『NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23』プレーオフトーナメント前哨戦である。9勝2分3敗・勝点48の4位横浜キヤノンイーグルスが11勝3敗・勝点51の3位東京サンゴリアスを迎え撃つ。

最終節、横浜Eは11位に沈むグリーンロケッツ東葛とのビジターゲームに臨み、東京SGは12勝1分1敗・勝点56の2位クボタスピアーズ船橋・東京ベイが16連勝中の敵地に乗り込む。5位には9勝5敗・勝点43の東芝ブレイブルーパス東京が追っている。BL東京は『NTTリーグワン2022-23』第15節で三菱重工相模原ダイナボアーズと金曜ナイターで対峙し、最16節では14戦全勝・勝点62と首位を快走する埼玉ワイルドナイツとの対戦が控える。

横浜Eとしても、東京SGとしても、今節『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメント出場を決めたいところ。ただ4強入りを決めればいいという話ではない。3位か、4位かは大違いである。プレーオフトーナメントは1位×4位、2位×3位の組み合わせで準決勝を行う。横浜Eの選手たちも東京SGの面々も「どこが相手でも関係ない」と言うだろうが、じつに4年間、47戦負けなしの埼玉WKとの大一番は決勝まで取っておきたいのが本音のはず。

プレーオフどうこうを置いておいても、横浜Eはどうしても借りを返さなければいけない。1月7日の第3節は東京SGにとって数的不利を跳ね返した会心の勝利、横浜にとって数的有利を生かせなかった悔いの残る敗戦となった。

ジェシー・クリエル(横浜キヤノンイーグルス) (c)JRLO

東京SG×横浜Eは立ち上がりから動いた。2分南アフリカ代表46キャップのSHファフ・デクラークの早いリスタートから同58キャップのCTBジェシー・クリエルが抜け出して先制トライ。6分には日本代表46キャップのFB松島幸太朗のグラバーキックが横浜Eの選手に当たりオフサイドは解消となるラッキーもあり、ニュージーランド代表50キャップのSOアーロン・クルーデンが同点トライ、クルーデンのゴールも成功して逆転する。華々しい東京SGデビューを飾ったに見えたクルーデンだが、10分後に悪夢を見ることになる。17分ラックへプレッシャーを掛けた際、クルーデンの肩がデクラークの頭部にヒット……一発退場となったのだ。ペナルティを得た横浜EはPGで8-7と逆転。横浜Eにとって絶対有利、東京SGにとって絶体絶命の60分強になるはずだった。

14人となった東京SGは一人ひとりが出足の鋭さと運動量で数的不利をカバー、横浜Eのミスやペナルティを誘った。FL箸本龍雅のジャッカルで獲得したPGを第3キッカーとして用意してきたSH齋藤直人が成功し、10-8。3分後にも松島の鋭いタックルでペナルティを得て、PGで加点した。

なかなかペースをつかめない横浜Eは36分、デクラークが反則の繰り返しで10分間の一時退場となると、東京SGは勝負どころを逃さなかった。40分CTB中野将伍のラインブレイクからWTBテビタ・リーがトライにつなげるも、TMO(ビデオ判定)の結果、東京SGのオブストラクションが確認されてノートライに。しかし、後半開始早々の42分、SH流大が連続攻撃の7フェーズに自ら持ち込んでインゴール手前でラストパス、WTB尾崎晟也がトライをマークして18-8。

田村優(横浜キヤノンイーグルス) (c)JRLO

46分、敵陣深くでのラインアウトを得た横浜Eはドライビングモールからトライを狙うも、押し込めず。ならばとデクラークは左へ展開、日本代表70キャップのSO田村優のカットパスからWTB松井千士が逆襲のトライかと思われたが、こちらもオブストラクションが認められてトライはキャンセルに。ならば50分、横浜Eは田村のPGで3点を返した。

54分、後半からの出場となったSO森谷圭介のビッグゲインから最後は日本代表47キャップのLOツイ ヘンドリックがインゴールにボールを叩き付けると、3分後にまたもやデクラークの早いリスタートから距離を稼ぎ、最終的にウエールズ代表32キャップのコリー・ヒルがインゴールへ侵入した。ともにCGを成功させて25-18となった。

