旅先で出会う楽しみの一つがクラフトビール。明石駅近くの「明石麦酒工房 時」は、小さなブリュワリーだからこそできるリーズナブルなパブを併設。できたての新鮮で保存料を使わないビールが、美味しいおつまみと一緒に楽しめます。
旅先ならではの醍醐味「クラフトビール」
今や日本のあちこちで造られている クラフトビール。その魅力は 小さなブリュワリー(=マイクロブリュワリー)でビールが造られていることです。というのも、大手ビール会社ではできない小回りの効く造り方で、さまざまな個性ある味わいが出せるから。
そもそも、日本では法律により長らく大手ビールメーカーしかビールの製造販売ができず、大手が造るラガーしかほとんど流通していませんでしたが、本来、ビールの種類はラガー以外にも驚くほどたくさんあるんです。そんなさまざまな造り方が、小さなブリュワリーでは可能です。
また、クラフトビールは「地ビール」とも呼ばれる通り、その土地に行かなければ飲めないということもあり、地域の特徴を生かしたビール造りをしているブリュワリーもたくさんあります。
今回ご紹介する「明石麦酒工房 時」も、明石 にある、そんなマイクロブリュワリーの一つ。でも、ただ醸造しているだけではありません。同じ敷地内にあるパブ、すなわち居酒屋で、造りたてのビールが楽しめるんです。
ブリューパブ 「明石麦酒工房 時」 の魅力
ひとことで「マイクロブリュワリー」と言っても、今や規模はピンキリ。現地に行かなくても通販や全国のショップで購入できたり、ビアバーでタップ(いわゆる生ビール)で飲めたりと、販路を広げているブリュワリーは多くあります。
しかし、 「明石麦酒工房 時」はとっても小さいブリュワリーで、地元の人からも、ビール好きな人からも一目置かれています。その魅力とは?!
脱サラしてビール醸造を手がけるブリュワー・清原さん
どんなお店も商品もそうですが、小さければ小さい規模であるほど、造り手やオーナーの想いが表れやすいもの。「明石麦酒工房 時」も、オーナー兼ヘッドブリュワー 清原さん の “人” としての魅力が、お店やビールに表れているんだと思います。
穏やかな笑顔が印象的な清原さんは、元々、企業でものづくりをしていたサラリーマンで、ビールも大手のものしか知らなかったんだそう。しかし、あるきっかけで、小さな醸造所でビールが造れること、そして造りたてのビールを安価な値段で飲めることを知って衝撃!そして感動!
そうして脱サラを決意し、ビール醸造家の道へ。
ここでしか飲めないビールを提供する「ブリューパブ」スタイル
清原さんが目指したのはビールを醸造するだけではなく、造りたての美味しいビールをリーズナブルに提供するパブ、いわゆる 居酒屋 をやること。そのような、醸造所とパブを併設したスタイルのお店を「ブリューパブ」もしくは「ブルーパブ」と呼びます。
お店の名前は、日本標準時の基準となる 子午線 が通る明石だから「時(とき)」。“地元に根付いた、地元に愛されるお店” を目指して、「時」を2016年にオープンさせました。
お店の外側に「のぞいて!自家醸造」と小窓があるので、ぜひ覗いてみてください。とっても小さな醸造所であることがわかります。逆に「こんな小さな場所でもビールって造れるんだ!」と思うに違いありません。
店内からもチラリと醸造所が見えます。手書きの「醸造室」という札が、なんとも手造り感があって良いですね。
このように、小さいからこそ仕込みから樽詰めまでの全工程を、全て手作業で行うことができる。定番ビールを造ろうと思っても「こうしたらもっとよくなるんじゃないか」と、毎回、試行錯誤をして美味しさを追求していると、同じスタイルのビールでも、毎回レシピが変わっちゃうんだとか。
そんな小回りが効く「明石麦酒工房 時」なので、やっぱり生産量は少量。だから、ここのビールはここでしか味わえない、ということなのです。
“地ビールは高い” を払拭したい!
「地ビール、クラフトビールは高い」というイメージはありませんか? 確かに大手メーカーのビールと比べると手間暇や原材料費などは、安価というわけにはいかないかもしれませんが、やはり 付加価値 を考えると「多少高くてもしょうがないのかな、せっかく来たんだから飲んでみよう」と思いがち。
しかし「明石麦酒工房 時」が目指すのは、地元の人も気軽に飲みに来られるようなお店。だから、価格帯も他のブリュワリーと比べるとリーズナブルであるのがわかります。
例えば、一番定番の「いつもの」。ペール・エール というモルトのコクやホップの香りがふくよかに感じられるのが特徴のビールが、ジョッキでなんと 550円! 普通の居酒屋と変わらないお値段なのです。
肩肘張らない店内、美味しいおつまみたち
“普段飲み” として気軽に地ビールを飲みに行けるお店を目指しているので、肩肘張らない普通の居酒屋のような雰囲気です。
ビールは常時6種類ほど繋がっており、説明がわかりやすいく書いてあります。やはり手書きのボードは味があって良いものですね。また、ゲストビール として他のブリュワリーのビールも2種類ほどつながっていることもあります。
明石にちなんだネーミングの「子午線ブラック」だったり、「バジルの恵み」や「赤石の紫蘇」は地元の農家さんのバジルや紫蘇を使用しているなど、地元愛が伺えます。
フードメニューも、どれもリーズナブル! すぐに出てくるちょっとしたおつまみから、ちゃんとした料理まで色々。
カウンターに色々手書きで紹介されているのは、やっぱり人気のものだったり、その時期オススメのもの。中でも最初に頼むのに一番人気なのが ほろ酔いセット 。
自家製ビールに 450円プラス で、人気のおつまみ 塩茹で枝豆 と 2色から揚げ の2皿がついてきます。
特に 2色から揚げ(780円) は、お店で人気No.1のメニュー。白い衣の方は麹を使った唐揚げだそう。どちらもジューシーで香ばしく、まさにビールが進みます。普通にオーダーすると、もっと盛りっと出てきますが、ほろ酔いセット であれば、白と黒の1つずつです。
また、店内で燻製しているという 燻製枝豆(550円) も人気。ほろ酔いセットにプラス100円で、塩茹で枝豆を燻製枝豆に変更することも可能です。
その他、この日、筆者が頼んだものをご紹介するのでご参考まで。
キーマカレー春巻き2本(650円)、自家製厚あげ(550円)、ホノルルビアナッツ(550円)、そして燻製チーズは盛り合わせのものだと思うのですがサービスで出してくれました。
さて。
飲んだビアグラスは、できるだけ自分で洗いましょう♪
タップの前にあるカウンターまで空になったグラスを持っていき、洗浄器に逆さまに置いてプッシュするだけ。使い方は右下に書いてあります。その空になったグラスに、またスタッフさんが新しいビールを注いでくれます。洗い物が少なく、水という資源の節約にもなるこの洗浄器、いいですね!