近年のキャンプブームにより、「キャンプ飯」も注目されています。でも「キャンプごはんは、ジャンクでボリューミー」というイメージを持っている人も多いはず。仲良しの友人と集まったなら、おしゃべりがますます弾むような、おしゃれでおいしいごはんを味わいたいですよね。
そこで今回は、料理家の柚木さとみさんに手軽に作れる「キャンプごはん」をご紹介いただきました。シーズンごとにさまざまなキャンプごはんを楽しんでいる柚木さんに、キャンプごはんのポイントや盛り付けのコツについても教えてもらいます!
柚木さとみ
料理家・フードコーディネーター。
吉祥寺のカフェで4店舗の統括店長を務め、メニュー開発やプロデュースを手がけるほか、大手料理教室の講師として活躍。現在は都内のアトリエで料理教室「さときっちん」を主宰し、企業やメディア向けのレシピ開発や、“食”を含めた暮らしと空間の提案を行う。2023年5月に女子キャンプをテーマにしたレシピ本『友だちと、空の下で、ゆるく料理を楽しむ。女子キャンプごはん』を出版。
おしゃべりと料理を同時進行で楽しむ「キャンプごはん」の魅力
―柚木さんは、いつからキャンプをするようになったのですか?
柚木さん:初めてキャンプに行ったのが2008年。友人に誘われて行ったのがきっかけです。その時、空の下で友人たちと賑やかに自由に過ごす時間がすごく楽しくて!それ以降、年2〜4回程度、キャンプを楽しんでいます。大抵は大勢で出かけて、わいわい楽しむグループキャンプが多いですね。
―料理家目線での「キャンプごはん」の醍醐味はなんですか?
柚木さん:季節や天気など、その時々の「自然」を肌で感じられる心地よさが一番の醍醐味だと思います。それから「おしゃべりと料理」も毎回の楽しみ。普段、家で料理するときは1人で淡々と進めることが多いですが、アウトドアでは、みんなでおしゃべりしながら料理を楽しむことができます。料理していると調理場に自然と人が集まって、「そのレシピ、教えて」「この調理器具、便利だね」など、情報交換と近況報告をしつつ楽しんでいます。
準備や下ごしらえはがんばりすぎない。「ゆるく楽しむ」をモットーに
―なるほど!おしゃべりと料理を同時に楽しめるのが、キャンプごはんの魅力ですね。
柚木さん:そうですね。なおかつ「ゆるく楽しめる」というのも、キャンプごはんが楽しいポイントだと思います。キャンプ場ですることといえば、メインはやっぱり「食べて飲むこと」。自然の中で、ただのんびり過ごすんです。だからこそ、料理もがんばりすぎず、ゆるく楽しみたいと考えています。
メニューに関しても、事前になにを作るかをきっちり決めることはあまりありません。道の駅に立ち寄って、その土地のものを購入することもあるため、「あるもので作る」ことが多いです。家から持参する食材は、「とりあえずお米と、冷蔵庫に入っていたもの」という感じ(笑)。みんなで持ち寄った食材を見て、「私はなにを作ろうかな?」とその場で考えるようにしています。新刊には、そうした中で生まれたレシピや、日頃から家でもアウトドアでも楽しんでいるレシピたちを掲載しました。
料理の進め方については、一気に作って同時に食べ始めるのも良いですが、「作りながら食べる」スタイルがすごく楽しいんです。お皿が空いたタイミングで「もう一品作ろう!」という流れなら、お腹の空き具合にも合わせられますしね。野菜を多めに使って、少量ずつ品数多めに作ればとってもヘルシー!
―前日に下準備をすることもありますか?
柚木さん:タンドリーチキンなどの肉料理は下準備をして持っていきます。といっても、自宅でタレに漬け込むだけ。特に肉類は、漬け込むことで痛みにくくなるのでオススメです。余裕があれば、野菜などを洗ったり刻んでもっていくことも。生ゴミを減らせたり、すぐに調理にとりかかれる良さがあります。とはいえ、自宅での準備が多いと出発前に疲れてしまうので、あまり頑張りすぎなくても良いかなと思っています。
蒸籠とグリルパンはキャンプでも大活躍!
―柚木さんが「アウトドアでも便利だな」と思う器具やツールはありますか?
柚木さん:「蒸籠(せいろ)」は便利ですね。じゃがいもや里芋、ブロッコリーなどの野菜を蒸すだけで1品出来上がりますし、冷めたごはんの温め直しや、硬くなったパンを蒸してふかふかにするなど、使い勝手抜群です!蒸籠が鍋のサイズに合うかどうかだけ注意すれば、さまざまなシーンで活躍してくれるはずです。
それから、グリルパンもおすすめ。波型のものであれば、肉料理の脂を落としてくれるのでヘルシーに仕上がりますし、蒸籠同様、調理してそのままテーブルに出せるのもお気に入りポイント。キャンプのときは、「できたて」を楽しむのも醍醐味なので、フライパンのまま、カッティングボードのまま並べて楽しむのも良いと思います。
また、トングと金串は、キャンプでも仕様頻度の高いツールです。特に金串は茹で加減や焼き加減を確認するのに重宝しています。
―「コレはマスト!」という定番の調味料はありますか?
