Profile

1981年生まれ。2000年『仮面ライダークウガ』の敵首領役で俳優デビュー。2006年、初主演ミュージカル『アルジャーノンに花束を』では難役に挑み、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の演技とともに第31回菊田一夫演劇賞を、 また、再演でも『星ノ数ホド』の演技とともに第22回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞している。ミュージカルだけでなく、ストレートプレイや映像作品、アーティスト活動と幅広いジャンルにて活躍中

人を思う気持ちが 人生を豊かにする

ミュージカル俳優として活躍中の浦井健治さんのサードアルバム『VARIOUS』が3月にリリースされた。今回のアルバムはミュージカル曲をはじめ、Jポップの名曲のカバーや浦井さんと親交のあるアーティスト提供によるオリジナル曲など、タイトル通り“VARIOUS=様々な”魅力に溢れた1枚となっている。まずカバー曲について伺うと浦井さんは「怖かったですね」と話し始めてくれた。

「カバー曲は誰もが知る名曲なので、自分もそうですけど、どうしてもその素晴らしい歌声、歌い方も含め、とても印象が強く残っていますよね。最初はそれを僕が壊してしまわないか不安でした。でもその世界観を大切にしながら、自分なりに伝えたいことを歌詞に乗せて表現する作業はとても贅沢で素敵な経験でした」

SOPHIA の松岡充さんによるオリジナル曲「バナナココナッツセット」は MVに松岡さんが出演していることも話題に。

「信じられなかったです。僕は学生時代にずっとSOPHIAのコピーバンドをしてたんです。その憧れの方に曲を作っていただけただけでなく、マンツーマンでディレクションまでしてもらって。さらにMVにまで出演してくださるなんて本当に夢のよう。夢って叶うんですね」

そう興奮気味に語ってくれた浦井さん。さらにご自身が作詞で参加し、植村花菜さんが作曲を手がけた「キャッチ ボール」について伺うと「親孝行できたかな」と意味深なお答えが。

「もともと父に向けた曲ができればと漠然と思っていたのですが、この曲を作る時、植村さんが“伝えたいイメージやストーリーを作文にしてくれたら、私が曲にするから”とおっしゃってくれて。それで歌詞には父が残してくれた言葉を入れました。母に捧げる曲として父の存在を曲で残せたのが嬉しかったです。母も喜んでくれましたし、少しは親孝行できたのかな。天国の父は、こっぱずかしいからやめろよって言っているかもしれませんが(笑)」

そんなたくさんの思いが込められた1枚『VARIOUS』を従えたライブツアーも決定。5月、6月に東京と大阪で開催される。さらに、4月27日からはミュージカル『アルジャーノンに花束を』の上演も控えている。2006年の日本初演時にチャーリイ・ゴードン役を演じ、多くの演劇賞に輝いて以来、14年の再演を経て9年ぶりの再々演となる。

「最初に演じたのはもう17年前。本当に時間が経つのは早いですね。僕にとってアルジャーノンは初主演作で、演出家と作曲家の方たちと肩を並べて作っていった大切な作品。あのときみんなで作っていった先に見えた景色は今でも僕の財産です。今でも音を聞くだけで当時の景色や感情が甦ります。今回はスタッフもキャストも変わりますが、そのときの気持ちを忘れず、さらに僕がこれまでに経験してきたこともプラスして、新たな作品を作っていきたいと思っています」

名作『アルジャーノンに花束を』が“今”再々演されることにとても意味があると思うと話す。

「チャーリイを演じるたび、人間が生きていく上で“愛情”がどれだけ大切なことかを痛感させられます。それが今、コロナ禍を経験した僕たちにとってより深く響くのではと思っています。人を思う気持ちこそが人生を豊かにするんだという気持ちを再確認してもらえたら嬉しいです」