「楽しいのは最初だけ」
既婚者がつぶやく、お決まりのひとこと。そんなはずはない、私達は大丈夫だと、エリコは信じてきました。夫の真意を耳にしてしまうまでは。
『人生最大の失敗』(KADOKAWA)は、結婚生活の呪縛から逃れ、自由を手にする女性の物語です。既婚者も独身者も、本作の主人公エリコの思いに共感し、時に悲しくなり、もどかしくなることでしょう。
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本作は、『消えたママ友』(KADOKAWA)『妻が口をきいてくれません』(集英社)2作により、第25回手塚治虫文化賞「短編賞」を受賞した、野原広子さんの最新作。ごく普通の人々を描いたシンプルな漫画ですが、読んでいると心が揺さぶられ、背筋が寒くなります。慌ただしい日常にもまれて、エリコの不満が澱(おり)のようにたまっていくのが実感できるからです。そのじわりとした恐怖は、読者にとっても他人事ではありません。そんな本書から第一章「楽しいのは今だけなの?」を出張掲載します。