2023年3月17日、下北沢Flowers Loftにてリフの惑星の自主企画イベント『Hello, my friend vol.2』が開催された。東京都内を中心に活動するギターロックバンド・リフの惑星が、昨年12月〝音楽と笑いの響宴〟と銘打って開催したライブイベントの第2弾。今回もリフの惑星にとって「自分たちが好きで、これから友達になりたいと本気で思える人たち」が、音楽とお笑いというジャンルの壁を越えて集結した。

まずトップバッターとしてステージに立ったのは、Jam Fuzz Kid。昨年7月には2nd EP『DANCING IN SWEET ADVERSITY』を全国流通盤CDと配信で同時リリースし、東名阪福を回るリリースツアーも行なうなど、精力的に活動している5人組ロックンロールバンドだ。

「全力でぶち上がっていこうぜ!」

ボーカル・今村力の声を合図に人気曲「Sunshine Highway」でライブがスタート。「自分らのライブ、ルールとかないんで。自由に体動かして楽しんでいってもらえたら」と話すとおり、今村自身が率先して体を揺らし、ときにはステージのギリギリまで観客のほうへ身を乗り出して、終始フロアの観客を巻き込みながら会場全体を盛り上げた。2nd EPのリード曲「KABUKI」は元々荒々しくも力強いギターリフが印象的な曲だが、この日は特にメンバーの演奏にも気合いが入っていたのではないだろうか。

5月14日(日) 下北沢SHELTERにて開催する自主企画イベントについてや、新しいグッズの紹介など、大切な告知も忘れず、最後までフロアの観客の存在を意識して声をかける姿、全員で楽しもうとする姿勢が、とても印象的だった。

続いてはお笑いのステージ。今回の出演者には、昨年M-1グランプリで準決勝まで勝ち進んだ注目のお笑いコンビ3組が名を連ねている。幕間には主催者であるリフの惑星のボーカル・緒方良から、それぞれの出演者との関係や、出演に至る経緯などが直接語られた。

リフの惑星 緒方良(Vo.)

緒方の紹介で、まず登場したのは「大学の同級生」だという漫才コンビ、ストレッチャーズ。昨年『ツギクル芸人グランプリ』で優勝し、すでにさまざまなメディアで注目を集め始めている漫才コンビだ。王道のしゃべくり漫才を得意とするふたりは、まずはお笑いのイベントでは珍しいオールスタンティングであることや、リフの惑星についてトークを展開し、お笑いのステージに馴染みがないライブハウスの観客を和ませた。その後も「日本一のロックミュージシャンだったら」や「芸で飯を食っていきたい」など、〝音楽と笑いの響宴〟というこの日のために選ばれたであろうネタが披露され、最初は少し固い雰囲気だったフロアも、最後は大きな笑い声と拍手で包まれた。

三番手には、Panorama Panama Townが登場。3月1日に約1年3カ月ぶりとなる新曲をリリースし、4月には新宿最大級のサーキット型音楽フェス『CONNECT歌舞伎町2023 Move to New Order』への出演も決まっている人気オルタナティヴロックバンドだ。

「やっと出られた」「リフの惑星には俺らだろ」と、ボーカル&ギター・岩渕想太の言葉ではもちろん、立て続けに演奏されるギターリフが印象的なライブナンバーからも、彼らもこの日のイベントを楽しみにしていたことがよくわかる。

MCでは、お笑い芸人との共演だからこその楽屋での裏話も。

「芸人さんと同じ楽屋にいるのがレアやなと思って、普段あんまり言わないんですけど、〝最後、曲早く終わったらプラスでやろうな〟みたいな。カッコつけるために言いました(笑)」

「いつもより入念にギター鳴らしたりね(笑)」

昨今のお笑いブームに負けじと、バンドもかっこいい、バンドを推すのも楽しいんだと、共演者にも観客にも伝えたかったようだが、きっと伝わっただろう。イベントタイトルと同じ〝Hello My Friend〟のフレーズから始まる最新曲「Bad Night」では、フロアの観客もリズムに合わせて体を揺らし楽しんだ。

