結成23周年を目前に控えたUVERworldが、自身が主宰する恒例の対バン企画『VSシリーズ』を4月12、13日の2日間にわたって神奈川県・横浜アリーナにて開催した。初日はBiSHを迎えて異種格闘技戦とも呼びたい熱いバトルを展開。2日目に予定されていたOfficial髭男dismの出演は急遽、見合わせとなってしまったが、代わりにギターの小笹大輔をゲストに全身全霊のパフォーマンスを見せつけ、詰めかけたオーディエンスのべ2万4千人を魅了した。
初日の先攻を務めたBiSHはメジャー2ndアルバム『THE GUERRiLLA BiSH』に収録された「My landscape」のミュージックビデオ内で着用している赤の衣装に身を包んでステージに登場。「サヨナラサラバ」「GiANT KiLLERS」「NON TiE-UP」と切れ味鋭いアッパーチューンを立て続けに投下、自身のファンのみならずUVERworldファンを容赦なく圧倒する。
なお、BiSHは今年6月29日に行われる東京ドームでのライブを持って解散することがすでに決定しており、UVERworldとの対バンはこれが最初で最後。ロックバンドの雄・UVERworldと、“楽器を持たないパンクバンド”を標榜するBiSHという組み合わせは意外にも思えるが、かねてよりBiSHの音楽性をリスペクトしていたUVERworldが彼女たちの解散を前にぜひ対バンをとオファーしたことから今回の共演が実現したという。ただし、これまでは音楽フェスなどで顔を合わせたことはあるもののプライベートでの面識はほぼ皆無だという。
MCではそれをネタにハシヤスメ・アツコが「呼んでいただけて光栄なんですけども、私たち、UVERworldさんとはあんまり絡みないですよね?」と冗談めかしてぶっちゃけ、リンリンが「あるよ。モンバス(MONSTER baSH:毎年香川県で開催される夏フェス)でうどんを食べているときにTAKUYA∞さんが“美味しいかい?”って」となけなしの交流エピソードを明かして、場内の爆笑を誘う一幕も。
また、今回のライブでは観客のマスク着用義務を解除、それに伴って声援などの発声も解禁されており、久々に浴びる大歓声に「今日は声も出せて顔も見られる。こんな最高な日はないです」とメンバー一同、歓喜にはずむ場面もあった。
今年3月にリリースされた「Bye-Bye Show」を披露したあと、この曲のサビの振り付けが花をモチーフにしていると語り、「みなさんと一緒に東京ドームで花になって、綺麗に散っていきたい。よかったらきてくれませんか?」と呼びかけるアイナ・ジ・エンド。小学生の頃からその音楽を耳にしてきた大先輩、UVERworldへの尊敬と感謝、そして観客への「ありがとう」を改めて口にすると、BiSHの代名詞と呼ぶべき「オーケストラ」に突入。ラストはセンチメンタルなムードを一蹴するかのようにセントチヒロ・チッチが叫んだ「横浜アリーナ! BiSHと一緒に踊れますか? いけるか!」を起爆剤に彼女たちの始まりの1曲「BiSH-星が瞬く夜に-」へとなだれ込み、エンディングまで一気呵成に駆け抜けて、UVERworldへとバトンを渡した。
興奮冷めやらぬまま、後攻のUVERworldを迎え入れるや、横浜アリーナはさらなる熱狂の坩堝と化した。ボーカル・TAKUYA∞が「のっけから全力でぶっ飛ばしていくんで、よろしくどうぞ!」と不敵に告げ、その言葉通りバンドは「Don't Think.Feel」「畢生皐月プロローグ」「ODD FUTURE」とライブに欠かせない鉄板チューンを連投。BiSHファンを“清掃員”とその総称で呼び、「俺らもおまえらと一緒なんだよ。純粋にBiSHの音楽をリスペクトしてるから誘いました」とこの対バンへの意思を明かしたTAKUYA∞。「そのリスペクトの形がこれ。清掃員のみんなも、いつも通り暴れていいんだぜ!」と煽ると演奏はBiSHのカバー「GiANT KiLLERS」へ。敬意は音で表すと言わんばかりに叩きつけられるハードでやんちゃなUVERworldバージョンの「GiANT KiLLERS」にはBiSHファンもUVERworldファンも大喜び。ジャンルの壁はもとより、ファン同士の壁もみるみる取り払われていく。
リンリンの“うどんエピソード”を受けて、「あれはリンリンがまったく同じうどんを2個、交互に食べていて。そりゃ“美味しいの?”って聞くでしょ?」と補足を加えたり、BiSHの衣装で何が好きかを問われ「My landscape」はカッコいいねと答えたところ、今日の衣装になっていたことや彼らのマネージャーがハシヤスメの大ファンであることを明かすなど、ファンの心情に寄り添ったフレンドリーなMCからも彼ら自身、この日の対バンを心から楽しんでいることが伝わってくるかのようだ。
ドラマ『アバランチ』の主題歌としても大きな話題を呼んだ「AVALANCHE」やアニメ『約束のネバーランド』のオープニングテーマ「Touch off」といったメジャーな楽曲から「誰が言った」「One Last Time」など反骨精神とユーモアを綯い交ぜにしたオリジナリティ溢れるナンバーまで幅広い音楽性とアジテーティブなパフォーマンスでオーディエンスのハートを鷲掴みにするUVERworld。終盤戦、TAKUYA∞は「(BiSHの)東京ドーム、観に行こうぜ。挑戦の最後を見届けよう」と呼びかけ、新たな旅立ちを控えた彼女たちにエールを送ると、ラストはダンサブルな「UNKNOWN ORCHESTRA」で明るく初日を大団円に導いた。