・VOD(動画配信サービス)の好調により、グローバルで成果を出し続けている韓国ドラマ。
・しかし、韓国国内では、韓国ドラマ“バブル”を警戒する声が登場。
・韓国のドラマ制作会社からは「負のスパイラル」を嘆く声も・・その現実とは。


2023年上半期、大きな話題となった韓国ドラマ『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』

異見を恐れずに言うと、近年世界で、アメリカに次ぐ“コンテンツパワー”を誇示している国は韓国だろう。

世界有数のVOD(動画配信サービス)のランキングでは、数作の韓国ドラマが常にランクインする光景は、もう珍しくない。

K-POP人気との相乗効果も抜群で、演技経験が長くないアイドルが出演するドラマは、SNSを中心に拡散し、世界中の話題をさらう。

その“狂風”は、ここ日本も例外ではない。

こちらも、異見を恐れずに言うと、かつて日本で海外スターの代表格とも称された、ハリウッドスターたちを上回る人気を誇っていると言っても過言ではない。

しかし韓国国内では、韓国ドラマ“バブル”を警戒する声が、持ち上がっている様子だ。

去る5月12日、韓国メディア・日刊スポーツは「危機のKコンテンツ – 編成が決まっていないドラマが80本・・」という見出しで、韓国ドラマ界が抱える現状を紹介した。

同記事では、韓国ドラマだけではなく、韓国映画やK-POPの人気低下も取り上げられているが、最も問題視しているのは、やはり韓国ドラマの“漂流状態”。

なんと80本に上るドラマが、編成枠が決まっておらず、お蔵入りの危機に置かれているというのだ。

このような状況を招いたのは、韓国ドラマを取り囲む環境の変化が原因のよう。コロナ禍以降、Netflix(ネットフリックス)などグローバルVOD企業の登場により、ドラマの制作費が一気に高騰。

さらに、各テレビ局が視聴率が取れないなどの理由で、放送枠を減らしているため、高い製作費が投じられた作品が視聴者に披露される機会を失っている。

韓国ドラマの“救世主”と位置付けられたVOD各社も、未公開ドラマが大量に余ると、わざわざ高値で買付はしない。制作会社としては、無理をしてでも安値で販売に踏み切るしかないのだ。

現在韓国ドラマの制作費は、年々2~3倍ずつ増えていると日刊スポーツは嘆いている。

とある制作会社の代表は「VODが登場した時から、韓国ドラマの市場が崩壊するかもしれないという雰囲気があった。その憂慮が、思ったより早く実現した気がする」とし「大量のドラマが一気に制作されるのが問題。主演俳優の獲得競争により、制作費は急騰し、スターではない俳優が主演を務めると、クオリティと話題性の確保が難しくなる・・まさに負のスパイラル」と吐露。

また、“韓国産”とはいえ、作品を購入・投資するグローバルVODがIPを所有する構造になっている。そのため、作品が大ヒットしても、韓国の制作会社は、出版やグッズ販売などの付加価値に関与することはできない。

制作会社からは、今後4年間、韓国ドラマに25億ドルを投資するというNetflixの決定に対し「まるで“毒の入った聖杯”」「Netflixの下請けから抜け出せない」と警告している。

しかし、し烈なクォリティー競争を繰り広げている制作会社としては、資金力に限界があるため、Netflixが差し伸べる“毒の入った聖杯”を飲まざるを得ないという。

このまま、編成・放送枠が決まらない韓国ドラマが増えていくと、制作会社の相次ぐ倒産も十分あり得る。

そうなると、今の栄光はバブルのように消えてしまうだろう。