ハリー・スタイルズ Photo: Rob Latour/Shutterstock
つい先日開催された世界最大の音楽式典「第65回グラミー賞授賞式®」で見事2部門に輝いたハリー・スタイルズ。アイドル出身のハリーが成しとげた偉業に多くのファンが喜ぶ中、彼の受賞スピーチが一部の間で物議をかもしている。
ハリーは日本時間2月6日(月)、米カリフォルニア州ロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナにて開催された「第65回グラミー賞授賞式®」で、「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」と「年間最優秀アルバム」を受賞。「年間最優秀アルバム」は、主要4部門のひとつであり、特に注目を集める賞であること、また同部門にはビヨンセやアデルら大物歌姫がノミネートされていたことから、ハリーの受賞は驚きを持って受け止められた。
アルバム「Harry's House」が「年間最優秀アルバム」に選ばれたハリーは壇上にあがると、同部門にノミネートされた全てのアーティストからインスピレーションを受けたと告白するなど、喜びいっぱいのスピーチを披露した。
しかし、彼がスピーチの終盤に述べたある一言が物議をかもすこととなった。それは「今回のことは私のような人間にはめったに起こらないこと」という言葉だ。
米HuffPostによれば、このハリーの発言が、一部視聴者から反感を買ってしまったという。実際、グラミー賞において、白人アーティストが受賞するのは非常によくあることだが、その一方で、黒人やラテン系、アジア系のアーティストにとっては、主要部門の獲得は高い壁であることは事実だ。人種というくくりで見るならばもっとも受賞しやすいカテゴリーにいるはずのハリーがこの言葉を発したことで困惑が広がったのだ。
現に本グラミー賞では、プエルトリコ出身の人気ラッパー バッド・バニーのアルバム「Un Verano Sin Ti」が「年間最優秀アルバム」にノミネートされたが、なんとスペイン語のアルバムがノミネートされるのは今回が初めてのことであった。また、ビヨンセ(※)は今グラミー賞でキャリア通算32回のグラミーを獲得。グラミー史上最多受賞記録を更新するという快挙を成しとげたものの、いまだに「年間最優秀アルバム」は受賞していない。
※第41回グラミー賞(1999年)のローリン・ヒル(「ミスエデュケーション」)以来、「年間最優秀アルバム」を受賞した黒人女性アーティストはいない。
ちなみにハリーのファンの多くは「私のような人間」という彼の発言は「アイドルグループとしてキャリアをスタートさせた人間」という意味だと捉えており、特に問題になるようなものではないと考えているようだ。しかし、白人優位とされるグラミー賞において白人男性であるハリーが発したコメントは、彼が意図した以上の意味でとらえられ物議をかもしてしまったようだ。
この件について、元ナショナル・パブリック・ラジオのジャーナリストであるサム・サンダース氏はツイッターにて「『今回のことは私のような人間にはめったに起こらない』は、これまでの授賞式で発せられた発言の中でもっとも白人特権的なことだ」と投稿。ハリーの発言に否定的な意見を述べている。
また、視聴者からは以下のようなコメントが寄せられている。
「あの白人の男の子の『今回のことは私のような人間にはめったに起こらない』という意味を理解しようとしているんだけど???」
「クィアな美学を利用して、アルバムを売り、黒人女性をおさえて『年間最優秀アルバム』を獲った白人男性が『今回のことは私のような人間にはめったに起こらない』と言うとは」
「“このようなことは私のような人間にはめったに起こらない”-白人男性はこれまでに何度も『年間最優秀アルバム』を獲っている」
「ハリー・スタイルズが、彼のような人はめったに勝てないと言っている一方で、プエルトリコではベニート(バッド・バニーのこと)がグラミー賞で初の『年間最優秀アルバム』を受賞したプエルトリコ人になるのを応援するため、ウォッチパーティーが開かれてるよ」
「ベニートがプエルトリコ人として(初の)『年間最優秀アルバム』の受賞者に、ビヨンセが1999年以来、初めての黒人女性受賞者になったかもしれない場所で、ハリー・スタイルズが『このようなことは私のような人間にはめったに起こらない』と言うのは、普通じゃない。彼にはあのスピーチのとき、どのアイデンティティでものを言っていたのか説明してもらいたいね」