一方、同じソウルの他の薬局でも風邪薬と鎮痛剤の販売が目立っており、総合風邪薬であるタイレノール、テラフルなどは品切れ状態が続く。韓国国内では通年の13倍以上も注文量が増えた薬局があるそうで、国内で新型コロナウイルスやインフルエンザなどが流行した際にもありえないような現象となっているようだ。
医薬品販売量の激増の要因となっているのが「代工」の存在だ。代工とは、海外で品物を大量に購入した後、中国本土に持って行って販売する個人や組織を指す。もともと免税店やブランド売場などで使われていた用語だったが、最近は中国人大量購入者全体を指す言葉として定着した。
韓国の薬業界関係者が現地メディアに答えたところによれば、「全商品を合わせた1カ月の売り上げが、1日、しかも1品目で達成される薬局もある。意図的な大量購入でなければ説明が難しい」そうだ。家族・知人に送るならまだしも、代工による爆買いが続けば市場の需給もおかしくなる。そのような状態になることに危機感を感じたのか、一部の流通会社は出荷統制を独自に開始した状況だ。
前出のA氏によれば、「中国国内には、日本や韓国だけでなく、欧州から商品を大量に買い付けてくる代工も増えている」という。報道を見る限り、タイなど近隣の東南アジア諸国でも事情は似通っている。世界中から風邪薬や解熱剤を掃除機のように吸い上げている中国社会。パンデミックがこれからさらに本格化した場合どうなるか。周辺国にとっては、ますます対岸の火事として見過ごせなくなりそうだ。