妊娠30~35週は、妊娠8カ月~9カ月に相当します。
ここまでくると出産までもうひと息ともいえますが、無事に赤ちゃんが生まれてくるまでは、まだ注意しながら診ていく必要があります。
■この時期に医師が考えること
この時期に産婦人科医が考えることの中に、万一、母体や胎児に何か問題が発生した場合、「早産ではあるが、分娩させることで、母体や胎児を助けられるかどうか」ということがあります。
胎児は、生まれてくるまでは子宮の中にいるので、直接、何か治療をおこなうことが難しい環境にあります。現在の医療では、妊娠30~35週で生まれても、多くの場合、命を助けることができるようになりました。それでも、早く生まれれば生まれるほど、まだ自力で呼吸ができない可能性などのリスクがあります。
そういったリスクを考えても、母体あるいは胎児にとって妊娠の継続が危険と判断される場合には、分娩とするのがよいのかどうか、決断をしなければならない場面もあります。
■妊婦健診でチェックしていること
一般的にこの時期は、2週間ごとに妊婦健診がおこなわれます。
ここまでの妊婦健診でも同様ですが、妊婦健診の際にチェックすべきことがあります。
<母体> 妊娠合併症の有無(特に妊娠高血圧症に注意)
以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていましたが、妊娠中は「高血圧」「たんぱく尿」「浮腫(むくみ)」が生じやすくなります。特に「高血圧」は、体のあらゆる臓器や血管などに負担をかける可能性があるため、注意すべき症状です。
妊婦健診では、必ず「血圧測定」「尿検査」「浮腫の有無の確認」をします。異常が認められる場合は食事指導にカロリーや塩分制限をおこない、それでも改善しない場合には、薬による治療が必要となります。
<胎児> 超音波検査による胎児の状態の把握
「胎児の推定体重」の計測については前回ご説明しましたが、それだけでなく、羊水量の測定や臍帯血流の測定などによる「胎盤機能の評価」も重要になります。
また、この頃になると、心臓や腎臓、脳など、胎児の臓器も明確に見えるようになってきます。もし臓器に何か異常が認められる際には、出生後すぐに治療が必要かどうか、その場合はNICU(新生児集中治療室)での対応になるかかどうかなど、生まれてきたあとのことまで予測し、事前に対応を考えておくことが大切になります。
■普段と違う症状を感じたら、主治医に相談を
私の経験上の数字ではありますが、妊婦さんのうちの6~7割くらいの方は何も問題なく出産まで至り、3~4割くらいの方に、何かしら注意を要することが発生します。その中の1割弱くらいの方が特に注意して診ていくべき状態となり、時には緊急を要する対応が必要となります。
妊婦健診で産婦人科医は、何も症状がなく異常もない多くの妊婦さんを診ながら、「もしかしたら何か異常があるかもしれない」という意識を常に持って対応しています。
妊婦さんも自分で感じられる症状、たとえば「お腹が痛い」「頭痛がする」「胎動が少ない」など、自分が感じる症状についてはいつも気を配っていてほしいです。もしそういった症状がある場合には、遠慮をせずに主治医に伝えることが大切なことだといえます。
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