63分クリエルの突破からWTBヴィリアメ・タカヤワが左サイドを駆け抜けてトライ、タイトな角度の田村のCGは失敗したが、25-23。77分インゴールまで残り5mの位置でのラインアウトから東京SGがモールを押し込みトライかと思われたが、HO中村駿太のボールロストが確認されてトライは取り消しに。だが、日本代表29キャップのNo8アマナキ・レレイ・マフィが一時退場となると、インゴール手前のマイボールスクラムから日本代表32キャップのCTB中村亮土の右へ大きく展開するキックパスを尾崎がトライして勝負あり。森谷のCGも決まり32-23でノーサイドを迎えたのだった。

田中澄憲監督(東京サンゴリアス) (c)JRLO

ホストチームの田中澄憲監督は次のように勝因を語った。
「前半で14人になってもパニックにならず、冷静に対処した選手たちに成長を感じた。やはり、サンゴリアスらしさはハードワークの徹底。14人になってからの方がみんなが動き、強かったかなと思うほど。ハードワークを80分間続けられたことが今日の結果につながった」

クルーデンが退場後にすぐさま森谷を投入するのではなく、ハーフタイムまで引っ張った理由を問われると、指揮官はこう答えた。
「10番が不在になっても、9番の直人と12番の亮土のところでコントロールしてくれていたので、すぐに変更するプランはとらなかった。ただ、後半は勝利をつかむために仕掛けにいった。攻撃の舵取り役として亮土の負担が大きかったので、その部分は森谷と流に託した」

田中監督からゲームコントロールを称えられた齋藤共同主将はこのようにゲームを振り返った。
「前半からレッドカードが出てしまい、厳しい状況になった中で勝ち切れた。そういった状況でもゲーム中にやるべきことをチーム全員で統一して戦えたことは大きかったと思う。人数が少ない分、ボール保持をするよりは手放してディフェンスをした方がいいと判断した。亮土さんは普段10番の位置でコントロールする選手ではないので、そこを自分からのキックで変えようと亮土さんと話して決めた」

キッカーを務めた感想を求められると。
「昨季と同様にサードキッカーなので、何かあった時のために練習していた。それが生きてよかった」

流大(東京サンゴリアス) (c)JRLO

日本代表キャップの齋藤に代わって後半ゲームをコントロールしたキャップの流はこうコメントした。
「14人の時にテンポを上げすぎるのは厳しい。ブレイクダウンが優位に立った時だけ、一気に畳みかけることを意識していた。ラグビーで14人になるのは本当に大変。特にこのレベルの試合でSOがいなくなると影響が大きい。時間を使いながらプレーの選択をした。後半、そこまでボール出しを早くせず、ある程度自分たちの形が整ってからにした。最後は得点できなくても敵陣にいることが大事だった。FWのがんばりがすべて」

(写真左より)沢木敬介監督(横浜キヤノンイーグルス)、梶村祐介(同) (c)JRLO

一方敗れた沢木敬介監督は悔しさを露わにした。
「まあ今日は勝たなきゃいけない試合だったが、自分たちから崩れてしまった。ただサントリーはひとり少ない状況になってもいいコントロールをしてしっかりスコアにまでつなげていた。そういった差が出た。ただ落胆しても仕方ない。来週どう過ごすのか。負けから学ぶのはもう結構。しっかりレベルアップして強くなった横浜キヤノンイーグルスを次の試合で見せたい」

また沢木監督は自分たちのアタックのていねいさが必要だと説いた。
「アタッキングの部分で、自分たちのスタイルではなく、トライを取り急いだり、目の前のプレーよりも先のプレーを考えて細かいことが疎かになったりした。僕らはしっかり組織としてアタックするチームなので、そこの集中力が原因だと思う」

