◆「寝かしつけに来て」
平日の夜はいつもこんな感じだ。
「僕が毎日夜9時頃に帰宅すると、5時半退社の莉子はゲームをして待っているので、僕が料理を作って一緒に食べる。もちろん莉子のリクエストを100%聞いた献立です。帰宅があまり遅いと夕食がずれこみ、『翌日、胃にもたれる』と莉子の機嫌が悪くなるので、何かデリバリーして先に食べていてもらい、僕はお詫びにスイーツを買って帰る」
「腫れ物に触るような」という表現がぴったりだ。完全なるご機嫌取りではないか。
「そうですよ。だけどヒステリーを起こして目の前で物を壊されるより、ずっといい」
園田さんより若干早い出社時間の莉子さんは先に就寝するが、莉子さんはほぼ毎日、こう言ってきた。
「寝かしつけに来て」
◆加速する「姫気質」
莉子さんは結婚当初から「姫気質」だったが、ヒステリー事件後はそれが加速した。
「外食に行って思ったほど美味しくないと、僕にネチネチ文句を言う。ディズニーランドに行って思ったほどアトラクションの数をこなせないと、僕に当たり散らす。会社の愚痴や日常の不機嫌を延々と僕にぶつけてくる。僕はその都度、時間をかけてなだめすかし、僕のせいではなくても深々と謝罪し、機嫌直しに何か買ってあげていました」
莉子は基本的に、「あなたには、荒ぶってる私の心を慰める義務があるのよ」という態度で園田さんに接した。
「とにかく依頼心が強い。僕に全体重をかけてくる癖がついていました」
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