AJR(左からアダム、ジャック、ライアン)
アメリカの注目のポップ・ロック・バンド「AJR(エイ・ジェイ・アール)」が、日本の人気フェス「GREENROOM FESTIVAL ’23」出演のため初来日を果たした。
AJRは、2006年から活動しているバンドで、アダム・メット(ベース、ボーカル)、ジャック・メット(ボーカル、ギター)、ライアン・メット(ウクレレ、ピアノ、ボーカル)の3人兄弟で構成されている。
ニューヨークのチェルシーにあるアパートのリビングルームで作曲、制作、ミキシングを行う3人は、これまでに何十億再生ものストリームを生み出し、ヒットメーカーの仲間入りを果たし、世界でもっとも大きなインディーズバンドの1組に。
2013年リースした「I’m Ready」のMVを約80人のセレブに送るなどのSNSの活用が音楽関係者の目に留まり、フェスなどの参加に繋がり一躍有名に。2019 年、3枚目となるアルバム「Neotheater」は全米アルバム・チャートで初登場8位、トップ・ロック・アルバム・チャートで1位を獲得した。
シングル「Bang!」は、これまででもっとも高いチャートを記録したシングルとなっており、2021年1月20日の全米シングル・チャートで8位を記録し、2021 年にはビルボード・ミュージック・アワードでトップ・ロック・ソング賞を受賞している。また、2021年にリリースした「World's Smallest Violin」は TikTok でバイラルヒットを飛ばすなど、今注目のバンドだ。
今回、「GREENROOM FESTIVAL ’23」出演のため待望の初来日を果たしたAJRにtvgrooveは単独インタビューを実施。バンド結成の経緯、兄弟で活動するメリット&デメリット、SNSからのヒット、そして新曲についてたっぷりと語ってもらった。
バンド名は3人の名前の頭文字!
ーーまずはじめに「AJR」というバンド名の由来を教えてください。
ジャック:アダム(Adam)、ジャック(Jack)、ライアン(Ryan)のそれぞれの名前が由来だよ!覚えるのも簡単だし、自分たちの名前の頭文字をとって「AJR」というバンド名にすることにしたんだ。
NYストリート・パフォーマーから本格的なアーティストへ
ーーバンド結成の経緯を教えていただけますか?
ジャック:17~18年前に、僕たちのお父さんが家で音楽をかけていたんだ。彼は音楽ファンで、それを聴いていたから家族全員が音楽が大好きになって、それがすぐに僕たちの情熱となったんだ。それで、僕たちで何かやりたいねとなったけど、音楽業界のコネクションもないし、お金も全然なかった。ニューヨークはストリート・パフォーマンスがすごく盛んで、そこで僕たちもいまある楽器を使ってストリート・パフォーマンスをやるようになって、それでお金を稼いで機材を買った。それから10年間、曲を作り続けてここまできたよ。
ーーAJRのみなさんは兄弟バンドで、小さい頃からずっと一緒に過ごしているわけですよね。兄弟で仕事をし、プライベートでも多くの時間を一緒に過ごすことをどう感じますか?
ライアン:兄弟で一緒に時間を過ごして、一緒に仕事というか活動をするっていうのは、自分たちにとってプラスになってると思うよ。例えば、子供の頃から一緒におもちゃで遊んで、みんなで役割分担して色々組み立てていく…それがいまツアーや楽曲制作っていう大きな規模になっているんだ。だから小さい頃からコミュニケーションの取り方はずっと同じだね。
ーー逆に、ずっと一緒にいることでデメリットに感じることはありますか?
ジャック:やっぱり休息がないってことかな。ツアーもずっと一緒にやって、僕たち家族は本当に仲がいいから休みの時も一緒に過ごすんだ。だから、たまにはお互いに会わず違うことをしてまた帰ってきて、それが新鮮になるっていうこともあるね。
あの人気アーティストの目にとまり、注目を浴びる!
ーーAJRのみなさんは、2013年リースした「I’m Ready」のMVを約80人のセレブに送るなどのSNSの活用が音楽関係者の目にとまり、フェスなどの参加に繋がり一躍有名になりました。MVをセレブたちに送るといったそのアイディアはどのように思いついたのでしょうか?
ライアン:10年活動している中で、当時は誰も気にかけてくれなかったし全然成功もしていなかったから、もう「何でもとりあえずやってみよう!」という精神だったんだ。失うものもないし、セレブにMVのリンクを送ってみようと。これがダメだったらもうバンドを辞めようとも思っていたんだけど、体当たりでジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスなど色々な人に「僕たちの音楽をぜひチェックして!」って送ってみたんだ。そうしたら、シーア(Sia)が反応して僕たちのことをすごく気に入ってくれて、業界の人に紹介してくれて僕たちはスタートを切ることができたんだ。たくさんの労力を注いだ末、その1つの瞬間から人々に注目してもらうことができたよ。
アルバム&シングルがヒット!AppleのCM曲に起用され知名度さらにUP!
