テイラー・スウィフト Photo: George Pimentel/Shutterstock
人気歌手テイラー・スウィフトの最新アルバム「ミッドナイツ」に収録されている“ある曲“が、一部のリスナーに妊娠喪失の経験を思い出させ、その曲を聴いては悲しみを癒しているという。
この記事を書いている筆者も実は過去に流産の経験がある。「お腹にいた赤ちゃんがいなくなった」という喪失感はすぐに癒えることはなく、筆者には「自己嫌悪」がつきまとった。「自分のせいだったのでないか」と悔やみ、「あのときこうしていれば、あのとき、あの選択をしなければ助かったのではないか」といった、どうにもならない“もしも“を考える。極めつけは、他人の子供を見て「うらやましい」「なぜ私だけ」と嘆くのだ。
筆者はこのとき出会うことはできなかったが、多くの妊娠喪失者が、テイラー・スウィフトのある楽曲によって癒しを得ているようだ。その曲とは、最新アルバム「ミッドナイツ」の収録曲「Bigger Than the Whole Sky」。同曲には次のような歌詞が含まれている。
“さようなら、さようなら、さようなら
あなたはこの空全体よりも大きかった
あなたは(一時的にしかいなかったけれど)それ以上の存在だった
私にはなつかしい想いがたくさんある
私はたくさんのものがなくたって生きていける
一生出会うことはないでしょう
ありえたかもしれない、そうだったかもしれない
あなたであるべきだったものに
ありえたかもしれない、(あなたと出会えることが)あったかもしれない”
一生出会うことはないものの、大事な“誰か”を想ったこの曲は多くの妊娠喪失者の励みと癒しになっているようだ。ツイッターには以下のようなコメントも見受けられる。
「私は6月に流産したんだ。乗り越えたわけじゃない、大丈夫じゃない。(この気持ちを)言葉にすることができずにいたけれど、この曲が代弁してくれた。もちろん主観的なものだけど、この曲は私にとっては、そういう意味なの。ありがとう、テイラー・スウィフト」
「テイラー・スウィフトの新曲『Bigger Than the Whole Sky』は、流産経験者には強く響く。私はその曲を何度も聴くたびに泣いてしまったかもしれない」
米TODAYによると、米ミシガン州に住むアシュリー・フリッツさん(30)も、「Bigger Than the Whole Sky」を聴いてすぐに3年前の流産を思い出したという。「最初のヴァース(Aメロ)はどんな喪失にもあたる可能性があったので、妊娠のことは考えもしませんでした」と切り出したアシュリーさんは「『信じられない言葉を言う』という歌詞は、『いやいや、大丈夫だよ。時間がこのことを癒してくれるし、乗り越えられる』と自分に言い聞かせたときのことを思い出させたんです」「そのとき、私はキッチンの床で泣いていました」とも発言。テイラーのこの曲によって、自分の傷の深さを改めて知ることになったと明かしている。
「私はようやく、泣いて、感情を感じて、自分を少し解き放てるようなものを聴けるようになったんです」
2歳の息子を持つケイトリン・ホーゲンさん(28)もこの曲を聴いて妊娠喪失を思い出したひとりだ。楽曲を聴いて7月に2度目の妊娠がうまくいかなかったときのことを思い出したというケイトリンさんは、当時について「初めての妊娠喪失は、本当に困難でした。親の立場からすると、息子をどれだけ愛しているかはすでに分かっていて、その喪失感――彼の弟妹を失うこと、そしてもう一人の子に感じると分かっていた愛情を失うことは、壊滅的でした」と述べている。
そんなケイトリンさんは「Bigger Than the Whole Sky」を聴いたときの心境について「一言一句(自分の考えと)同じことを言っていて、驚いた」と述べているほか「私にとって、妊娠喪失の経験をとても身近に感じさせる曲は記憶にない」とも語っている。
同サイトによると妊娠の4回に1回は流産すると報告されているものの、多くの人が自分が妊娠していることに気づく前に流産していることもあるため、この数字はもっと高いと考えられている。また、2015年の研究によると、人々は流産はまれなこと、もしくはストレスが引き起こすものと誤解していると言い、それらの迷信がスティグマや批判、罪悪感につながることがわかっている。