新アルバム「GUTS」をリリースしたオリヴィア・ロドリゴ(@oliviarodrigo / Instagram)新アルバム「GUTS」をリリースしたオリヴィア・ロドリゴ(@oliviarodrigo / Instagram)

オリヴィア・ロドリゴの新曲が、アジア系アメリカ人の女性たちに感動とパワーをもたらしている。

オリヴィア・ロドリゴ(20)が9月8日、グラミー賞を受賞したデビュー作「SOUR」に続く2ndアルバム「GUTS」をリリース。ロドリゴはファンの期待通り、失恋や10代の少女であることの危うさを掘り下げた、巧みで胸を締め付けられるようなリリックを披露している。

しかし、アジア系アメリカ人のファンが注目しているのはそこだけではない。注目を特に集めているのは、アルバムのオープニング・トラックである「all-american bitch」だ。

なぜかというと、ロドリゴが有色人種の女性が共通して感じている「今のままでは物足りない」という気持ちにスポットを当てた楽曲だから。

アジア系アメリカ人のファンたちはTikTokを通して、ロドリゴが「all-american bitch」という曲の歌詞に込めた意味や、フィリピン系アメリカ人であるロドリゴが自身のプライドをどのように表現しているかについて掘り下げている。

ハンナ・Cは9月9日のTikTokの投稿で、この曲がアジア系アメリカ人の経験、特に思春期の少女たちの経験を表しているように感じる理由を添えて自身の考えを語った。

ハンナは「なぜ私がオリヴィア・ロドリゴの『all-american bitch』をとてもパワフルだと思うかというと、アジア系アメリカ人女性のために『all-american』というフレーズを取り戻してくれたから」「『all-American』って聞いたら、ブロンドヘアで目が青い人が思い浮かぶでしょ」と、疎外感を抱えたアジア系アメリカ人の女性たちに「オール・アメリカン」という言葉を取り戻してくれたこの楽曲を褒め称えた。

続けてハンナは「彼女は『all-american』を取り戻すだけでなく、私たちアジア系アメリカ人がしばしばアメリカ人として扱われていない事実についても語ってくれてる。私たちは外国人やよそ者のように見られているんだ」「曲の最後で彼女は『いつも感謝している』と歌う。それが私たち(アジア系の女性)が求められていることなの。アメリカにいられることにとても感謝する姿勢がね…。そして、もし私たちが感謝していなかったり、十分に貢献できなかったりすると、人々は私たちに『国に帰れ』って言うんだ」と語る。

他の人種の人々と同じく「アメリカ人」のはずなのに、ステレオタイプによって「あるべき姿勢」を決められ、それをはみ出せば外国人扱いされるという不当さを、ロドリゴは歌に乗せたのだ。

2022年には、フィリピン系アメリカ人のTikTokerであるキム・サイラが、オリヴィア・ロドリゴに対する「(ロドリゴは)完全なフィリピン人ではないので、その文化を主張できるほどフィリピン人とはいえない」という批判に対して反論、ロドリゴを擁護したこともある。

@kimssaira Reply to @monotheworld Is Olivia Rodrigo Filipino? Heck yeah #FilipinoAmerican #FilAm #Philippines #OliviaRodrigo #Asian #AAPI #QueerAsian #Filipino #QuarterAsian #FYP ♬ Elevator Music – Bohoman

このように、以前からアジア系アメリカ人の女性たちにとってロドリゴは期待の存在だったし、ロドリゴ自身も、アジア系女性として活躍することが珍しいという現状を問題視している。

V Magazineのインタビューでロドリゴは、「小さな女の子から『私みたいな見た目の人があなたみたいな立場にいるのって見たことない』みたいなDMをもらうことがあるの」「考えただけで涙が出そうだよ。私もそんな人を見ることなく育った気がする。いつも『ポップスターって白人の女性のことだよね』みたいな感じだった」とアジア人女性がスターになりづらい現実を悲しんでいた

「all-american bitch」に心を動かされたのはハンナ・Cだけではない。実際、多くのアジア系アメリカ人のTikTokユーザーがこの曲についてさまざまな動画を投稿している。

9月8日、マギー・チョウは「GUTS」のリリースを「すべてのアジア系女子にとって大きな1日」と表現した。チョウは「all-american bitch」について「アジア系女性の経験と、性的に過度なまでに性的に卑屈になったコミュニティに対する期待を凝縮している」とし、多くのアジア系女性の代弁をし、未来への一歩を踏み出す1曲だと評価している。

9月11日の投稿で、ジョイ・リーは長年にわたって受け取った人種差別的なコメントの一部をシェア。その中には「君は他のアジア人女性たちと差をつけるための何かをする必要があるね。(同じ分野において)アジア人が2人以上注目されることはないから」といった、偏見に満ちたコメントもあった。

オリヴィア・ロドリゴの楽曲「all-american bitch」は、「同じアメリカ人なのに、アメリカ人として見られていない」というアジア系の人々の苦悩を浮き彫りにしたと同時に、そのように感じている人々に勇気を与えた。

少しずつ、彼らにとっての世界が変化していくことを願いたい。