ーー2019年にリリースした3枚目のアルバム「Neotheater」が全米でヒットを記録し、シングル「Bang!」も全米のシングルチャートで8位を記録しました。アルバムと楽曲のヒットを受けてどのように感じましたか?
ジャック:本当にすばらしい経験でうれしかった!今の時代、本当にたくさんのアーティストであふれているから、目立つということがすごく難しいと思う。そんな中で、みんなが僕たちの楽曲に注目してくれたということがすごくうれしかった。僕たちの音楽ってちょっと風変りで、万人受けするものではないと思うだ。そこにみんなが繋がりを感じて、楽しいと思ってくれたことがすごくうれしかったよ。
ライアン:それにアルバムというのは僕たちにとってとても重要なんだ。人々がシングルを聴く時代でも、僕たちは各アルバムにたくさんの労力を注いでいる。「Neotheater」は一つの完成されたアルバムであり、それをみんなが受け入れてくれて、成功したことがすごくうれしかったよ。
ーー「Bang!」はApple Watchのコマーシャルにも使われていましたよね。大きなコマーシャルに起用されるのも影響力がかなりあったんじゃないでしょうか?
ジャック:そうだね。これまで友だちに「君たちの曲聴いたよ」と言われたことがなかったんだ(笑)。僕たちの曲を聴いてもらいたければ彼らが自分で検索しないとたぶん出てこなかったと思うんだけど、みんなが「聴いたよ!」と反応してくれて、そこでこんなに僕たちの音楽って広がってくれているんだなっていうことをすごく感じたよ。すごくクールな瞬間だった。
アダム:ラジオだったらそこの地域、国や都市でしか放送されないと思うけど、Appleという全世界規模で、アメリカだけでなく違う国でもいっぱい流れて国際的に広がってくれたっていうのもすごくあると思う。
「World's Smallest Violin」がTikTokで大バズり!
ーー2021 年にリリースした「World's Smallest Violin」はTikTok でバイラル化し、MVはYouTubeで1億5000万回近くも再生されています。TikTokで多くの人がこの楽曲をカバーし、また、楽曲を使用している動画を見てどのように感じましたか?
アダム:すごいおもしろいなと思ったのが、TikTokの中で「World's Smallest Violin」が最初に流行ったのは、みんなが自分のことを振り返るイラストとかアニメを描きながら、そのBGMにこの曲が使われていたことなんだ。これまで僕たちの曲の広がり方っていつも違っていて、ときにラジオから、ときにSNSやコマーシャルから…という感じで、その原点っていうものが違っていておもしろいなと思ったよ。そして、この曲は歌詞がすごく複雑なんだけど、英語が母国語じゃない人たちまでそれを理解して繋がりを感じてくれたということが、すごくうれしかったよ!
ーーやはりSNSの影響力はすごく大きいと思います。最近のアーティストはバズるのを意識して音楽を作る方もいますが、そういう風に音楽を作る上でSNSでこういう風に使われるかなとか意識されたりすることもありますか?
ジャック:僕たちはそういうことを意識しているわけではなく、自然とああいう曲をこれまでずっと10年間作り続けてきたんだ。TikTokとかSNSでバズる曲っていうのは、出だしがすごくユニークで、そこから変な楽器のサウンドだったり、リズムがすごく変わったりとか印象に残るフレーズがあるのがたぶんバズりに繫がってる部分はあると思う。僕たちがずっと作り続けてきた音楽がまさにそういう音楽だったんだ。すごく退屈しちゃう性格だから、10秒何かやったら全く別のことを10秒やっちゃうみたいな、そういう曲の作り方っていうのがSNSにマッチしていたんだと思う。今回、新アルバムを作っている時もそういう話し合いも別にしているわけじゃないんだけど、「なんだかこれTikTokウケしそうだね」なんて、気づいたらまたそういう音楽が出来あがっているんだ。
ーーいま新アルバム制作中ということですが、アルバムのコンセプトを教えて頂けますか?
