一方の芳年も、1883年から4年の歳月をかけて武者絵のシリーズ「芳年武者无類」を出版している。こちらは、無地の背景や人物の配置など独特な構図で描かれた芳年の武者絵の金字塔的シリーズで、芳年が国芳から継承した画風を革新的なものに変えていったということを見て取ることができる。

三菱一号館美術館が24年秋まで長期休館に 休館前最後の展覧会『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』は4月9日(日) まで
(画像=(左):月岡芳年《芳年武者无類 日本武尊 川上梟師》1883年 (右):月岡芳年《芳年武者无類 相模守北條最明寺入道時頼》1883年 ともに浅井コレクション、『ぴあエンタメ情報』より引用)

明治に入り、芳幾が活路を見出したのが「新聞錦絵」というジャンルだ。芳幾は、戯作者の條野採菊(じょうのさいぎく、鏑木清方の父)らとともに東京初の日刊紙「東京日日新聞」を発刊。新聞からゴシップ的な記事を選び、テキストに即して描いた錦絵「新聞錦絵」を刊行するとたちまち人気となり、多くの追随者を生むことになった。のちに刊行された「郵便報知新聞」の新聞錦絵では、芳年が起用されている。

三菱一号館美術館が24年秋まで長期休館に 休館前最後の展覧会『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』は4月9日(日) まで
(画像=(左):落合芳幾《東京日々新聞 四十号》1874年 毎日新聞社新屋文庫、『ぴあエンタメ情報』より引用)
三菱一号館美術館が24年秋まで長期休館に 休館前最後の展覧会『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』は4月9日(日) まで
(画像=(左):月岡芳年《郵便報知新聞 第四百二十五号》1875年 毎日新聞社新屋文庫、『ぴあエンタメ情報』より引用)

芳幾が新聞錦絵で成功する一方で、芳年は西洋絵画にも学び、自らの表現を突き詰めていく。歴史画も数多くのこしている芳年だが、晩年には100図からなる大作シリーズ「月百姿」に取り組んだ。これは、歴史上の人物や物語の登場人物などを月にちなんだ風景のなかに描いたもので、文学的で静謐なその作品世界は、芳年が試行錯誤のうえにたどり着いた境地を示しているといえる。

三菱一号館美術館が24年秋まで長期休館に 休館前最後の展覧会『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』は4月9日(日) まで
(画像=(左):月岡芳年《月百姿 朱雀門の月 博雅三位》1886年 (右):月岡芳年《月百姿 竹生島月 経正》1886年 ともに浅井コレクション、『ぴあエンタメ情報』より引用)

江戸から明治へ、浮世絵衰退の時代に生き、それぞれのやり方で時代に抗った芳幾と芳年。同じ師に学んだふたりの対照的な生き様を、それぞれの作品を通して感じとってみてほしい。

<開催情報>
『芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル』

2月25日(土)〜4月9日(日) 三菱一号館美術館にて開催


提供元・ぴあエンタメ情報

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