◆放課後の教室で男子にペディキュアを塗らせた実話に感動

――『SPUNK‐スパンク!‐』の主人公は、奔放でパワフルな夏菜(かな)と対象的に、もう一人の主人公・冬実はこじらせ気味な文学少女。うじうじしているように見えて、実は結構傲慢(ごうまん)というか…。

新井英樹(以下、新井):無神経だよね(笑)。俺、普段「自分はこれだけデリケートなんだ!」って言ってる人の繊細じゃない部分が見えた瞬間に笑いこらえるのが大変で。自分が繊細でありたい部分以外は結構ひどかったりするのに、それに気づいても見ないようにしてるんだろうなって思う。

――冬実には、特定のモデルはいるんですか?

新井:いないけど、放課後に男子にペディキュアを塗らせるっていうエピソードはゆみこさんのお店にいた女王様のエピソード。「地方の高校、放課後の教室で塗らせた」って聞いて、俺感動しちゃって。それすごい!って。

『SPUNK‐スパンク!‐』で書きたいエピソードの2本柱のひとつがこれだった。もう一つが、白線もそうなんだけど、倉科(くらしな。マゾヒストのヤクザ。前回記事参照)との話。嵐の中、ベランダで…っていうのが、抜群だなと。

――第1話目で、知らないおじさんにボンテージを買ってもらった直後に、いきなりパッと水攻めのシーンに切り替わるリズムがすごくいいなと思いました。

新井:第1話目はかなりリズム重視だった。パワフルで元気のいい話ですってやっておいて、第2話目でわざと多めのモノローグにしたのは、ほらめんどくさいでしょ?って(笑)。でも下手すれば、大半の人はこれ(第2話)に近いでしょ。1話目と2話目を対比にして、テンポもリズムも変えようと。

月刊コミックビーム編集担当・清水(以下、清水):第2話目で、あれだけモノローグで一生懸命自分語りしたのに、最後に「オモんな」って言われる(笑)。でもそこから「切実と滑稽(こっけい)」に繋がっていく。