ライアン:一つ言えるのは、これまででもっともパーソナルな作品に仕上がっているということだね。「自分自身を問う」ようなそういう内容になっている。5枚目のアルバムだから、もちろん直感を信じて曲を作っているのだけど、それでできたサウンドっていうのが「これ、前もやったな」っていうのが結構あるんだ。だから新しいサウンドを作るということが10倍大変になっているだ。そういうこともあって、じっくり自分たちの中で考えて作っていっているから、これまでで一番エモーショナルなサウンドになっているんじゃないかな。
新曲「The Dumb Song」のコンセプトと楽曲に込めた想い
ーー今年4月に新曲「The Dumb Song」をリリースしました。楽曲のコンセプトについて教えていただけますか?
ジャック:一番最初に、すごくハイエナジーでとってもハッピーで、スピードの早いものを作ろうと思ったんだ。そのアイデアから完成までに1年半かかったんだけど、歌詞の内容としては大きなテーマがあることを伝えたかった。悲しいものの中にポジティブな要素を引き出すっていうアイデアを思いついて、「それでいこう!」となって曲作りを進めていったんだ。
例えば、「Dumb(バカな)」っていう言葉でちょっとひねりを効かせて、逆にそこから見出せるポジティブな部分は何かって考えた時に、「純真無垢」で「無知」で、逆に何も気にしないで「自由」だったりとか、そういう部分があっていいんじゃないかと思ったんだ。それを引き出していくうちに、早いスピードやハイエナジーなサウンドに調和して、皮肉で楽しいものになったよ。そういうコンセプトで曲を作っていったんだ。
ーー「The Dumb Song」のMVは、1年半もの月日をかけて制作されたそうですね。曲を制作し始めた初期からの過程をホームビデオ風に収めていてとてもユニークでステキだなと思いました。このMVに込めた想いを教えていただけますか?
ライアン:曲作りと同時に、制作も収録してMVを作るっていうアイデアが、おもしろいなと思ったんだ。映画もそうだけど、製作の舞台裏の様子を見せることによってその作品がいかにして、どういう労力が費やされて出来あがったかというのがわかると思う。この楽曲は「The Dumb Song」というタイトルだから、おちゃらけた感じで簡単に出来たんじゃないかって思われるかもしれないけれど、MVを見ることによってこの曲が出来あがるのにこんなことをやって、こんなに時間が費やされてるんだというのがわかってもらえるとも思う。
イマジン・ドラゴンズの欧州ツアーのゲストとして出演決定!
ーーこの夏には人気バンド イマジン・ドラゴンズのヨーロッパ・スタジアム・ツアーのスペシャル・ゲストとして参加が決定しています。大規模なステージでパフォーマンスすることへの意気込みを教えてください。
ジャック:僕たちは彼らの大ファンだったし、しかも音楽スタイルも繋がりを感じることが出来ていたから、オファーが来たときは「やった!!」と感じたよ。イマジン・ドラゴンズは大成功しているバンドだし、ツアーの規模もすごい。ヨーロッパでライブをしたことはあるけど、あんなに大勢の、一晩で8万人というスケールでやったことがないから、その規模で音楽を披露することが出来るのはすごく楽しみだよ。あと、ここ7年くらいオープニングアクトというものをやっていなかったから、あの頃に戻るというかそれをまた経験することが出来るというのもうれしいし楽しみだね。
ーーこれまでたくさんのツアーをおこない、様々なアーティストとも共演しているAJRのみなさんですが、とくに印象に残っているステージはありますか?
ジャック:アメリカのデンバーの山の中で演奏する「Red Rocks」だね。アメリカではとても有名なステージで、僕たちが幼い頃お父さんが「Red Rocksで演奏したら成功者だ!」と言っていたんだ。そして実際、僕たちはそのステージに立って9000人の前でパフォーマンスしたんだ。ソールドアウトしたよ。そこにお父さんも来てくれて、最前列で見てすごく感動して泣いていたんだ。美しい瞬間だったね。お父さんにとって、そして僕たちにとっても忘れられない夜になった。あのときお父さんは「お前たちはよくやった」と思ってくれたと思う。
ーーまさに親孝行ですね。週末には「Greenroom Festival」に出演されます。日本のファンの前で演奏する意気込みを教えてください。
ジャック:僕たちはパフォーマンスすることが本当に大好きで、僕たちにとって音楽とパフォーマンスすることは繋がっているんだ。そのエナジーを皆さんにお届けできたらなと思う。ステージには特別なエフェクトも加えているし、特に日本では初のショーだからさらにその興奮が伝わってくるんじゃないかなと思う。
ーーたくさんお答えいただきありがとうございました。最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
こんにちは、AJRです。ファンのみなさんに感謝しています!僕たちにとって初めての日本なので、みなさんのために演奏するのが楽しみです。そしてヘッドライナーとしてまた演奏しに日本に戻ってきます!僕たちの音楽がここまで来ることができてうれしいです。本当にありがとうございます!
(インタビュー終わり)