TBSが立ち上げたドキュメンタリー映画のブランド「TBS DOCS」のもと、今回で3回目を迎える『TBSドキュメンタリー映画祭2023』の開催直前イベントが3月14日(火)、都内で行われ、「TBS DOCS」チェアマンの太田光と、昨年の映画祭アンバサダーを務めたトラウデン直美が出席。注目作品について語り合った他、同席した佐井大紀監督(『日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜』)、取材拠点のロンドンからリモート参加した須賀川拓監督(『戦場記者』)に質問をぶつけた。

佐井監督の最新作『カリスマ ~国葬・拳銃・宗教~』は、昨年行われた国葬や反対デモ、さらにかつて世間を騒がせた“イエスの方舟”に迫った内容で、太田は「早速、高市(高市早苗/現経済安全保障担当大臣)に見てもらって、文句言ってもらいましょう」と毒舌。佐井監督は「国葬というイベントがあった去年1年間の熱量をパッケージできないかなと。ふと日本社会を俯瞰し、主役と周りの人々の縮図が見えて、さまざまな問題の点と点が線となり作品になった」と振り返った。

太田光、亡くなった鮎川誠をしのぶ ドキュメンタリー映画完成も本人は鑑賞できず
(画像=太田光、『ぴあエンタメ情報』より引用)

一方、須賀川監督の最新作『アフガン・ドラッグトレイル』は、薬物中毒者の取り締まりを通して、アフガンを蝕む薬物の闇を切り取る意欲作。トラウデンが、「大人たちの虚ろな表情が印象的だった。そこから抜け出せない絶望感を感じた」と感想を述べると、須賀川監督は「絶望の中でも必死に生きている人がおり、逆説的に希望を感じた」と現場でしか得られない感覚を伝え、「麻薬がヨーロッパに密輸されているので、タリバンも利益を得ながら搾取もされている」と問題の根深さを指摘していた。

太田光、亡くなった鮎川誠をしのぶ ドキュメンタリー映画完成も本人は鑑賞できず
(画像=トラウデン直美、『ぴあエンタメ情報』より引用)

期間中は『カリスマ ~国葬・拳銃・宗教~』『アフガン・ドラッグトレイル』に加えて、オートレーサーの森且行が壮絶なリハビリに挑む姿を追い続けた『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』、先日訃報が報じられたシーナ&ロケッツの鮎川誠を追った『シーナ&ロケッツ 鮎川誠と家族が見た夢』など、全15作品が上映される。

太田は「どれも見応えがあるけど、やっぱり、鮎川誠さんのドキュメンタリーがね。さっき聞いたら、ご本人は完成した作品を見ていないそうで、見せたかったなと思います」と残念そうな表情。「やっぱり、かっこいいな、鮎川誠。涙が出ましたね」と故人をしのんだ。また、トラウデンは「事実は小説より奇なりと言いますが、『えっ、これ現実?』という衝撃も大きいですし、自分が生きている現実を見つめ直す機会になった。窓を開ける感覚でドキュメンタリーの面白さに浸ってほしい」とアピールしていた。