ポストシーズンまで残り3試合。『NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23』ディビジョン1は今週のバイウィークを経て、最終盤へ突入する。選手は頭と体をリフレッシュし、コーチは手応えと課題を整理し、ラストスパートに臨むのだ。
2年目の戦いはよりハイレベルかつ拮抗した試合が増えているが、そんな中王者埼玉ワイルドナイツの強さは揺るがない。今季13戦13勝で首位を独走、唯一の無敗で『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメント出場を決めたのだ。
リーグ最多得点のクボタスピアーズ船橋・東京ベイがデカくて強いFW陣を押し出し、後半勝負を仕掛けられても、2年連続ファイナルで対戦している東京サンゴリアスが試合開始からエンジン全開で攻め倒しても、埼玉WKは跳ね返した。
3月4日の第10節、S東京ベイにひとつもトライを与えず、SO山沢拓也が2トライ3コンバージョンキック2ペナルティゴール1ドロップゴールのフルハウスで25得点を叩き出す大暴れで30-15の勝利を飾ると、翌週の第11節はハイテンションの東京SGに前半3-17と点差を付けられるも、53分から7分間で怒涛の3連続トライで一気に逆転すると最終的には41-29と突き放したのだった。
S東京ベイ戦後、HO坂手淳史主将が「チームの価値はディフェンスに見えると思う。ゲインを切られた局面、トライに迫られたシーンがあったが、スクランブルディフェンスで、プライドを見せることができた。ディフェンスに関して、誇りに思う」と胸を張れば、東京SG戦後のロビー・ディーンズ監督は「歴史的な2チームで特別な試合ができた。選手たちがハードワークしたからこその結果。ハードワークし続けなければならない苦しい展開を耐え、勝機を逃さなかった。プレッシャーに対して果敢に立ち向かったので、その点が非常にうれしい」と選手を称えた。
一方敗戦後のライバルたちは、CTB立川理道主将(S東京ベイ)が「ゴール前までしぶとくディフェンスされた。ただ崩し切れたところもあるので、あとは本当に最後のところ。次は勝ちます。年々、ワイルドナイツに対してチームでチャレンジできるようになってきている。現実を受け止めて、これからもいい準備をしていきたい」と前を向き、FB松島幸太朗(東京SG)も「僕は全然ネガティブになっていないし、全然やれていたし、これをどう今後につなげていくか、そこだけ。今日みたいなアグレッシブラグビーを毎試合やること。その中でスペースにキックするか、FWを前に出すか、BKが考える。ディフェンスは前半すごく良かったので、80分やれる体力を考えながら試合をやりたい」とポジティブな言葉を発したが、埼玉WKとのわずかな差を埋めるのは困難極まりない。
他チームが敗戦や引き分けから教訓を得ているのに対し、埼玉WKは勝ち続けながら反省をしているのだ。しかも他チームが包囲網を敷いても、徹底解剖してきても、ラストワンプレーでビハインドを背負っていても、勝ち続けている。昨季の不戦勝を除いて、じつに45試合負けなしである。正直、埼玉WKが負ける姿が想像つかない。
前節も本来の力を取り戻しつつあるトヨタヴェルブリッツ相手に2枚のイエローカードを受ける苦しい戦いを強いられたが、見事なゲームコントロールで主導権を渡さずに19-10でノーサイドの笛を聴いた。数的不利の51分にピッチに入ったHO堀江翔太は浮足立つチームに落ち着きをもたらした。当人は「やることを、やっていこうと。トライラインを背負う状況でも、やってきたことを出そうと。あの感じやと、ペナルティさえ気を付ければ、取られない。モールさえ止めてしまえば何とかなると思っていた」と振り返った。
会見の席でプレーオフ進出決定の感想を質問された坂手主将は「今知りました。忘れていました。すごくうれしいし、13個勝ちを並べることができたことはチームの実力だと思う。しんどい試合ももちろんあったし、今日もどちらが勝つかわからない時間帯が長く続き、それでも勝ち切れたというのは、チームの成長と手応えを感じている。ただ、プレーオフに向けて、まだ試合数もあるし、その試合でもう1回成長して、プレーオフで戦っていけるように、ここから3試合がすごく大事だと思う。ロビーさんが言っていたように相手は失うものがない状態で僕たちに戦いを挑んでくると思う。僕たちもそこに立ち向かって、一つひとつの試合に勝って、全勝で上に行きたいと思います」と決意を新たにした。