映画『ジュラシック・パーク』 Photo: Amblin/Universal/Kobal/Shutterstock映画『ジュラシック・パーク』 Photo: Amblin/Universal/Kobal/Shutterstock

ジュラシック・パーク』に登場するような鋭い歯をむき出しにした「Tレックス」は存在しなかったのか。最新の研究結果が話題になっている。

 

3月30日(木)、学術誌「Science」に、ティラノサウルス・レックス(Tレックス)など大型獣脚類(二足歩行の肉食恐竜)のくちびるに関する研究結果が掲載された。

この研究結果によると、Tレックスのような恐竜の歯はうろこ状のくちびるでおおわれていた可能性が高いという。また口を閉じた状態で歯が見えるようなことはなく、口を大きく開いても、先端が少し見える程度だったことも明らかになった。

恐竜のくちびるの有無をめぐっては、長年にわたって議論が繰り広げられていた。

今回の結果は、恐竜と爬虫(はちゅう)類の頭がい骨を比較して発覚したものだという。一部の研究者は、Tレックスの歯が大きすぎて、くちびるからはみでることもあったと主張していたが、オオトカゲの頭がい骨とTレックスのものを比べたところ、Tレックスよりも比率的に大きな歯を持つオオトカゲであっても、歯をくちびるの中におさめることができたことがわかったのだ。

 

また、歯の表面の摩耗(まもう)パターンも、新たな研究結果につながった。

ワニのように口から歯が出ている生物は、露出した部分がすぐにすり減ってしまう。しかし、Tレックスの親戚であるダスプレトサウルスの歯を分析したところ、その状態は良好で、ワニのような不均一な損傷パターンを示さなかったという。

メリーランド大学の古生物学者トーマス・ホルツは、この証拠と恐竜の解剖学的な手がかりから、この研究はTレックスの歯がくちびるにおおわれていたことを十分に立証できるものだと語った。

「くちびるを持つ」と聞くと、凶暴なイメージが薄れてしまうTレックス。しかし、研究者の1人は、この研究結果によって、「より現実的に感じられる」とし、「われわれが知っているのはモンスターではない。動物なんだ」と付け加えた。