監督と同様に古巣相手に悔しい敗戦を喫したCTB梶村祐介主将も反省の弁を述べた。
「今日の試合は相手以前の問題で自分たちから崩れてしまった、そういうゲーム。こういう試合を勝たないと今後も難しくなる。結果は残念だが、しっかり前を向いて次に進みたい。相手が14人になってからずっと外にスペースがあるのは見えていたし、アタックマインドがより強まったが、結果として何か油断のようなものが出てしまった。組織として戦えていたゲーム序盤と比べると、どんどん個人個人に走ってしまった。後半の最後は自陣に釘付けにされた。毎試合反省に出ている『ディフェンスで長い時間我慢できない』という課題が改めて出てしまった」

数的有利を生かせなかったデクラークも改善点を口にした。
「ただただ残念。もっと賢くプレーできたと思うし、枚数が相手よりも多いと人数をかけ過ぎてしまう傾向がある。相手の裏側にスペースが生まれていたはずなので、もっとそこを狙えていれば。チームはもちろんファイトし続けたが、ブレイクダウンの対応がまだまだ。そのあたりを整理しないといけない。過去2試合もそうだが、やはり規律の面とアタックのブレイクダウンを修正する必要がある。イグジットもよくなってはいるが、もっとうまく展開していく必要がある」

あれから3か月、横浜Eはリベンジの機会に挑む。4月9日の第14節でグリーンロケッツ東葛相手に45-17ときっちりボーナスポイントを獲得した沢木監督は、このように次を睨んだ。
「バタついた時間帯もあったが、最後の残り10分で勝点5を獲得でき、チームとしての成長を感じた。先を見ることなく自分たちが成長できるゲームを一戦一戦重ねながら個としても組織としても成長していくというマインドセットで臨んでいる。次のサンゴリアス戦に向けていい準備をして、いいチャレンジをしたい。ショートウィークは普段なら『新しいことはせず、シンプルにいこう』となりがちだが、僕たちがやることはもう僕の頭の中にある。チーム全員でしっかりと準備します」

松島幸太朗(東京サンゴリアス) (c)JRLO

もちろん、東京SGにリベンジを許す気はさらさらない。横浜E、S東京ベイというプレーオフのライバルたちを蹴散らし、4強戦へ突入するのみである。前節は雨と強風の中、コベルコ神戸スティーラーズ相手に我慢を強いられる戦いとなったが、25-17の逆転勝利。ここからファイナルラグビーへ向けて、ギアを一段も二弾も上げていきたい。

両軍の試合登録メンバーは以下の通り。

【横浜E】
1岡部崇人、2庭井祐輔、3杉本達郎、4コリー・ヒル、5リアキマタギ・モリ、6コーバス・ファンダイク、7嶋田直人、8シオネ・ハラシリ、9山菅一史、10田村優、11松井千士、12南橋直哉、13ジェシー・クリエル、14イノケ・ブルア、15エスピー・マレー、16川村慎、17安昌豪、18津嘉山廉人、19マックス・ダグラス、20シオエリ・ヴァカラヒ、21ファフ・デクラーク、22小倉順平、23竹澤正祥

【東京SG】
1森川由起乙、2堀越康介、3垣永真之介、4ツイ ヘンドリック、5ハリー・ホッキングス、6トム・サンダース、7山本凱、8テビタ・タタフ、9齋藤直人、10田村煕、11テビタ・リー、12中村亮土、13中野将伍、14尾崎晟也、15松島幸太朗、16中村駿太、17石原慎太郎、18祝原涼介、19箸本龍雅、20飯野晃司、21流大、22イザヤ・プニヴァイ、23尾崎泰雅

果たして、横浜Eがリベンジし3位に浮上するのか、それとも東京SGが返り討ちにして3位を死守するのか。『NTTリーグワン2022-23』第15節・横浜E×東京SGは4月15日(土)・日産スタジアムにてキックオフ。当日は来場先着1万名にイーグルスオリジナル法被、先着1万2000名にはレンジーとカノンちゃんのオリジナルコラボポストカードをプレゼント。チケット発売中。試合の模様はテレビ神奈川で生中継。