日本とフランスの文化の違いやパリジェンヌのファッションを、TikTokやInstagramなどのSNSで幅広く発信し、注目を集める日本在住のクララ・ブランさん。思わず笑顔になってしまう投稿の数々は、自然体の姿を大切にするパリジェンヌそのもの。
13歳のときに日本の魅力を知ったクララさんは、現在、日本とフランスの両方の美しさを表現したジュエリーブランド『Atelier Rouge』のプロデュースをおこなっています。日本とフランスのそれぞれのユニークさ、そして、クララさんがもっとも大切だという心と体のセルフケアについて伺いました。
クララ・ブラン
広告代理店『monopo Tokyo』head of social departement/モデル/ジュエリーブランド『Atelier Rouge』プロデューサー。パリで生まれ、現在は日本に在住。13歳のときに、パリでの『Yohji Yamamoto』 のショーを見たことで感動を受け、そこから日本への興味が生まれ来日。日本文化を世界に広げる夢を叶えるため、パリ・ロンドン・東京ではモデル兼SNSインフルエンサーとしても活動。パリでは、『Louis Vuitton 』のヘッドクォーターに入社し、デジタルコミュニケーション部でソーシャル、Webなどのコンテンツ制作のプロジェクトマネージメントを担当していた実績を活かし、現在広告代理店ではビジネスプロデューサーを担当。
日本の“描かない美しさ”に惹かれて
―3年前に日本に移住したクララさん。日本に興味を持ったきっかけは?
クララ・ブランさん(以下、敬称略):13歳のころ、パリのファッションウィークで『Yohji Yamamoto』のショーを観たことがきっかけです。フランスのブランドは、トレンドをキャッチしたものが多かったのですが、『Yohji Yamamoto』だけは本当に独特な世界観を持っていて。
それからは、本屋の日本コーナーにある本は全部読んだし、ドイツ語の授業のプレゼンテーションなのに、なぜか毎回日本のことを絡めて紹介したり(笑)。とにかく日本に行ってみたくて。当時通っていた大学は日本と交換留学のパートナーシップを結んでいなかったのですが、「いつかじゃなくて今でしょ!」と先生のお尻を叩くようにして、大学初めての交換留学に漕ぎ着けました!
―先生をも動かしてしまう!(笑)すごい行動力ですね。
クララ:何か欲しいものがあるときは、一生懸命頑張ります!昔からそういうところがあるかもしれないです(笑)。
―そこまでしてクララさんを惹きつける日本の魅力ってどんなところなのでしょうか?
クララ:日本の好きなところはたくさんあってまとめにくいのですが、私は、「源氏物語」や「枕草子」などの古典を読んで、平安の日本のファッションや文化に感銘を受けました。
特に源氏物語が大好きです。「源氏物語」の1番おもしろいところは、「源氏物語」の主人公・光源氏が個人的にフランスのルイ14世に似ていると感じていて、国も時代も全く違うのに人間ってそんなに変わらないんだと感動しましたね。あとは、物語の中にでてくるファッションやダンス、和歌もヴェルサイユで生まれたアートやファッションのトレンドに近いと感じました。
―時代は違いますが、「源氏物語」の恋愛の描き方もおもしろいところですよね。
クララ:そうなんです。フランスでは舞踏会やパーティーなど、オープンな場での出会いがほとんどですが、「源氏物語」では手紙で和歌を送りあったり、結婚までお互いの顔が分からなかったり。そんなところも本当におもしろいですよね。
フランスにはほとんどない敬語の考え方
―他にも日本で仕事をするなかで感じる、フランスとのギャップはありますか?
クララ:“上下関係”という考え方ですかね。フランスにはそもそもこういった概念があまりないし、敬語もほとんど存在しないんですよ。
一応、敬語と似たような考え方をするものとして、二人称「あなた」を指すときに、「tu(テュ)」を使うか「vous(ヴ)」を使うかの違いがあります。普段は「tu」を使うのですが、例えば、会社で1番偉い人で、年齢も「おばあさま」と呼べるくらい年上の方には「vous」を使うことがあります。
でも、立場がすごく上の方でも年齢が近ければ「vous」を使いません。ということは、敬語を使う機会はほとんどないってことですね(笑)。
―フランス語は職場でもカジュアルな表現を使うのですね!
クララ:敬語を使っていても関係が親密なことって日本ではあると思うのですが、フランス語で「vous」を使ってしまうとその人とすごく距離を置く表現になってしまうんです。例えば、喧嘩するときにパートナーに対して急に「vous」を使い始めたらめちゃくちゃ怖いみたいな(笑)。
今は日本の会社で働いているので、敬語を使っていますし、敬語はとても美しいと思っています。
文化の架け橋になる『Atelier Rouge』
―クララさんがプロデュースしているジュエリーブランド『Atelier Rouge(アトリエルージュ)』についてもお聞きしたいです!本当にすてきなジュエリーばかりですね。
クララ:『Atelier Rouge』は、国や地域の文化をつなげて尊重し合うことを大切にしたジュエリーブランドです。いま出しているのが「ジャポニズム」と「サンボリズム(象徴主義)」の2つのコレクション。
ヨーロッパのアーティストが日本の浮世絵などからインスピレーションを受けて描いた作品を、今度は私がそこからインスピレーションを得て、日本の職人さんが形にしていく。そういう、日本とフランスのインスピレーションの掛け合わせを楽しんでもらいたいです。
左が「ジャポニズム」、右が「サンボリズム」のピアスとイヤリング
―クララさんが特に気に入っているジュエリーはありますか?