再びお笑いのステージ。

まず先に登場したヤーレンズは、はじめから誰よりもハイテンションだった。自己紹介も交えた雑談では、ボケ担当・楢原の奇怪なコメントを、ツッコミ担当・出井がどんどん往なしていく。このトークのテンポ感は、喋りが本職のお笑い芸人ならではだろう。持ちネタのコント漫才『旅館』でも、ハイスピードで繰り出されるボケとツッコミの応酬に観客の笑いが止まることなく続いた。

その後のシンクロニシティは、波を打ったように静かな登場となった。元気にハキハキと挨拶をするツッコミ担当・西野に対して、ボソボソと小さな早口で自己紹介をするボケ担当・よしおか。コンビ揃ってサラリーマンとの兼業で、フリーで活動する芸人という異色の男女ふたり組だ。とくに雑談はなく、西野のフリによしおかが答え、さっそくネタに入る。よしおかが「私、英語ペラペラです」と言いつつ、西野が英語で質問すると「No」か短い単語しか返さず会話が続かない……ということから始まる『英会話』というネタだ。合間に観客の笑い声が控えめなのは、よしおかの発言を聞き逃さないためで、フロア全体がふたりの会話に聞き入っているのだと感じた。前の出演者たちと違い、あくまで〝いつもどおり〟にネタをこなすところもシンクロニシティの味だろう。一切笑顔を見せずキャラに徹するよしおかに反して、きれいについたオチに観客からは大きな笑い声と拍手が起こった。

そして、満を辞して真打ち、リフの惑星の登場だ。

昨年配信リリースした人気曲「RATATAT」のイントロにのせて「ロックンロールしに来ました、俺たちがリフの惑星です!」とご挨拶。待ちわびた観客から拍手が巻き起こった。MCに入るたび、ボーカル・緒方の口からは何度も「楽しい」と堪えきれずこぼれるように本音が。真偽のほどはわからないが、チケットが数枚しか売れていないとスタッフから聞かされていたらしく、「今日ここに来るのがマジで怖かった」「皆さんの姿を見てどれだけ安心したか」と、フロアを埋める大勢の観客へ、何度も感謝の言葉が伝えられた。

リフの惑星 緒方良(Vo.)

この日は「spangle」などのライブナンバーに加え、2年ぶりとなる新曲も披露された。鋭く突き刺すようなギターリフと、気迫のこもったベース・ドラムの重低音、そして魂のこもった力強い歌声。「好きな音楽を隠さずそのままやっていこうというのが最近のコンセプト」という緒方の言葉どおり、リフの惑星らしい、メンバーそれぞれの情熱が込められた楽曲で、早くもリリースが待ち遠しい。5月7日(日)には渋谷チェルシーホテルにて自主企画イベントを開催するという告知もあり、今後の活動もますます楽しみだ。最後は昨年配信リリースした「MUSIC」で、緒方の声に合わせて観客が拳をあげ、会場は熱く盛り上がった。

リフの惑星 小林亮平(Ba.)

リフの惑星 大月優(Gt.)

鳴り止まない拍手と手拍子の中、早々とアンコールに応え登場したメンバー。「早くやって早くみんなとお酒が飲みたい!」「今日は本当にいい日だった」と話す緒方に、観客からはあたたかな拍手と歓声が送られた。大切にしている曲をと演奏されたのは、昨年12月にリリースし、AIアートを用いたMVが話題を呼んだ「BOY」。演奏するメンバーの表情はこの日の達成感が伝わるように晴れやかで、ライブホール全体があたたかな雰囲気に包まれた。

リフの惑星 松丸怜吾(Ds.)

「Hello, my friend」──元々リフの惑星の自主企画のタイトルが松任谷由実の楽曲から用いられていたことからついたタイトルだというが、こんなにも相応しい名前は他にないだろう。前回同様、音楽とお笑いというジャンルの枠を越えて出会った6組のアーティストたちが、活躍の場は違えど、今後も日本のエンターテインメントを盛り上げてくれることを期待したい。

Text:たまきあや Photo:みらくる

<公演情報>
リフの惑星 自主企画イベント『Hello, my friend vol.2』

3月17日(金) 下北沢Flowers Loft
出演:Jam Fuzz Kid/Panorama Panama Town/リフの惑星/ストレッチーズ/ヤーレンズ/シンクロニシティ