ジャック・ラッセル・テリアは、この犬種を作出したジョン(ジャック)・ラッセル牧師の名が犬種名に冠せられています。作出の目的はフォックス・ハウンドとともに走り、キツネを巣穴から追い出せる能力に長けた犬をつくることでした。
活発過ぎるほどにエネルギッシュで、好奇心旺盛。そんなジャック・ラッセル・テリアを迎えるには?
1.ジャック・ラッセル・テリアの歴史
原産国:イギリス(犬種が発展したのはオーストラリア)
1819年、まだ大学生であったジョン(ジャック)・ラッセル牧師は偶然に「トランプ」という名のメス犬と出会い、魅了されました。トランプはフォックス・テリアとブラック・アンド・タン・テリアのミックスのような犬で、脚はやや短く、体はホワイトで、頭部と尻尾にマーキングがあったといいます。
猟やスポーツが好きだったラッセル牧師はそのトランプを手に入れ、フォックス・ハウンドと一緒に走れるほどタフで、キツネやアナグマを巣穴から追い出せる小型の犬を作出しようと考えたのです。これがこの犬種の始まりでした。
やがてラッセル牧師が繁殖した勝ち気で活発なテリアは愛好家が増えるようになりますが、重視されたのは気質と能力。他のワーキング・テリアとの交配の他、公認犬種となるまでの間にはダックスフンドやコーギーなど他犬種との交配も行われたようで、外見にはばらつきがあったことは否めませんでした。
時が1900年代後半になると“純粋”なるジャック・ラッセル・テリアを保存するためスタンダードを作成しようと考える人たちと、あくまでも気質と能力にこだわる人たちとの間で対立と分裂が起こりました。
前者は「パーソン・ジャック・ラッセル・テリア(現パーソン・ラッセル・テリア)」と犬種名を変え、1990年にイギリスのケネル・クラブによって公認犬種となりました。一方、後者(ジャック・ラッセル・テリア)が同クラブに公認されたのは2016年と最近のことです。
それまでの間、1960年代~1970年代にかけてイギリスからオーストラリアに渡ったジャック・ラッセル・テリアが独自に改良され、今私たちが知るジャック・ラッセル・テリアとなったのです。
2.ジャック・ラッセル・テリアの特徴
前述のようにジャック・ラッセル・テリアはもともと一つの犬種であったものが二つに分かれ、言わば“兄弟”にあたるパーソン・ラッセル・テリアがいます。パーソンのほうが大柄で、脚が長く、体形はスクエアタイプなのに対して、ジャックは脚が短く長方形タイプの体形をしているという違いがありますが、両者ともテリア気質を色濃くもつ犬種であることに違いはありません。
例えるなら、両犬種ともコンパクトな体に大型犬並みのエネルギーが詰まっている犬と言っていいでしょう。
ジャック・ラッセル・テリアの容姿
ジャック・ラッセル・テリアの体高は25cm~30cm、体重は5kg~6kg程度。コンパクトで筋肉に富んだ小型犬です。耳は垂れ耳かボタン耳(耳の上部が垂れた半垂れ耳)で、表情を柔らかく見せて可愛らしさがあり、アーモンド型の眼は知性を伺わせ、ガッツのみがウリの犬ではないことを示しています。
尻尾は断耳・断尾を禁止していない国では断尾された犬もいますが、いずれであっても尻尾を高く掲げた姿は自信に溢れているかのよう。毛色はホワイトの地色にブラックまたはタンのマーキングがありますが、これは作出の過程でキツネと間違って撃たれないよう体はホワイトであることが条件とされたためです。
そして、被毛はワイリーで、スムース、ラフ、ブロークンの3種があり、その毛質を維持するためにはプラッキング(不要な毛を抜き取るトリミング技法)が必要とされています。
ジャック・ラッセル・テリアの性格・気質
ジャック・ラッセル・テリアは陽気で、エネルギッシュであり、好奇心も旺盛なことからいつも何か楽しいことを探しているようなところがあります。精神的な刺激を必要とするタイプで、じっとしていることに飽きるといたずらを始めるかもしれません。
恐れを知らず、勇敢でもあり、それが時にケンカに発展してしまう犬もいるのはジャック・ラッセル・テリアらしいところです。それだけ勝ち気な気質を大事に繁殖がなされてきましたが、昨今ではより人と暮らしやすいよう、性格の柔らかい犬もいます。
ただし、個体差もあり、この犬種はこういう性格をしていると断定できるわけではありません。最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されましたが、一方では、犬種特性は10のグループに分けられるという研究報告もあります。
つまりは、犬種としての特性はあるとしても、行動や性格は個々に違いがあるということでしょう。そう考えるならば、代々受け継がれたジャック・ラッセル・テリアの良さをもちつつ、より望ましい性格の犬に育つかは、飼い主さんの育て方や接し方、環境、経験などが大きく関係するということです。
3.ジャック・ラッセル・テリアを迎える方法
ジャック・ラッセル・テリアを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。それを理解した上で、入手先を決めましょう。
「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者は避けたほうがいいでしょう。
2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後(マイクロチップを装着済の犬を譲り受けた場合も同じ)は、飼い主さん自身の情報へと変更登録する必要があります。
詳しくはこちら⇒環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」
ジャック・ラッセル・テリアの入手先
入手先1 ペットショップで探す
ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。
子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。
入手先2 ブリーダーから購入する
真摯なブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。
予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。
入手先3 里親になる
行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。
入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、家族として迎え入れるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。
犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。
ジャック・ラッセル・テリアと暮らしたいと思った時、保護犬を迎えるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。
ジャック・ラッセル・テリアを迎えるときの費用相場は?
現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。
その結果、ジャック・ラッセル・テリアを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものまで含みます)。
ジャック・ラッセル・テリアを迎える場合の費用の目安
項目 | 費用の目安 |
---|---|
ジャック・ラッセル・テリアの子犬の価格 | 25万円~ |
狂犬病予防注射 | 3,000円~5,000円程度 |
注射済票 | 500円程度 |
犬の登録料 | 3,000円 |
混合ワクチン(5種~10種) | 5,000円~1万円程度 |
犬用ベッド | 3,000円~8,000円程度 |
サークル・ケージ | 7,000円~3万円程度 |
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 | 4,000円~1万円程度 |
トイレ・トイレシート類 | 3,000円~8,000円程度 |
ブラシ・コーム・爪切り類 | 3,000円~8,000円程度 |
首輪・リード類 | 4,000円~1万5,000円程度 |
おもちゃ類 | 1,000円~3,000円程度 |
合計 | およそ4万円~10万円程度+子犬の価格 |
※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を迎えてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※2022年6月より環境省管轄の下に新たに始まった「犬と猫のマイクロチップ情報登録」。狂犬病予防法の「特例(ワンストップサービス)」に参加している市区町村の場合は、この新登録制度にマイクロチップ情報を登録すると、同時に市区町村にも情報が通知され、これをもって狂犬病予防法における登録も済み、マイクロチップが鑑札と見なされます(ただし、別途登録料は必要)。
詳しくはこちら⇒環境省「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録」