TBSが立ち上げたドキュメンタリー映画のブランド「TBS DOCS」のもと、今回で3回目を迎える『TBSドキュメンタリー映画祭2023』が3月17日(金) 、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開幕。ラインナップの一作である『東京SWAN 1946 〜戦後の奇跡「白鳥の湖」全幕日本初演〜』の上映を前に、ダンサーで俳優の宮尾俊太郎、浅川紫織、宮武由衣監督、映画祭アンバサダーのLiLiCoが舞台挨拶を行った。
挨拶に立ったLiLiCoは「TBSは良質なドキュメンタリーをどんどん生み出していて、それをこうやってスクリーンで見られる。初日にたくさんの皆さんにお集まりいただき、本当にうれしいです。本気の人間が、生きる希望を与えてくれる。きっと皆さん、帰り道は、ステップ軽く踊り出したくなるはず」と喜びを語り、映画祭のオープニングを華々しく宣言した。
『東京SWAN 1946 〜戦後の奇跡「白鳥の湖」全幕日本初演〜』は敗戦直後の1946年、京城出身の青年・島田廣が、自身のバレエの才能を見出したロシア人の師匠、エリェナ・パァヴロヴァの悲願を成し遂げるために、焼け跡の東京で『白鳥の湖』全幕初演という前代未聞の無謀な挑戦に奔走する姿を追った歴史秘話。
以前からドラマ製作の過程で、バレエの歴史に関心を抱いていたという宮武監督は「いろいろな書物を調べ、終戦後にこんな出来事があったんだと驚いた」と振り返り、「どん底にいた日本人の心を、当時は高尚で手が届かないとされたバレエで、どんな風に感動させたのか。そこに何があったのか知りたくなった」と本作の着想を明かした。
劇中で当時の公演を“再現”した宮尾は、「そこにどんな意義や意味があるのか、監督と話したが、どうやら監督もふわっとしていて(笑)」。宮武監督は「そのせいで、宮尾さんは常に不機嫌でした」と恐縮しきりだったが、改めて宮尾は「偉人たちを突き動かした使命感に触れ、心で踊るとはどういうことか改めて考えた」と試みの意義を強調。自身が抱えたコロナ禍での葛藤と照らし合わせながら、「ぜひ、皆さんも自分と置き換えながら、見てほしい」と客席にアピールした。
また、宮尾と共演した浅川も「ついつい美しさにこだわってしまっていると気づかされた。心こそが一番大事だと、改めて学びました」といい、「当時はパラシュートの生地で衣装を作ったと聞き、驚きました」と話していた。