いよいよ最終節だ。『NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23』レギュラーシーズンは今週末第16節を戦い、5月13日(土)より『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメントに突入する。ディビジョン1では開幕戦と同一カードがラインナップ。4か月の時間を経て、再び相まみえる。

第16節の中で注目を集めるのが、4月22日(土)・江戸川区陸上競技場改めスピアーズえどりくフィールドでキックオフを迎える一戦である。2位クボタスピアーズ船橋・東京ベイ×3位東京サンゴリアス。他会場の結果次第だが、S東京ベイは逆転1位の可能性を残し、また両軍は3週間後に再び顔を合わせる可能性も十分ある。負けられない理由はお互いにある。えどりく16連勝中のS東京ベイは不敗神話を伸ばしたいし、開幕戦で黒星を喫した東京SGはここで借りを返しておきたいところ。何より勝利で締め括り、プレーオフに臨みたいはずだ。

根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) (C)JRLO

12月18日・味の素スタジアムでの『NTTリーグワン2022-23』開幕戦はS東京ベイの必然の勝利となった。S東京ベイは出足の鋭いFW陣がブレイクダウンで優位に立ち東京SGの反則を誘うと、PGを選択。5分のショットを外すも7・11分とオーストラリア代表75キャップの名手バーナード・フォーリーが3点を加点していく。21分には敵陣深くでのパスワークから最後はFBゲラード・ファンデンヒーファーがカットパスをWTB根塚洸雅へつなぐと、昨季新人王のトライゲッターはWTBテビタ・リーのタックルを受けながらもインゴールにボールを叩き付けた。その後東京SGはSO田村煕が2本、S東京ベイは1本PGを決めて14-6で前半を終えた。

尾崎晟也(東京サンゴリアス) (C)JRLO

後半はギアが一段上がった。43分NO8ファウルア・マキシが守備網を突破し、左へ展開。すると左WTBのルーキー木田晴斗がトライをマーク。すると5分後東京SGはFB松島幸太朗のラインブレイクからNO8テビタ・タタフが抜け出して独走トライ。59分にS東京ベイがPGで追加点を挙げると、64分にファンデンヒーファーがハイパントから猛チャージでボールを確保。ボールを受けたフォーリーが左サイドの大きく空いたスペースへキックパス一閃。ボールをキャッチした木田がインゴールにボールを置いて勝負あり。76分にWTB尾崎晟也が意地のトライを返すも31-18でノーサイドを迎えた。

マルコム・マークス(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) (C)スエイシナオヨシ

18季ぶりに東京SGから勝利を奪ったS東京ベイは感情を爆発させると思いきや、淡々と勝利を振り返っていた。日本代表56キャップのCTB立川理道主将が「開幕戦の相手がサンゴリアスだから特別な用意をしたのではなく、この22週間で積み重ねたことを出そうと言い続けてこの試合に臨んだ。僕自身、入団してからサントリーに勝利したのは初めて。そういう意味ではうれしいが、この後15週あるし、最終節でも戦うので、浮かれずにこの後しっかり戦っていきたい」と言えば、南アフリカ代表59キャップのHOマルコム・マークスも「とてもタフな試合だった。サントリーとの試合はいつもタフになる。いいところもたくさんあったが、改善しないといけない点もあった。試合を振り返って、どこに改善が必要か、そういう細かい部分にもしっかりと取り組んでいきたい」と冷静に足元を見た。

齋藤直人(東京サンゴリアス) (C)JRLO

一方の東京SGにも落ち込んだ様子はない。初陣を勝利で飾れなかった田中澄憲監督が「クボタの非常にいいプレッシャーを受け、自分たちのラグビーができなかった。完敗と言っていいと思う。ただゲームは続く。これからどう戦うか。全員が『同じ絵を見ているか』という点に課題もある。アタックのシステム、キックカウンターの部分で今日は曖昧なところがあった。確認してきたが、全員にしっかり落とし込めていたかは課題」と敗因を語れば、齋藤直人共同主将も「望んだ結果ではないが、シーズンはまだ始まったばかり。しっかりと次の試合に意識を向け、この敗戦から学んで来週の試合を迎えたい。全員が同じ絵を見てプレーできていたのかを突き詰めたい。自分たちからアタックしたいが、ブレイクダウンの攻防でいいボールが出なければアタックが始まらないという認識をチーム全体で改めて共有したい」も同意した。

あれから4か月、S東京ベイはリーグ最多得点の597得点を叩き出し、13勝1分1敗・勝点61の2位につけ、東京SGは苦しみながらも12勝3敗・勝点55の3位に位置している。3週間後にスタートする『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメントを前に両軍の差はさらに開いたのか、縮まったのか。S東京ベイは4月20日にメディア対応を実施。指揮官と今季限りで退団が決まっているCTBライアン・クロッティが最終節に向けて抱負を語った。

フラン・ルディケHC(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) (C) クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

フラン・ルディケHC「NEC(グリーンロケッツ東葛)戦の学びをサントリー戦でどうチャンスにつなげられるか楽しみにしている。最後のリーグ戦、今後ノックアウトステージをどう戦うかにつながる試合なので、自分も非常にエキサイティングな気持ち。セレクションも一貫性を持って選んだ。唯一の変化はクロッティがケガから帰って来たこと。プレーオフに向けて、彼が色々ポジティブな意味でチームを変えてくれることを楽しみにしている」