柚木さん:オリーブ油とレモンと塩さえあれば、大体なんとかなります(笑)。味付けが同じでも、素材が変わると風味が変わってくるのが料理の面白いところ。サラダを作るとき、「オイルを先にかけるか後にかけるか」だけで食感が変わってくるので、ぜひ試しみてください。
おしゃれキャンプにぴったり!キャンプごはん3品
今年の5月に発行された柚木さんの著書『女子キャンプごはん』から、おすすめの3品を紹介してもらいました!キャンプ場での調理は、火の扱いに充分に注意し、こまめな手洗いや食材をクーラーボックスに入れるなど、衛生面への配慮も意識しましょう。
アペタイザー:「スモークサーモンのカルパッチョ」
【材料】(2〜3人分)
・スモークサーモン:120g
・紫玉ねぎ、ケーパー、ディル、スペアミント:各適量
・オリーブオイル、白バルサミコ酢(またはりんご酢、白ワインビネガー):各適量
・塩:ひとつまみ
【作り方】
1.紫玉ねぎは薄切りにして水にさらし、水気をきる
2.皿に紫玉ねぎを乗せて塩をふり、スモークサーモンを盛る。ケーパー、手でちぎったディルとスペアミントを散らし、オリーブオイルと白バルサミコ酢を回しかけたら完成!
柚木さん「スーパーなどで手に入りやすいスモークサーモンは、加工されているので痛みにくく、キャンプ向きの食材。カッティングボードの上で仕上げれば、洗い物も少なくて楽チン!
ミントなどのハーブを散らして彩り豊かに仕上げましょう。冷やした白ワインや辛口のロゼと相性抜群です」
メイン:「ガーリックチキンソテー」
【材料】(3〜4人分)
・鶏もも肉:2枚(約500g)
・塩:小さじ1/2(肉の重量の0.5%)
・にんにく:1片
・花椒粉:お好みで(“たっぷり”が◎!)
・オリーブオイル:小さじ1
【作り方】
1.鶏もも肉の水分をペーパータオルでふき、余分な脂を除く。皮目全体にフォークで穴をあけ、全体に塩をすり込む。にんにくは2mm幅に切る。
2.フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて中火で熱し、鶏肉を皮目から入れ、片面4分ずつ色よく焼く。にんにくが途中焦げそうになったら一度取り出し、仕上げに再び加える。
3.食べやすい大きさに切り、塩少々(分量外)をふり、花椒粉をふる。
柚木さん「フライパンでじっくり焼くだけの、簡単肉料理です。ご飯に乗せても良し、パンにはさんでも良し♪このレシピでは花椒粉を使っていますが、ドライハーブやレモン醤油もおすすめですよ。ビールやハイボールなどのシュワっとした発泡系のお酒と一緒に召し上がれ!」
デザート:「ピーナッツスモア」
【材料】(2人分)
・マシュマロ:80g
・ミックスナッツ(有塩):10g
・ピーナッツバター(有塩):大さじ2
・塩:少々
・クラッカー:適量
【作り方】
1.フライパンにオーブンシートを敷いてマシュマロを並べ、ピーナッツバターを散らしてのせる。
2.蓋をして中火にかけ、3〜4分加熱する。マシュマロが膨らんでやわらかくなり、ピーナッツバターが溶けたら火を止め、砕いたナッツを散らして塩をふる。クラッカーにディップしたり、サンドして食べる。
柚木さん「本来スモアは、チョコレートとマシュマロで作りますが、このレシピはピーナッツバターでアレンジしました。常温保存できる食材ばかりで痛みにくいからこそ、「当日に消費しなきゃ」と焦る心配もありません」
「家にある器」でOK!キャンプごはんの盛り付けのコツ
―書籍で紹介されている料理はどれも素敵ですよね!おしゃれに見える盛り付けや、食器選びのポイントはありますか?
柚木さん:料理はこんもりと山高に盛ると、見栄えが良くなりますよ。具材が多い料理の場合は逆に、具材を器に散らしてあげるときれいに仕上がります。バランスを見ながら試してみてください。
また、キャンプごはんの器選びは、木製やステンレス、琺瑯(ほうろう)製などの「破損しにくい素材」を意識すると良いでしょう。最近よく持っていくのが、漆器ブランド「ノダテ」のマグ。漆器でありながら、アウトドアでも使いやすくてお気に入りです。
キャンプだからといって、アウトドア用のアイテムにこだわる必要はありません。そこもやはり「がんばりすぎない」のスタンスで、普段使いしているものを持ち寄って盛り付けるのも楽しいと思いますよ。
―今すぐ試してみたくなる素敵なお話を、ありがとうございました!
■書籍情報
『友だちと、空の下で、ゆるく料理を楽しむ。女子キャンプごはん』(グラフィック社)
著者:柚木さとみ