そして悠依は、自身が勤める美容室に客として来た女性(香里奈)が、名前は違ったが莉桜であった可能性に気がつき、魚住に連絡して防犯カメラをもう一度確認する。そこには、莉桜らしき女性が映っていた。悠依の証言をもとに捜査を進めると、殺された涼香が頻繁に連絡を取っていたもうひとつの番号である「石岡エステート」の営業用の携帯電話は、莉桜のものであることが明らかに。莉桜はホステスとして働いていたときに、石岡エステート創業者・石岡清治郎(長谷川初範)に過去の事情は聞かないから一緒になってほしいと頼まれ、内縁の妻となって「石岡美也子」を名乗っていた。事実婚にあたって相続に関する権利の一切を放棄した莉桜は、その代わりいつでも自由にさせてほしいと要求。実際に捜査員が石岡宅に向かうと、2週間ほど帰っておらず、行方不明状態だった。

 直木が行方不明だということを知り、直木の母親(長野里美)から警察に問い合わせが入る。悠依に直接会いたいのだという。母親は「どうしても直木の居場所が知りたい」と行方の手がかりを悠依に尋ね、直木が里子になる前の過去について話し始める。直木の弟・拓海は血液の病気で、骨髄移植が必要だったが、適合率がもっとも高いのが直木だった。そのため直木は13歳までに2回移植手術に協力していた。しかし、難病である弟の看病に疲弊した家庭は崩壊。父親はストレスから直木に暴力をふるうようになり、母親は次第に直木を“拓海のドナー”としてしか見なくなっていった。その結果、直木は自ら児童相談所に相談することを決め、鳥野家を離れたのだった。

 母親が直木の居場所を知りたいのは、あくまで“ドナー”として直木が必要だったからだった。直木は鳥野家を離れてからも母親にだけは居場所を知らせ続けたといい、拓海が17歳のときに再び病気が再発したときも、母親からの連絡を受けて移植に応じたという。直木に連絡をしたのがその時だけという母親に愕然とした悠依は、「直木はもう亡くなっているかもしれません」と告げる。だが、それを聞いた母親が真っ先に口にしたのは「拓海がまた再発したらどうしよう」だった。直木の心配など一切しない母親が帰ったあと、その場でずっと話を聞いていた直木に向けて、悠依はありったけの思いを伝える。「今、私にはあなたの声は聞こえない。でも私は伝えられる」「私はあなたのことが好きです。この世界で一番大好きです」「何回でも言う。私はあなたが好き。あなたじゃないとダメ」「私は伝えられるから、言う。返事なんかいらない。あなたが大好きです」という悠依の心からの言葉に、家族からの愛情を受けられなかった直木は号泣するのだった――。

 思い合う2人の愛に泣かされた第3話だったが、気になるのは幽霊となった直木の“体”の行方、そして事件の犯人。疑いの目を向けられている1人が、直木がシェフを務めている「洋食屋ハチドリ」のオーナーで、直木や悠依に「英介さん」と慕われている池澤英介(荒川良々)だ。里親の勝(春風亭昇太)を通じて知り合った人物だが、直木をシェフとして採用する際に即答だったり、悠依が莉桜と待ち合わせしているカフェに都合よく現れたり、何かとタイミングがよすぎる。「何かあるのでは? 荒川良々さんだし」「荒川良々さんがただのいい人でちょっとしか出ないとかおかしい」など、ひとクセある役を演じてきた荒川の名バイプレイヤーっぷりが、怪しさに拍車をかけている。