヤン王子という印象的なキャラクターとして登場する。
もはやパク・ソジュンを出したくてアイデアを練りに練ったのではないかというくらいに、彼のための時間が設けられているので、ぜひスタッフの気合を受け止めていただきたい。
潔くまとめた105分
上述の“パク・ソジュンのため”のような時間はあるものの、今作はMCU映画としては久々に、上映時間がコンパクトにまとめられた映画だ。
上映時間は105分で、MCUの長編映画が110分を切るのは初めてのことだ。
多少ややこしい設定に頭を悩ませるこの物語を余計に引き伸ばすことなく、105分という観やすい長さで楽しませてくれる、この潔いコンパクトさが嬉しい観客もいるのではないだろうか。
特に『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022)』の161分、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023)』の150分なども目立っていた(今年の話題作といえばMCU以外にも『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が169分、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が206分など)だけあり、長い映画に疲れ気味の方々を元気づけるお手軽な上映時間かもしれない。
『マーベルズ』の魅力まとめ
『マーベルズ』は、孤高の最強ヒーローだったキャロルのチームプレーによる変化、元気に物語を彩るカマラの可愛さ、考えさせられるヴィランの行動原理、めまぐるしい「入れ替わりアクション」、画面に踊る韓流スターといった魅力が105分にギュッと詰まった映画だ。
ぜひ今週末は映画館へ。そして今作はMCU作品。もちろんエンドロールに入っても、気を抜いて帰ったりしないことをオススメしたい。
『マーベルズ』は11月10日、日米同日公開!
監督:ニア・ダコスタ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ブリー・ラーソン/イマン・ヴェラーニ/テヨナ・パリス/サミュエル・L・ジャクソン/パク・ソジュン他
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©Marvel Studios 2023