「ハイパーインフレ」といっても、あまりピンとこない人が多いかもしれません。多くの場合、戦争やその他要因による財政の極端な悪化等によって発生する経済的な危機を指しますが、新型コロナウイルスの影響で日本でも発生する可能性があると指摘する声も出てきています。「ハイパーインフレ」がどんなもので、どう備えるべきか紐解いていきましょう。

ハイパーインフレとは

ハイパーインフレとは、過度にモノの値段が上がりすぎる状態のことです。国の財政悪化やお金の供給量が増えすぎたことなどが原因でお金の価値が下がってしまい、1つのモノを買うために必要なお金の量が増えてしまうのです。

モノの値段が上がっていく状態を「インフレ(インフレーション)」といい、日本の政策では毎年2%のインフレを目標にしているくらいなので、それ自体は悪いものではありません。ただし、「ハイパーインフレ」となるとレベルが違います。

たとえば、ジンバブエという国で発生したハイパーインフレでは、インフレ率は2億3,000万%と公表されています。なんと、自国通貨ジンバブエ・ドルは約300兆ドルで日本円1円程度の価値に。

市民は普段の買い物に、大量の札束を持っていかなくてはならない事態になり、最終的には「100,000,000,000,000(100兆)ドル紙幣」まで発行されるなど、経済は大混乱になりました。

ハイパーインフレは一度発生してしまうと、国や中央銀行がコントロールしきれない危機的な状態になってしまいます。

ハイパーインフレは日本でも起こる?

実は、日本でも戦後すぐの時期にハイパーインフレが起きています。このときは預金封鎖などの手段が取られました。

現代の日本でハイパーインフレが起こる可能性は低いとされてきました。しかし、新型コロナウイルスの対応で国民1人あたり10万円の一律給付や、企業への税制優遇といった財政出動が盛んになる今、今後ハイパーインフレになる可能性もゼロではない、と指摘している経済評論家もいます。国の財政が急激に悪化し借金が増え続け、日本の信用力が急低下すると日本円の価値が低くなる可能性があるからです。

完全に他人事とはいえないハイパーインフレが、万が一起きたら…と考えると不安かもしれません。発生する確率が低いとはいえ、負担にならない程度に備えておきたいものです。

ハイパーインフレに備えるには

方法1 インフレに強い資産を持つ

株式、投資信託、外貨預金といった資産はインフレに強いとされています。基本的に物価が上がって企業の売上も上がれば、それに関連する株式や投資信託の資産としての価値も上がります。また、日本円ではなく外貨を持っていれば、インフレで円の価値が下がっても外貨の価値は相対的に上がるでしょう。

それに対し、将来の受け取り額が決まっている円建ての貯蓄型保険や債券などは、インフレに弱いという特徴があります。インフレが起きようが受け取り額は固定なので、インフレになればなるほど資産が実質目減りする状態になってしまいます。

運用商品にはリスクが付きものですが、うまく活用すればインフレに強い資産となるでしょう。

方法2 モノを生み出す技術を身に付ける

ハイパーインフレになり、実質的にお金が紙切れ同然の価値になってしまうと、物々交換が主流になるかもしれません。そうなると、自らモノを作りだす技術がある人が有利になると考えられます。

今の時代はVUCA(変動・不確実・複雑・不透明)時代と表現されます。そのような時代において、自力で食べていけるだけのスキルを身に付けることは、インフレ対策としてだけでなく、先の見えない時代を生き抜くためにもきっと役立つでしょう。