浴場が夜と朝とで男女が入れ替わる旅館やホテルがあります。

露天風呂の景色が変わることもあり、ありがたい。

もちろん、入口に「男風呂」、「女風呂」と書かれているのですが、

思い込みで間違えそうになることがありませんか?

私は何度もあるんですよね。

逆のパターンもあります。

先日、山口県は萩市で露天風呂を満喫していました。

贅沢なスペースに大きな浴槽が1つだけ置かれているのです。

風呂スペースも洗い場も脱衣所もガラス張りでしきられ、全てが丸見え。

誰もいないので貸切り風呂のようにも思えてきます。

幸福感に浸り、日本海を眺めていました。

しばらくすると、女性2人の声が聞こえてきます。

60代、いや、70代、「おばさま」というより、「おばちゃん」と言った方がいい声でしょうか。

いや、そんなことを言っている場合ではありません。

このまま入ってくるのではと。

待てよ、こっちが男風呂でよかったよなぁと。

確認したよなぁ、確かにしたはずと自分に言い聞かせます。

しかし、相手は2人。

このまま入ってこられたら、私の方が分は悪い。

えっ?おかしいだろ?私は間違っていないんだから堂々としていればいいではないか。

「あら失礼、間違えちゃったわ」

なんて言われたりしても対応に困ります。

この妄想を、ほんの1秒足らずの間にして、咄嗟に風呂から上がり、野太い声を意識してせき払いしました。

「今朝は男性風呂ですよ」とでも言わんばかりに。

結局、おばちゃん2人は入ってきませんでした。

単に、露天風呂の廊下で、おしゃべりしていただけだったのです。

まぎらわしい、いや、彼女たちは悪くありません。

勝手に私が早とちりしただけ。

それにしても朝から、あのテンションはすごい。<text:イシコ>