明治時代、東京の日比谷公園を設計し「公園の父」とも呼ばれる本多静六氏は、独自の蓄財投資法や生活哲学の実践によって莫大な財産を築きました。そのノウハウが凝縮された著書『私の財産告白』(実業之日本社)から資産を増やすための本質とは何か、紐解いてみましょう。

本多静六氏とは何者か?

本多静六氏は「伝説の億万長者」とも呼ばれる人物です。明治時代から大正時代にかけ、林学博士として東京大学教授を務めたほか、日本を代表する公園の設計を手掛けたことで知られ、東京の日比谷公園のほか、明治神宮や福岡の大濠公園なども本多静六氏の作品です。

本多静六氏はこのように学者・造園家として成功した人物ですが、現在においては「投資家」としての成功にスポットライトが当てられることが多いです。

農家に生まれ、若い頃は貧しい暮らしをしていた本多静六氏ですが「収入の4分の1を貯金」「少し貯まったら投資にまわす」「無理をせず辛抱強く好機を待つ」を実践し、現在の価値で資産100億円を築くまでに成功を果たしたと言われています。

1952年に85歳で亡くなりましたが、晩年の1950年に出版された『私の財産告白』のほか、『人生計画の立て方』『私の生活流儀』は、今も多くの投資家に読み継がれている名著です。

本多静六氏の蓄財投資術

前出の通り、本多静六氏の蓄財投資術としては以下の3点が挙げられます。

  • 収入の4分の1を貯金
  • 少し貯まったら投資に回す
  • 無理をせず辛抱強く好機を待つ

この中でも「収入の4分の1を貯金」は「4分の1天引き貯金法」などとも呼ばれとくに有名で、莫大な資産を築くための第一歩として私たちが何をすべきかを示していると言ってもいいでしょう。

本多静六氏は給料が入るとその25%を貯蓄に回し、ボーナスなどの臨時収入もすべて貯めるというスタイルを徹底していました。

利子率が一定だとしても、預金額が多ければ多いほど受け取ることができる利子の金額は当然大きくなり、資産は膨らみます。本多静六氏が100億円という資産を築くまでに至った最初の一歩は、こうした考え方にあるとされています。

本多静六氏はこれを「雪だるま」に例えています。小さい雪玉も転がしていけばどんどん大きくなるといった例えです。

手取り額が30万円であれば7万5,000円を、手取り額が50万円であれば12万5,000円を貯蓄にまわすということは、支出を適切にコントロールすれば決して難しいことではないでしょう。きちんと意識すれば、「4分の1天引き貯金法」は多くの人が実践できるはずです。

貯蓄だけではなく「投資」も重要

このような貯蓄が重要と言える一方で、現代は本多静六氏が生きていたころとは異なり、ゼロ金利の時代です。毎月貯蓄をすることで預金額は増えていくものの、利息にはあまり期待ができません。

そこでこれからの時代に実践したいのが、「少し貯まったら投資にまわす」「無理をせず辛抱強く好機を待つ」の2つを実践して資産を増やしていくという視点です。

とくに「無理をせず辛抱強く好機を待つ」という考え方は、現代の「投資の神様」とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏が実践する「バリュー投資」ともつながるもので、資産を増やすためには有効な手法であると言えます。

バリュー投資とは、価値が低いときに株式を購入して資産を増やしていく手法のことを指します。世の中が不景気になると株式マーケット全体で値動きが下落傾向になり、バリュー投資の好機が訪れます。本多静六氏もこうした手法で積極的に投資を行って資産を増やしました。