Adoといえば、2020年10月に「うっせぇわ」で衝撃のメジャーデビューを果たし、当時は「一発屋では」と一部で揶揄されたが、そんな声を吹き飛ばすかのように躍進。昨年はアニメ映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌となった「新時代」が世界的にヒットし、一昨年にリリースした「阿修羅ちゃん」はプロフィギュアスケーターの羽生結弦が今年2月の東京ドーム公演などで使用したことで再び大きな注目を集めた。
彼女は「顔出しなし」を貫いているのが大きな特徴で、これまでに開催したライブツアーなどでも基本的にシルエットでしか姿を拝めなかった。GReeeeNのようにシルエットだけでライブをしているアーティストは他にもおり、顔を出さないという意味ではMAN WITH A MISSIONのような覆面バンドもいるが、さすがに1日の動員が6万人前後と予想される国立競技場ライブとなると「シルエットでやり通せるのか」という疑問が湧かなくもない。新世代のアーティストとしては、伊東歌詞太郎やヨルシカのsuisなど、Adoと同じようにメディアでは顔出しなしにしているケースがあるが、いずれもライブでは逆光などの演出がある場合はあるものの素顔で出演している。
実際、国立競技場ライブ開催が発表されると、ネット上では「顔出しなしで国立ライブは厳しいと思う」「去年、さいたまスーパーアリーナでやったニコニコ超パーティーで生Adoさん観ました。曇りガラスのボックス内を逆光にして出てましたけどライブなのに生感がまるでなかった。本人かどうかわからんし、そもそもちゃんと歌ってるかすらわからない」「顔出さなくていいってならYouTubeでも見とけばいいよ」といったシルエット演出に対する批判的な声が飛び交った。歌を聴くだけでなく、「アーティストの姿を生で見たい」という目的でライブを訪れる人も少なくないため、反発が強まっているのだろう。
その一方で「ライブに行ったら顔出しなんて関係なく歌声に圧倒されるよ」「顔出しなしを批判する人いるけど、歌だけで勝負して国立にたどりつけるのスゴくない?」「当たり前だけど、生歌、生演奏はYouTubeと迫力が全然別モノです」といった擁護の声もあり、賛否両論となっているようだ。
従来の感覚だと確かに「顔出しなしの国立ライブ」に違和感を覚える人は少なくないだろうが、VTuberのコンサートなどではキャラクターの姿のみが会場に映し出され、歌っている本人の姿がないライブ形式を若年層のファンが自然に受け入れている。ライブスタイルが変化していく過渡期だから賛否が起きているだけで、「新時代の歌姫」であるAdoが先陣を切って“顔出しなしライブ”を実力で定着させていくのかもしれない。