話題となったナタリア・グレース・バーネット話題となったナタリア・グレース・バーネット

養子に迎えた6歳の少女は実は大人の詐欺師だった…?映画『エスター』のような展開が話題となっている。

今回話題となっている少女は、ウクライナ出身の家族により養子に出されたナタリア・グレース・バーネット。骨の成長障害を患い、小柄な見た目をしているナタリアは6歳のとき、アメリカの養父母に引き取られたのだが、養父母は一緒に暮らすうちに「(彼女は)子供を装った、反社会的人格を持つ大人」なのではないかと思うようになっていったという。

米Insider誌によると、この複雑な物語は、犯罪ドキュメンタリーに特化した米テレビ局「Investigation Discovery」の新ドキュメンタリーシリーズ「The Curious Case of Natalia Grace」内で紹介された。制作者側はこの事件の真相を明らかにしたかったようだ。

バーネット夫妻は2010年、フロリダの養子縁組機関を通じてナタリアを養子に迎えた。養父マイケル・バーネットは、ドキュメンタリー内で、ナタリアを養子にするかどうかを決めるために“1日”という時間が与えられたと語っている。マイケルによれば「彼女は形成不全です。24時間以内に署名しないと、彼女はすぐに里親のもとに行くことになります」と言われたという。

マイケルは、「私たちは愛されることのない危険にさらされている人を助けたかったので、ナタリアを養子にした」と彼女を家族に迎えた理由を説明。ちなみに、ナタリアの出生証明書には【2003年9月4日生まれ】と記載されていたという。

マイケルによると、一家は当初、ナタリアが大人だとは思っていなかったそうだ。ナタリアは脊椎骨端異形成症(※)を患っており、身長は3フィート(約91cm)しかなかったという。

※骨格の形成異常などを特徴とする病気。

養子縁組の翌日、妻のクリスティーン・バーネットがナタリアをお風呂に入れたところ驚愕(きょうがく)の事実が発覚する。なんと、6歳であるはずのナタリアの陰部には毛が生えていたのだ。さらに、クリスティーンはナタリアの寝室で血のついた下着を発見。彼女に生理があることがわかったという。

マイケルはまた、ナタリアは反社会的な行動もとっていたとも述べている。ナイフをため込んでいたナタリアは、あるとき「寝ているアンタをこ〇す」とマイケルに言い放ったこともあったそう。実際、彼女がナイフを持ち、ベッドの足元に現れたこともあったという。

ナタリアの不審な行動は止まらず、クリスティーンのコーヒーに洗剤を注いだり、彼女を電気柵に押し付けたり、夫妻の子供たちを脅したりすることもあったという。

その後、ナタリアは州立の精神病院で一定の期間を過ごし、病院のセラピストは彼女を「社会病質者」と診断。病院のスタッフによれば、ナタリアは男性患者に対し「不適切な」性的発言もしていたという。

ナタリアは大人であり、彼女の出生証明書は偽造されたものであると確信したバーネット夫妻は、裁判所に出生記録の変更を申し立てた。彼らの主張は認められ、ナタリアは【1989年9月4日生まれの23歳】と判断されたという。

その後、バーネット夫妻はナタリアのためにアパートを探し、自力で生きていくよう言ったものの、ナタリアは電気と電話回線の支払いが行えず、当局が介入。彼女は隣人のシンシア・マンズ家に引っ越し、社会福祉士の支援を受けることになった。一方、捜査官に尋問されたバーネット夫妻は、ナタリアを3年以上も放置したとして非難されたという。

この事件は、映画『エスター』(2009)に酷似している。物語の主人公は、ある夫妻に養子として引き取られることになったエスター。新しい家族ができ幸せいっぱいかと思いきや、エスターは9歳の少女とは思えないような反社会的な行動や性的な発言をし一家を翻弄(ほんろう)させる。やがて、エスターは病気が原因で幼く見えるだけで、本当は33歳の大人であることが明らかになるのだ。

当局は障がいを持つ娘を育児放棄した罪で夫妻を起訴したが、マイケルは2022年秋にすべての罪状で無罪判決を受けている。一方のクリスティーンも今年2月に裁判が予定されていたが、事件は却下されている。

なお現在、ナタリア・グレースを題材としたHuluのリミテッドシリーズの制作が進められており、妻クリスティーン役を医療ドラマ「グレイズ・アナトミー」で知られる女優のエレン・ポンピオが演じることが決定している。