クララ:うーん……、全部大好き(笑)。すべて岐阜県の美濃焼で作っていて、職人さんの手作業なので、同じ柄でもよく見ると1つ1つニュアンスが違うんです。そういった職人さんのこだわりが詰まった作品を1番肌に近いところで身につけられることがすごく幸せです。
洋服も大好きだけど、ジュエリーはもっと長い期間、毎日身につけるものだと思います。いいものであれば子どもに引き継ぐこともできるし、たとえ傷がついてもそれは毎日私が楽しく生きてきた証だから。傷も物語の一つですよね。長く楽しんでもらえたらうれしいです。
―ジュエリーに限らず、日本とフランスのファッションの違いや考え方はありますか?
クララ:パリジェンヌには、「effortless(エフォートレス)」つまり、がんばりすぎず自然体な姿が美しいという考え方があります。パリジェンヌって、周りの目をまったく気にしないんですよ。どう思われるかは関係なくて、自分がよければそれでいいんです。
自分の好きな服やメイク、姿で毎日を楽しむことが大切だと思います。
体型ではなく魅力で勝負する。モデル生活を経てたどりついた食習慣
クララさんが身につけるのは、「サンボリズム」のグスタフ・クリムトが描いた「接吻」をモチーフにつくられた「慈愛 JIAI」という名のピアス。
―クララさんにとって生活の中で欠かせないことは何ですか?
クララ:自分を甘やかす時間は、本当に大切です。好きなのは、朝の時間。起きてすぐに仕事をはじめるのではなくて、動画編集をしたり、友達にヴォイスメッセージ送ったり、本を読んだり、音楽を聴いたり、お香を焚いたり…自分だけの時間を確保するようにしています。時計も見たくないから、始業時間にアラームをセット。
とにかく心と体の健康が大切なので、仕事前にヨガやダンスに通っています。1番のご褒美は週に1度の指圧マッサージですね。日曜日の夜に行って、帰ってそのまま寝るのが本当に最高です。
―クララさんのYoutubeで食習慣についてお話されている動画を拝見しました。モデル業をきっかけに、激しい減量で心身ともにダウンしてしまった時期があったのですね。
クララ:そうなんです。パリとロンドンで、フルタイムでモデルをやっていたときが、とても辛かったです。特にパリのモデル界はかなり厳しくて。すごく痩せていたけど、頭もフラフラするし全然幸せじゃなかったんです。人生の目的は幸せになることなのに、不幸になってまで何をやっているんだろう、と思いました。
クララ:それからは、痩せることを意識しないようにして、体にいいものを摂るようになりました。家で食べる日は、大好きな野菜を使った食事をして、外で食べる日は特に考えずに、その時注文したい食べ物を食べています。家で8割、外食で2割くらいがストレスなく、健康的でいられるいいバランスです。
現在は専業でモデルをしているわけではありませんが、例え体型では選ばれなくても、自分の魅力で勝負しようと。そう思うようになったら、すごく気持ちが楽になりました。
ミスをしてしまった日は、たっぷり自分を甘やかす
―自分の魅力で勝負する。素敵な考え方ですね。
クララ:体型のことに限らず、よく「自信をつけるにはどうしたらいいですか?」と質問されることが多くて。答えは2つあると思っています。
一つは、誇りに思えるものを持つことです。仕事でも趣味でも何でもよくて、例えば大好きなアイドル。「これについては私が詳しい!」と思えるものを持つことは、周りの目に流されない強さにつながると思います。
二つ目は、前向きな言葉を自分にかけること。私は毎朝植物に「今日もかわいいじゃん。いい色してる!」と声を掛けるようにしています。変な人だと思われるかもしれないですが、結構気分が上がるんですよ。ネガティブな言葉が耳に入ると、どんどんネガティブな思考に引っ張られてしまうので、朝からポジティブな言葉を聞くようにするのがおすすめです。
―ネガティブ思考が止まらなくなってしまったとき、クララさんはどうしていますか?
クララ:なるべく自分を責めないように心掛けますね。今日はミスっちゃったけど、自分が人としてダメなわけではない。明日はいい1日になるから、明日カバーすればいいやって。落ち込むときは、たくさんキャンドルを焚いて、バスソルトも全部入れる勢い(笑)。とにかく贅沢しちゃいましょう。
あとは、フランス人は嫌なことがあったとき、自分の中に溜め込まず外に出したほうがいいという考え方があります。ヨーロッパではボイスメッセージでやりとりすることが多いので、友人宛にボイスメッセージでその日あった嫌なことをたくさん話してスッキリするのもいい手ですよ。
■ジュエリーブランド
Atelier Rouge(アトリエルージュ)
※詳細情報は、SNSなどでご確認ください。
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心と体のケアは何よりも大切――。パリジェンヌのファッションが「エフォートレス」であるように、体型維持や仕事での失敗に対しても、がんばりすぎないことが健やかに、そして幸せに過ごすポイントのようです。落ち込んだ日にはクララさんのように「今日はいっか!また明日がんばろう」と自分に優しく声をかけてみてくださいね。