ドナルド・トランプと、ユリシーズ・グラント Photo: Shutterstock, Sunny Celeste/imageBROKER/Shutterstock
アメリカには、かつて現職の大統領でありながら逮捕された人物がいたようだ。
3月30日(木)、ドナルド・トランプ氏が元アメリカ大統領として史上初めて起訴された。
しかし、150年以上前には、当時現職の大統領だったユリシーズ・グラントが馬車のスピード違反で逮捕されていたのだ。
1869年から1877年まで第18代アメリカ大統領を務めたグラントは、1872年、南北戦争で北軍に勝利した名将として知られている。
Washington Post紙が報じたところによると、当時を記録した資料に、グラントが現職大統領時代にワシントンD.C.の13丁目とM通りの角にて馬車でスピード違反して逮捕されたことがあると記されているという。
これは1908年9月27日発行のEvening Star紙にて詳しく説明されている。当時のタイトルは、「大統領を逮捕した唯一の警察官」だった。
グラントを逮捕したのは、黒人で南北戦争の退役軍人だったウィリアム・ウェストという人物だ。
ウィリアム・ウェストは、「逮捕の真相を世間に知らせようと思った」と公表することを決意したとされている。
Evening Star紙によると、グラントは速い馬が好きで、馬の度胸試しにわざとおどろかせて飛び上がらせることもあったという。
一方、当時ワシントンD.Cには馬のスピード違反に対する苦情が多数寄せられており、母子がひかれてケガをする事故もあったことから、当時警察官として職務に従事していたウェストが出向くことになった。
するとそこに、ものすごいスピードでせまってくる馬の一群が現れた。そしてその中の一頭を、現職のアメリカ大統領が運転していたのだ。
ウェストはグラントと彼の馬を制止すると、「現職大統領であるあなたが手本を見せるべき」とさとし、グラントも謝罪をしてその場を離れた。
ところがグラントは、翌日再びスピード違反をする。ウェストは再び取り締まったが、グラントは今回ものらりくらりとかわそうとした。
しかし、ウェストも今回ばかりは見逃せなかった。
ウェストは「大統領、大変申し訳ございません。あなたは国の長であり、私は警察官にすぎません。しかし職務は職務です。あなたを逮捕せざるを得ません」と告げ、逮捕に至ったという。
なお、その後グラントをはじめスピード違反を犯したものにはそれぞれ20ドルの罰金が命じられたが、裁判所にグラントの姿はなかったそうだ。
他の違反者たちは、裁判官から「重い罰金」と「厳しい叱責」を受けたと記されている。
Washington Post紙はこの内容について、当時はジャーナリズムの基準が異なっていることから、記事の正確性を知ることは不可能だ、と記している。