アニメーション化が決定した「PLUTO」
世界最大級の動画配信サービスを提供する「ネットフリックス(Netflix)」が、このほど人気マンガ「PLUTO」をアニメーションシリーズ化し、2023年に独占配信することを発表した。
「20 世紀少年」「YAWARA!」「MASTER キートン」(脚本:勝鹿北星・長崎尚志)など数々のヒット作を生み出している鬼才・浦沢直樹が漫画の父と称される手塚治虫が生み出した「鉄腕アトム」の一篇「地上最大のロボット」(1964年)を原案に、長年作品を共につくってきた長崎尚志をプロデューサーに迎え、葛藤しながら描き上げた傑作「PLUTO」(2003年)。人間と高性能ロボットが完全に共生する近未来で起こる上質なサスペンスドラマは、手塚治虫文化賞マンガ大賞をはじめ、2011年アングレーム国際漫画フェスティバルにてインタージェネレーション賞を、そのほかACBDアジア賞を受賞するなど国内外高い評価を得た。
2015年には舞台化もされ、2018年には好評につき再演をはたし、日本はもちろん、イギリス、オランダ・ベルギーと欧州ツアーも敢行された。多くのファンに映像化を待ち望まれていた作品がついにアニメとして表現される。
誕生から20年となる「PLUTO」がアニメ化されるにあたり、原作者の浦沢直樹は「今回のアニメ化に挑むスタッフの皆さんの勇気に心から拍手を送るとともに、新たな『心の作品』の誕生に心おどっています。いまこそ手塚治虫さんのメッセージが世界中に届きますように」と自らの創作時をふり返りながら、世界へ「PLUTO」を届けることに期待を寄せた。
さらに原作プロデュースを手がけた長崎尚志は「『PLUTO』はその手塚哲学を受け継ぎ、ただ反戦を訴えるのではなく、そこには痛みがともなうこと……それでも平和しかないということを世に問いたい作品なのだ」と物語に込められた想いに触れた。
そして、父・手塚治虫の意思を引継ぎ本作の監修を務める手塚眞氏は「これは新しい浦沢アニメであると同時に、新しい手塚アニメでもある。アニメの進化形をどのように見せてくれるか、とても楽しみだ」とアニメの新たな1ページに期待を寄せた。
アニメ化にあたり、制作プロデュースをジェンコが、アニメーション制作をスタジオ M2が担当。映画『この世界の片隅に』で国内興行収入27億円を記録し、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞や第41回アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門審査員賞など数々の映画賞に輝いた、企画・プロデューサー陣が再集結。エグゼクティブプロデューサーとして真木太郎、丸山正雄が名を連ねる。真木太郎は(株)ジェンコを創設以降、プロデューサーとして25年に渡り日本のアニメビジネス全体を牽引してきてきた人物。「PLUTO」についても「鉄腕アトム」同様、日本アニメ史に残る1作だと確信している。
そして丸山正雄は、かつて手塚治虫が設立した(株)虫プロダクションにてキャリアをスタートさせ、その後マッド・ハウス(「ワンパンマン」「ちはやふる」)や MAPPA(「呪術廻戦」「坂道のアポロン」)など業界屈指のスタジオを設立し、これまでの浦沢直樹原作のアニメ化作品のプロデューサーを務めてきた人物。手塚治虫と浦沢直樹、2大クリエイターの才気に間近で触れてきた丸山が原作の魅力を120パーセント引き出す。
あわせて、本作の制作決定PVも公開。物語の主人公であるユーロポールのロボット捜査官・ゲジヒトと、彼が追うある事件に関わるアトムとウランという2人のロボットも登場。いったいどのようなドラマが描かれるのか期待が高まる映像となっている。そして、映像に登場したキャラクターたちを演じるキャストも明らかに。ゲジヒト役にはスパイ映画の金字塔『007』シリーズや映画『ナイブズ・アウト』シリーズで好演を博したダニエル・クレイグの吹き替えを担当している藤真秀が、アトム役には「SHAMAN KING」(2021)の主人公・麻倉葉や「けいおん」の秋山澪など幅広い演技経験を持つ日笠陽子が、そしてウラン役は「マクロス Δ」にてヒロインのフレイア・ヴィオンを演じ、今年歌手活動5周年を迎えた鈴木みのりが抜てきされた。
さらに、3月25日(土)と26日(日)に東京ビッグサイトにて開催される「AnimeJapan 2023」に原作者の浦沢直樹が初参加することが決定! 3月25日(土)の「BLUE STAGE」にて実施の「ネトフリアニメ スペシャルステージ」に浦沢直樹をはじめ、手塚眞、日笠陽子、鈴木みのりが登壇。アニメ化解禁後初となる、公の場にて浦沢直樹の口から何が語られるのか?また、「PLUTO」以外の2023年配信開始となる期待の新作発表も予定だ。
※「ステージ応募権付入場券 」の販売は 2月23日(木・祝)まで
手塚治虫から浦沢直樹、漫画というエンターテインメントの中で読者へ問われたのは<争いへのアンチテーゼ>とも言える。争いの先にある勝利とその虚しさ、アニメーション「PLUTO」は混迷の時代である今、私たちが刮目すべき作品と言えるだろう。