各地で花火大会の中止や延期の発表が続いた矢先の2020年6月1日、突然の打ち上げ花火が日本各地の夜空を彩りました。コロナ禍による閉塞感が漂うなか、美しい花火を目にして感動した人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、「サプライズ花火」を行うことになった背景や2020年夏の花火事情について解説します。

2020年は花火大会のない夏を迎える日本

2020年夏は、新型コロナウイルスの影響でお祭りや大規模イベントの開催延期や中止が相次いでいます。花火大会も例外ではありません。日本三大花火大会や東京の代表的な花火大会の2020年度開催は以下のようになっています。

日本三大花火大会

花火大会名 場所 2020年度の開催
全国花火競技大会
(大曲の花火)
秋田県大仙市 2020年度開催中止
(2021年8月28日に延期)
長岡まつり大花火大会 新潟県長岡市 2020年度開催中止
土浦全国花火競技大会 茨城県土浦市 2020年7月下旬ごろに開催するかを決定

東京の代表的な花火大会

花火大会名 場所 2020年度の開催
隅田川花火大会 東京都墨田区 2020年度開催中止
江戸川区花火大会 東京都江戸川区 2020年10月24日に延期
足立の花火 東京都足立区 2020年開催中止

 

花火の打ち上げ場所周辺はどうしても多くの人でにぎわってしまうため、密集や密接が避けられない状態です。これ以上コロナ感染を広げないためにも、2020年度の花火大会の中止や延期はやむを得ないでしょう。

各地で行われるサプライズ花火

お祭りや花火大会の中止で大打撃を受けているのが花火業界です。本来であれば夏に向けて花火製造の最盛期を迎えるはずが、2020年は5月の連休明けから休業状態の業者も少なくありません。

苦境に立たされている花火業界ですが、それでも花火を打ち上げて皆を元気づけたいとさまざまなプロジェクトが立ち上がりました。ここでは2つのプロジェクトを紹介します。

1.Cheer up!花火プロジェクト
2.日本の花火「エール」プロジェクト

1.Cheer up!花火プロジェクト

2020年6月1日午後8時ごろ、全国各地で一斉に花火が打ち上がりました。ご覧になられた人も多いのではないでしょうか。

このイベントは花火業者が発起人となり、多くの賛同者を集め実施されました。イベントを実施するにあたり立ち上がったのが「Cheer up!花火プロジェクト」です。

花火業界は大変な状況にもかかわらず、日本各地で一斉に花火を打ち上げ多くの人たちに希望と元気を届けようと、163もの事業者が自費でプロジェクトに参加したのです。ちなみに「Cheer up!」とは和訳すると「元気をだして!」。

見物人が集まるのを避けるために花火打ち上げの場所はすべて非公開とし、日時だけを発表して準備を進めていきました。そして2020年6月1日、午後8時ごろ全国各地で一斉に花火が舞い上がりました。

この模様は全国のメディアでも取り上げられ、SNSでも話題に。「実際に花火を間近で見た」という人もいるのではないでしょうか。

花火にはもともと「邪気を払う」という意味があります。日本最古の花火大会と言われる「隅田川花火大会」のきっかけとなったのは、享保17年(1732年)に起きた「享保の大飢饉」(きょうほうのだいききん)です。

このとき飢饉と同時にコレラも流行したとあり、多くの犠牲者を出しました。そして翌年の享保18年、亡くなった方々の慰霊と疫病退散の願いを込めて花火を打ち上げたことが、隅田川花火大会の始まりと言われているのです。

新型コロナウイルスという疫病が流行している2020年に、花火師たちはこの伝統にならってコロナ終息の願いを込め、私たちに大輪の花火を見せてくれたのです。

2.日本の花火「エール」プロジェクト

「大曲の花火」が開催される秋田県大仙市では、「Cheer up!花火プロジェクト」が実施された2020年6月1日に新たなプロジェクトが発足しました。その名も「日本の花火『エール』プロジェクト」。

花火業者の倉庫で眠っている花火玉を少しでも打ち上げようと、大曲花火倶楽部や日本花火鑑賞士会などが中心となってクラウドファンディングで支援金を募集しました。

このプロジェクトに参加しているのは、過去に大曲の花火に貢献かつ花火競技会に出場したことのある29都道府県81の事業者です(2020年6月1日現在)。

クラウドファンディングで集まった資金は、この81事業者が全国で打ち上げる「エール花火」の開催費用となります。花火業者が皆を元気づけ、皆が花火業者を元気づけるというその名の通り「エールの交換」が目的です。

プロジェクト主催者の発表によると、「イイハナビ」のごろ合わせで定めた目標額の1,187万3,000円は、2020年7月15日時点で772人が1,616万円を支援し136%達成しており、「エール花火」の打ち上げが決まっています。開催日時、場所は非公開の完全サプライズ花火、2020年8月のXデーが楽しみですね。