キム・ギドク監督と言えば、過激な暴力や性描写を繊細なタッチで描き、人間の根源的な感情を抉り取るような作風が持ち味で韓国映画界の鬼才と呼ばれています。今回はキム・ギドク監督作品の中から、おすすめの映画をランキング形式でご紹介します。
キム・ギドクとは
生年月日:1960年12月20日
出身地:韓国 慶尚北道奉化郡
キム・ギドク監督は、20歳から5年間を海兵隊で過ごし、その後、1990年に絵画の勉強のために、フランス・パリに滞在ます。
そして、そこで観たレオス・カラックス監督の映画『ポンヌフの恋人』に感銘を受け、映画監督を志すようになりました。
その後、1996年に『鰐〜ワニ〜』で映画監督デビューし、2000年公開『魚と寝る女』、2001年公開の『受取人不明』がヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、世界的に注目を集めます。
2003年に『春夏秋冬そして春』で韓国映画界最高の栄誉である大鐘賞と青龍賞の作品賞を受賞し、名実ともに韓国を代表する映画監督になりました。
今回はキム・ギドク監督作品をランキング形式でご紹介します。
「狂気」を感じさせせる作品が魅力
キム・ギドク監督作品の中で執拗に描かれるのが人間の「狂気」です。
表面的な「狂気っぽさ」ではなく、人間の根本に潜む本質的な狂気を表現しています。それは、ときに生きることに不器用な者の叫びであり、残酷な現実と上手く折り合いの付けられない人間の嘆きでもあります。
他人とは違う異質な部分が、ふと表面化した際に化学反応が起こる瞬間をキム・ギドク監督は鋭い感性ですくい取り、独特の表現で映画に落とし込んでいるのではないでしょうか。
執拗なまでの「狂気」へのこだわりは、もしかするとキム・ギドク監督自身がもつ狂気とも言えるのかもしれません。
過去には出演予定女優に訴えられたことも
性や暴力をテーマにした過激な表現も多いことで知られるキム・ギドク監督ですが、過去には2013年に公開された『メビウス』に当初出演予定だった女優から暴行罪で告訴されたこともあるようです。
キム・ギドク監督としては役作りのために必要だった行為で暴力ではないと否定しましたが、裁判所は暴力の事実を認め罰金500万ウォンの略式命令を下したとのことです。
キム・ギドクのおすすめ映画ランキングTOP11!
それではキム・ギドク監督のおすすめ映画を第11位から第1位まで一挙にご紹介します。
キム・ギドクのおすすめ映画ランキング第11位:絶対の愛
彼の愛を独占したいと執念を燃やす女性が、自分の容姿に不安を抱き、整形手術を決意します。そして、半年後に新しい顔でまた彼と出会い直すという物語です。
失踪した彼女とは知らずにその女性を愛し始めた彼ですが、ある日彼女の真実を知ってしまいます。そのときに彼が取った驚きの行動とは…。
キム・ギドク監督が「本当の愛の形とは何か?」を世に問う一作です。
キム・ギドクのおすすめ映画ランキング第10位:殺されたミンジュ
物語の始まりは、ミンジュという少女が殺害された事件。その殺害に加担した犯人グループ、そしてその復讐を果たす謎の集団、さらにその集団を追う一人の男を描きます。
物語全体を通して描かれるのは実社会にも訪れつつある「民主主義の矛盾と崩壊」と「暴力による負の連鎖」です。
名誉や立場を守りたいがために思考を停止し、上からの命令に「従う」という判断しかできなくなった容疑者たちは、状況こそ違えどまさに現代社会を生きる我々の姿ではないでしょうか。キム・ギドク監督が放つ痛烈な社会派作品です。
キム・ギドクのおすすめ映画ランキング第9位:サマリア
援助交際を犯す娘、それを知って怒りを暴走させ、ある一線を超えてしまう父親との交流を描きます。
物語の中で描かれるのは、人間は誰しもが不完全であり、人と人とはどうしようもなく分かり合えないこともあるという現実です。
しかし、キム・ギドク監督がその先に見出しているのは絶望ではなく希望であることは、ラストシーンに表れています。キム・ギドク監督作品の中でも最高傑作として挙げる人も多い一作です。
キム・ギドクのおすすめ映画ランキング第8位:弓
老人と少女のちょっと変わった純愛を美しい映像と音楽で表現した物語です。
性や暴力描写が過激な作品の多いキム・ギドク監督、この作品では一転してそういった表現は封印し、台詞もほとんどない静謐な作品となっています。しかし、賛否両論の結末まで片時も目が離せません。
芸術性の高い一作で、映像の中にリアルなイメージを感じることができる作品でしょう。
キム・ギドクのおすすめ映画ランキング第7位:メビウス
ひと騒動のあった問題作『メビウス』が7位にランクインです。
上流家庭に暮らす両親と息子の3人家族。ある日、夫の不貞を知った妻は嫉妬に狂い夫の性器を切り取るという狂気の沙汰に出ます。夫の抵抗を受けあえなく失敗に終わったその嫉妬の矛先は、次は息子へと向けられ、物語は衝撃的な結末へと向かいます。
全編台詞なしという挑戦的な演出ながら、それによって俳優陣の表情や肉体表現に感情が漲り、凄まじい演技をみせています。昨今の生温い映画に飽き飽きしている方には特におすすめです。