亡くなった夫エリックと、殺人罪に問われている妻コウリ・リーチンズ
夫の死への悲しみをつづった本を出版した女性が、夫を殺害したとして殺人罪で起訴された。
アメリカ・ユタ州に住むコウリ・リーチンズ(33)は、昨年3月、夫のエリック(39)がベッドで亡くなっているのを発見。夫を失った悲しみを乗り越えるため、「愛する人を失うというつらい経験を子どもたちに優しく導く」をテーマにした児童書籍「Are You with Me?」を今年3月6日に出版した。
同書籍を出版した際、コウリ・リーチンズは、「私は昨年、夫を突ぜん亡くしましたが、私たちにはすばらしい3人の幼い息子たちがいます!子供たちのために、夜な夜ななぐさめになるような本を探そうとしていたのですが、何も見つかりませんでした。だから、自分で執筆したのです」「幼い子供を持つ人や、親や愛する人を亡くした人を知っている人がいたら、この本が少しでもなぐさめと安らぎを与えてくれることを願っています」と、執筆に至った経緯を明かしていた。
突ぜんの不幸に見舞われたコウリに多くの人が同情していたが、夫エリックの死去から約1年以上たった米時間5月8日、コウリが夫を殺害したとして、加重殺人と規制薬物の流通目的所持の罪で起訴された。
裁判を扱うニュースサイト「Law&Crime」が入手した法的文書によると、2022年3月4日午前3時22分、警察は意識不明の男性に関する通報を受け、リーチンズ夫妻の住宅に駆けつけた。救急隊員がエリックの蘇生を試みたが、その場で死亡が確認されたという。
警察の取り調べの中で妻コウリは、新居の成約をお祝いするため、夫にモスコミュールのカクテルを作り、それをベッドで飲んだと主張。その後、息子の1人が「夜驚症(やきょうしょう)(※)」になったため、コウリは息子と一緒に寝たが、午前3時頃に夫と一緒に寝ていた寝室に戻ると、彼が「冷たくなっている」のを見つけ、救急隊に連絡したという。
※睡眠中、突然おびえたように叫び声や悲鳴、泣き声を上げ、目を見開いたり、起き上がったり、パニックをおこしてしまうこと
しかし、捜査が進むにつれて、不審な事実が浮かびあがってきた。
コウリは息子と寝るときに携帯電話を夫との寝室に置いてきたと供述したが、その間にロックと解除を何度も繰り返していたことが判明。
また、その間に携帯でメッセージを送受信したとされているが、それらは削除されている。その後の検視で、夫エリックの死因は「フェンタニル(鎮痛剤として使用される非常に強力な合成オピオイド)の過剰摂取」であることが確認された。検視官によると、彼の体内のレベルは「致死量の5倍」になっていたという。
このため、夫妻の自宅のパソコンや携帯電話などの捜査令状が出された。警察がコウリの携帯電話を調べたところ、麻薬所持の経歴を持つ「知人」との間で、「腰を痛めた投資家のために処方された鎮痛剤を入手したい」というメッセージのやりとりを発見。さらに、その知人が売人からコウリのために「ヒドロコドン(麻薬性鎮痛薬)」を調達。さらにその2週間後「マイケル・ジャクソンのものをいくつか」とメッセージを送り、フェンタニルを要求したという。コウリは夫エリックが亡くなる約1ヶ月前の2022年2月11日、15~30錠を手に入れるため900ドル(約12万円)支払ったとされている。
コウリは殺害を実行する前から夫エリックの食事に麻薬を入れていたようで、2022年2月14日のバレンタインデーの日、エリックはコウリと食事をした後、具合が悪くなったエリックは友人に対し「妻が自分を毒殺しようとしていると思う」と話したという。
コウリの目的はエリックの保険金ではないかと考えられている。
昨年1月、エリックの生命保険の受取人の件で2人は揉め、エリックは死の直前、「コウリが金のために自分を殺すかもしれない」と考え、遺言書の受取人を妹にしたとされている。また、彼は離婚を申請するつもりだったと伝えられている。彼の死亡後、自分が遺言から外されていることを初めて知ったコウリは、後に遺産の管理権を求めて訴訟を起こしていた。
夫殺害容疑に問われているコウリは、次回5月19日に勾留審問のため裁判所に出廷する予定だ。