映画『CLOSE/クロース』が描く、美しくも儚い少年時代の葛藤

夏になるとわくわく楽しい気持ちが盛り上がる一方で、ほろ苦い思春期の思い出がふと蘇ってくることも。

誰もが経験する「後悔」と「孤独」、自分らしく生きることの難しさにもがいていた頃――。

7月に公開するフランス映画『CLOSE/クロース』は、そんな少しセンチメンタルな気分にリンクする作品です。

 

CLOSE/クロース

無垢な少年に起こる残酷な悲劇と再生を描いた映画『CLOSE/クロース』は、第75回カンヌ国際映画祭で「観客がもっとも泣いた映画」と称され、グランプリを受賞した話題作。

監督を務めるのは『Girl/ガール』で自分らしく生きることの難しさとアイデンティティの苦悩を描き、鮮烈なデビューをしたルーカス・ドン監督。長編2作目となる『CLOSE/クロース』では、学校という社会の中で彼自身が直面した葛藤や不安を題材に瑞々しく繊細に表現しています。

 

映画『CLOSE/クロース』あらすじ

花き農家の息子のレオと幼馴染のレミ。昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべる。24時間365日ともに時間を過ごしてきた2人は親友以上で兄弟のような関係だった。

13歳になる 2人は同じ中学校に入学する。入学初日、ぴったりとくっついて座る2人を見たクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。「親友だから当然だ」とむきになるレオ。

その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。毎日一緒に登下校をしていたにも関わらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。2人はその場で大喧嘩に。

その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、課外授業にレミの姿はなかった。心ここにあらずのレオは、授業の終わりに衝撃的な事実を告げられる。それは、レミとの突然の別れだった。

移ろいゆく季節のなか、自責の念にかられるレオは、誰にも打ち明けられない想いを抱えていた…。

 

大切な人を失うことと共に過ごす時間の大切さ

CLOSE/クロース

「私はある意味、レオでありレミでもある」と語るルーカス・ドン監督。

自分自身に忠実で「自分らしく」生きようとするレミと、自分のアイデンティティと社会との狭間で悩みもがくレオ。時に残酷で、容赦のない10代特有の繊細なゆらぎを美しい映像と音楽で描き出しました。

CLOSE/クロース

ルーカス・ドン監督とレオとレミを演じたエデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル ©Thomas Nolf

「大切な人を失うことや、共に過ごす時間の大切さについても語りたいと思いました。

この物語は親密な関係の断絶と、それに伴う責任感や罪悪感に基づいています。

ある意味では、思春期への旅の始まりです。責任を感じながらも口に出せない重荷を背負うことについてどうしても話したかったのです」。

 

レオの悲しみを浮き彫りにする花畑

この映画で印象的なもののひとつが美しい花畑の風景。

いろとりどりの花々が咲き誇る畑の中を駆け回る少年たち。その時間が特別であることを伝えると同時に、その時間がなくなってしまったことの変化を伝えてくれる重要な存在となっています。

CLOSE/クロース

クライマックスで花畑の中に佇むレオの強い眼差しの向こうに何が見えているのだろうか。

2人が走り回った美しい花畑は、秋になると刈り取られ色のない景色に変わるけど、冬が過ぎると再び花が咲く。それが希望と生命が続いていくことの暗示であると信じたい。

今年公開された映画『怪物』(是枝裕和監督)にも通じる、多感な少年時代のもがきを描いた本作。

葛藤や後悔。そして、「自分らしくいたい」という切な願い。大人になった今、忘れてしまっていた感情と向き合うきっかけになりそうな作品です。

 

■作品情報

CLOSE/クロース

映画『CLOSE/クロース』

監督:ルーカス・ドン(『Girl/ガール』)

脚本:ルーカス・ドン、アンジェロ・タイセンス

キャスト:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ 2022年|ベルギー・オランダ・フランス|104分|ヨーロピアンビスタ|5.1ch|原題:Close|字幕翻訳:横井和子|G 配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES 提供:クロックワークス 東北新社

© Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022

公式HP:closemovie.jp

公式Twitter&Instagram:@closemovie_jp

7月14日(金)より全国公開