老後資金が不安という人は多いですが、以前、老後2,000万円問題が話題になったことから、老後資金はとりあえず2,000万円を準備しておけばいいと考える人もいるかもしれません。

けれども、必要な資金は人それぞれ異なるので、ご自身や家庭の生活水準に合わせて老後資金を準備することが大切です。

では、実際にどれだけお金がかかるのでしょうか?

■老後の生活費はいくら必要か

総務省統計局の2022年「家計調査年報(家計収支編)」では、1ヶ月あたりの65歳以上の単身世帯と夫婦二人世帯の支出は、いずれも無職の場合、以下のようになっています。

  65歳以上の単身の無職世帯 65歳以上の夫婦のみの無職世帯
食料 3万7,485円 6万7,776円
住居 1万2,746円 1万5,578円
光熱・水道 1万4,704円 2万2,611円
家具・家事用品 5,956円 1万371円
衣類 3,150円 5,003円
保健医療 8,128円 1万5,681円
交通・通信 1万4,625円 2万8,878円
教養娯楽 1万4,473円 2万1,365円
税金 6,660円 1万2,854円
社会保険料 5,625円 1万8,945円
その他 3万1,943円 4万9,446円
総支出合計(月) 15万5,495円 26万8,508円

単身世帯では毎月15万5,495円、夫婦二人の世帯では毎月26万8,508円の生活費がかるということですが、これはあくまで平均額です。自分の世帯ではいくら必要かということを、予想しながら計算してみるとよいでしょう。

■老後資金のシミュレーション

単身世帯、夫婦二人世帯ごとに、老後の収入と支出、不足額をシミュレーションしました。

老後の生活期間は便宜上65歳からの25年間とし、収入となる年金額は厚生労働省年金局の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の金額を使用しています。

  平均 男性 女性
老齢基礎年金(国民年金) 5万6,368円 5万9,013円 5万4,346円
老齢厚生年金 14万3,965円 16万3,380円 10万4,686円

不足額については上記の国民年金と老齢厚生年金を参考にして「収入-支出」で算出。5つのパターンでシミュレーションしています。

●単身世帯/老齢厚生年金を受給する場合(会社員) 不足額は345万9,000円(月1万1,530円)となります。(※収入-支出)

収入:4,318万9,500円(月14万3,965円) 支出:4,664万8,500円(月15万5,495円) ※年金額は平均を基に計算

●単身世帯/老齢基礎年金を受給する場合(個人事業主)

不足額は2,973万8,100円(月9万9,127円)となります。(※収入-支出)

収入:1,691万400円(月5万6,368円) 支出:4,664万8,500円(月15万5,495円) ※年金額は平均を基に計算

●夫婦二人世帯/夫婦共に老齢厚生年金を受給する場合(共働き)

不足額は13万2,600円(月442円)です。(※収入-支出)

収入:8,041万9,800円(月26万8,066円)<夫4,901万4,000円(月16万3,380円)/妻3,140万5,800円(月10万4,686円)> 支出:8,055万2,400円(月26万8,508円) ※年金額は男女別の金額を基に計算

●夫婦二人世帯/夫婦のどちらかが老齢厚生年金、もう一方が老齢基礎年金を受給する場合(例:夫が会社員、妻が専業主婦)

不足額は1,523万4,600円(月5万782円)です。(※収入-支出)

収入:6,531万7,800円(月21万7,726円)<夫4,901万4,000円(月16万3,380円)/妻1,630万3,800円(月5万4,346円)> 支出:8,055万2,400円(月26万8,508円) ※年金額は男女別の金額を基に計算

●夫婦二人世帯/夫婦ともに老齢基礎年金を受給する場合(夫婦とも個人事業主)

不足額は4,654万4,700円(月15万5,149円)です。(※収入-支出)

収入:3,400万7,700円(月11万3,359円)<夫1,770万3,900円(月5万9,013円)/妻1,630万3,800円(月5万4,346円)> 支出:8,055万2,400円(月26万8,508円) ※年金額は男女別の金額を基に計算

■老後の準備は計画的に

シミュレーションからもわかる通り、老齢基礎年金しか受給できない場合はかなりの金額が不足することになります。その意味では、老齢厚生年金がもらえるから安心というわけではありません。

シミュレーションの支出はあくまで生活費のみとなるため、家のリフォームや車の購入、医療費や介護費、子どもや孫のための費用なども加味すると、さらに数千万円が不足する場合もあるでしょう。

老後資金はとても大きな金額になるため、短期間で準備することはできません。現役時代の早い段階からコツコツ貯蓄をすることはもちろんですが、NISAやiDeCoを活用した資産運用などをするとよいでしょう。

老後生活が窮屈にならないよう、生活水準に合った老後資金を計画的に準備していくよう心がけることが大切です。

阪田順子(ファイナンシャル・プランナー) FP1級、CFP保有。保険会社での営業、一般企業の経理職などを経て、2020年にファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用や株式投資の講座を開講。投資を中心にお金にまつわる記事の執筆・監修を行う。