クロッティ「エキサイティングな気持ち。いいパフォーマンスができるようにいい準備をしてきた。プレーオフに勢いが付けられるようなゲームをしたいと思っているが、まずは次の試合。私自身ゲームに戻って来られてうれしく思うし、最後にえどりくに帰って来られてうれしい。オレンジアーミーの前でプレーできることを選手全員が待ち切れなく思っている」

ルディケHCは2位という結果は選手たちのパフォーマンスを反映した結果だと言う。
「シーズンが始まってからだけではなく、プレシーズンを通してどうすれば、素晴らしいパフォーマンスを発揮できるかプランを持って進めてきた。ターニングポイントとなった試合は(第6節)リコー(ブラックラムズ東京)戦。最後のPGが外れて勝てたことが大きい。あと選手たちはコンスタントにいいパフォーマンスを見せてくれた。プレーオフに出場できるのは妥当な結果だと思う」

開幕戦の再戦となることを問われると、ルディケHCはこう答えた。
「両チームともかなりレベルが上がっていると思う。サントリーも我々も素晴らしいラグビーをしていると思うので、今週末いいチーム同士の対決になる。楽しみにしている」

3週間後に同じカードになる可能性を質問されると。
「まずは1レースごと集中していきたい。準決勝のことはまだまだ先。いろんなことが起こり得る。目の前の試合でどうするか、目の前のプレーをどうするか。相手チームがどうこうではなく、自分たちがベーシックなことをどれだけやれるかにかかっている。どんなメンタルでどんな準備をしてどけだけいい戦いを見せられるかを楽しみにしている」

ルディケHCはクロッティの働きに評価していた。
「クロッティはスペシャルな選手でスペシャルな人間。彼はチームのディフェンスシステムを変えてくれたし、チーム文化の醸成やアタックのシェイプもサポートしてくれた。何かひとつを挙げるのは難しいほど、チームのためにオールラウンドに貢献してくれた。彼はいつでも選手たちの相談に乗ってくれるし、経験値が高いので答えも持っている。非常にオープンな性格なのでオフフィールドでも日本人選手たちとも仲がいい。
(クロッティが来てチームが変わった点は)一番大きいことでは状況判断。本人もそうだし、ほかの選手に判断させるところが一番変わった」

S東京ベイでの残り時間が少なくなったクロッティは特別な感情を抱いていた。
「スペシャルな感情がある。チームを去る者にとって残りの時間をどれだけエンジョイできるか。クボタはスペシャルなチーム、素晴らしい仲間がいる。個人としては元気を出して、残り時間をエンジョイしたい」

ニュージーランド代表48キャップを誇るクロッティはS東京ベイの成長に関われたことは誇りに思っていた。
「ラッキーなタイミングでチームの一員になれたと思う。2019年に加入した時にはスピアーズにはすでに土台があった、フランや以前いた外国人選手たちがチームの土台を作り、バーナードや田邉(淳アシスタント)コーチとともに国際レベルのアタックのエッセンス、ディフェンスのエッセンスを加えていった。このチームにはいいチーム文化があり友情があり、いいつながりがある。ラグビー面とチーム文化の両方で成長があったと思う。小さいことをひとつひとつ変えてきた。チーム全体でリーダーシップであったり、どう学びたいか共有できた。お互いがアイデアを出し合って、みんなで学ぶ意欲を持ち、ハードワークでより良くなる意識を持ち続けてチームの成長につなげることができたと思う。強いチームに関わり、ギフトをもらっているし、自分の経験をチームに還元していることも誇りに思う」

18トライの尾崎晟と15トライの木田のトライ王争いについて、クロッティは理想とする展開を口にした。
「WTBのトライが多いのはFWや他の選手がいい仕事をしている証明。サントリーもいいチームだが、自分たちもいいチーム。理想は木田がハットトリックをマークして、尾崎がノートライでふたりがトライ王になること。木田がハットトリックをすれば、我々もいい仕事をしていることになる」

ライアン・クロッティ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) (C) クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

両チームの試合登録メンバーは以下の通り。
【S東京ベイ】
1海士広大、2マルコム・マークス、3北川賢吾、4ヘル ウヴェ、5デーヴィッド・ブルブリング、6トゥパ フィナウ、7末永健雄、8ファウルア・マキシ、9藤原忍、10バーナード・フォーリー、11木田晴斗、12立川理道、13ライアン・クロッティ、14根塚洸雅、15ゲラード・ファンデンヒーファー、16杉本博昭、17紙森陽太、18オペティ・ヘル、19ルアン・ボタ、20青木祐樹、21谷口和洋、22テアウパ シオネ、23ハラトア・ヴァイレア

【東京SG】
1森川由起乙、2堀越康介、3垣永真之介、4ツイ ヘンドリック、5ハリー・ホッキングス、6トム・サンダース、7山本凱、8テビタ・タタフ、9齋藤直人、10田村煕、11尾崎泰雅、12中村亮土、13中野将伍、14尾崎晟也、15松島幸太朗、16中村駿太、17石原慎太郎、18祝原涼介、19トム・サベッジ、20箸本龍雅、21大越元気、22イザヤ・プニヴァイ、23河瀬諒介

果たして、S東京ベイが17連勝で「えどりく不敗神話」を継続するのか、東京SGが開幕戦の借りを最終節で返すのか。『NTTリーグワン2022-23』第16節・S東京ベイ×東京SGは4月22日(土)・スピアーズえどりくフィールドにてキックオフ。チケットは残り車いすエリアのみ。試合の模様はBS日テレにて生中継。