◆子どもを叩くことをスルーしない

――カウンセリングを受けるきっかけとしてノダDさんがお子さんに手を上げる問題がありました。本に描かれている以外にも叩いてしまったことが何回かあったのでしょうか?

水谷:叩いたのは私が見た2回だけです。子どもに「お母さんが見てないときに叩かれたことあった?」と聞いたけど「ない」と言っていました。でも2回でも子どもを叩くのはカウンセリングを受ける理由として十分だと思います。

体罰はもちろんダメですが、側から見ていて理解できなくもないパターンもあると思います。子どもが親をすごく軽んじる態度をとったとかとか、命に関わるような危険なことをしたなどの理由があれば、「叩くのは絶対だめだけど、感情的になるのも仕方ないね」と思うかもしれません。

でも夫の場合は、2回とも「どうしてそこで手が出るの?」と理解できなかったし、夫自身が「なぜ叩いてしまったのか」理解できていませんでした。1回目のときに「絶対にやめてね」と話したのにも関わらず、コントロールできずにまた叩いてしまったので即カウンセリングを受けることにしました。夫に注意するだけでまた許してしまうと「謝れば許してもらえる」という経験値になってしまい、絶対に直らないと思ったんです。

――しつけと称して子どもを叩くことを黙認してしまうケースも多いと思うのですが、水谷さんはすぐにカウンセリングを受けるという選択をしたんですね。

水谷:人に対して怒ったり叩いたりという行動は目に見えるけど、そこに至るまでの心の動きは目に見えません。でも私は行動にはそこに至る心の動きがあると思っているんです。

2回間違った行動をしたのなら、きっとそこに至るまでの思考のルートが間違っているはず。そこを直してきちんとした道筋を通ればまともなコミュニケーションができると信じているんです。でも私達だけで話し合いをしていても、彼の思考のルートのどこが間違っているかわからなかった。なので、これはプロの手を借りるしかないなと思ってカウンセリングを受けることにしたのです。

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。