家で映画や動画を楽しむことが随分日常的になりました。さまざまな映像作品を鑑賞する時間はおうち時間の定番の過ごし方になっています。でも、映画や連続ドラマだと少し長いから忙しくなるとなかなか見れない、という方もいるのでは?そんなときには短時間でみれるショートフィルムがおすすめです!

「水曜夜はわたし時間」を合言葉に、毎週水曜日に1本、ショートフィルムを配信しているメディア『ブリリア ショートショートシアター オンライン(BSSTO)』。アカデミー賞公認の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)に集まった世界中の作品をオンライン上で公開しており、公開から3ヵ月間、常時約12作品を楽しむことができます。

今回は、SSFF & ASIA実行委員長の東野さんにお話を伺い、ショートフィルムの魅力や楽しみ方、『ブリリア ショートショートシアター オンライン(BSSTO)』で公開されている作品についてご紹介いたします。短時間で気軽に楽しめるショートフィルムを通して、日常のひと時に安らぎを与えてくれる作品と出会ってみてはいかがでしょうか。

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東野 正剛 (とうの・せいごう)

SSFF & ASIA フェスティバルディレクター。

1968年生まれ。カリフォルニア州ペッパーダイン大でジャーナリズムを専攻。卒業後、渡仏。3年間をクレルモン・フェラン市に滞在する。以後、ロサンゼルスでショートフィルムの制作、ハリウッド映画の製作に携わる。2000年からは、毎年6月に原宿表参道で開催される「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の事務局長として参加。現在は、同映画祭のフェスティバルディレクター。

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日本の作品を世界に発信!変わりゆくショートフィルムの世界

1999年に始まった国際短編映画祭である、『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』。コンペ式の米国アカデミー賞公認・アジア最大級の短編映画祭です。なんと、毎年5000本以上の作品応募があるのだとか!

「当初は海外の作品を日本で紹介することが多かったです。しかし今では、国内の作品を世界に紹介、発信する役割を併せ持つようになりました。また、我々が資金集めを行い、短編映画の制作をして、若手クリエイターの今後の発展に繋がるチャンスを得られる機会を作っています、過去には中学生の作品が入賞したこともありましたよ」と東野さん。

立ち上げ当初より掲げている4つのコンセプトは、「日本と世界とを結ぶ海外との文化交流事業」「未来の映画人発掘または学生・若手育成」「東京のみならず、地方数ヵ所での開催による地域活性化」「商業用素材となり得るコンテンツとしてビジネスの側面を持たせること」これらは『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』の基盤として現在の活動にも活かされているのだそう。

 

若手の挑戦、個性が光るショートフィルムの魅力

映画祭で監督に贈られる豪華なトロフィーたち

 

東野さんは学生時代から、ショートフィルムの制作を行い、留学先のロサンゼルスではショートフィルムを観る機会が多く、映画祭へもよく足を運んでいたといいます。たまたま選んだ留学先が世界最大級の国際短編映画祭の開催地、フランスのクレルモン・フェランであったことから、自身とショートフィルムの縁を感じるようになったそうです。

「長編映画のように、誰かがお金を出すプロジェクトの場合、出資者側の意向が生まれるため、監督といえども自由が利きにくいです。しかし、短編は低予算で、自らが自由に作ることができます。学生や若手が自分のやりたいことに挑戦しやすいため、自分の可能性やスタイルを発見できるのです。自分の感性のままに個性的なものが作られると『ぶっ飛んでいるな』『他にはない感覚を持っているな』と、より一層注目してもらえる。それがおもしろい」とショートフィルムの魅力について話す東野さん。

2019年の映画祭の様子。代表の別所哲也さんと映画祭アンバサダーのLiLiCoさん

 

そもそもショートフィルムとは、尺や撮り方など、オフィシャルに決められているものはなく、それぞれの映画祭や各開催団体で指定した尺の作品を上映しているのだそう。『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』の場合は、エンドクレジット含め25分以内の作品であることを前提としています。

「尺やジャンル、撮影方法の規定は特にないですが、短ければ短いほどショートフィルムっぽさがあるのでは。特に規定がなく、自由に撮影できることから、個性的な作品もとても多いです。短いからこそ、無駄な部分を的確に削ぎ落とし、伝えたいことを明確に表現する必要がある。プロフェッショナルであっても腕が試されるのがショートフィルムなんです」とのこと。

また、欧米に比べて日本ではショートフィルムに触れる機会がさほど多くないように感じますが、世界的に見てもショートフィルムだけで生計を立てている人はごくわずか。しかし、欧米では、映画学校に通う生徒たちが昔から短編映画を作る文化があったため、ショートフィルムを撮ることは一種のステータスとなっている部分もあるそうです。

 

一生に一度、忘れられない映画と出会う

2019年の映画祭オープニングセレモニーの様子

 

そんなショートフィルムの世界に魅了されてきた東野さんが思う、“いい映画”とはどんな作品なのでしょうか?「自分の知らない世界を知ることができるもの。教養的な面でも、ビジュアル的な面でも、新しい情報を得られる作品ですね。また、映画を見終わった後に、『このキャラクターたちとずっと一緒にいたい』『彼らはこれからどうなっていくのだろう』と、キャラクターの想像をかき立ててくれるような作品も好きです」。

ショートフィルムには、起承転結がなく観客にエンディングを委ねる作品も多数。「短いからこそ答えを想像で補えるのがおもしろい。また、映画が始まる前もタイトルとかだけで物語を想像できたら、素晴らしいですよね」と話す東野さん。

ショートフィルムは長編と違って時間が短く気軽に観れるのが大きな特徴であり、そこには監督のこだわりや深いストーリーがぎっしり詰まっています。気軽に外出するのが難しい昨今ですが、お家で簡単に知らない世界を見せてくれるという面では、ショートフィルムが今後の新しい観賞スタイルをもたらしてくれそうですね。

 

クスッと笑えるコメディからゾワっと震えるサスペンスまで。おすすめ7作品をご紹介!

『ブリリア ショートショートシアター オンライン(BSSTO)』で公開されている4作品と、YouTubeでもご覧いただける3作品をご紹介いたします。心温まる作品から、ちょっぴりゾワっとする作品まで、個性豊かなものが勢揃い!どれも20分程度で観れるものばかりですので、気軽にトライしてみてくださいね。

あまりに微妙な誕生日プレゼントから物語が動き出す!?『微妙なプレゼント』

誕生日になんとも『微妙なプレゼント』を貰った主人公マルティン。そのプレゼントがあまりにも微妙だったことから、自分が友人からどんな風に見られているのかを気にするように。そんな微妙なプレゼントから始まる微妙な出来事の結末とは…?シュールな映像と、マルティンの何度も見せる微妙な表情をお楽しみください!

  • タイトル:『微妙なプレゼント』
  • 製作国:アルゼンチン
  • ジャンル:コメディ
  • 上映時間:16:29

 

果たしてこれはホラー映画か…?ゾッとする世界観が魅力の『ザ・ゲスト』

夫のフィリップとともに新しい街に引っ越してきた主人公アナ。言葉も文化も全く違う場所で、1人孤独を感じていた。ある日、生まれて間もない子どもと夫の帰りを待っていると、「あなたの夫にパーティーへ招かれた」と言い訪れて来る、見知らぬ多くのゲストたち。彼女が家に入れたゲストたちは一体誰なのか。結末のヒントが映像に隠されているのではないか、と、何度も見返したくなる映画です。

  • タイトル:『ザ・ゲスト』
  • 製作国:オーストラリア
  • ジャンル:ドラマ
  • 上映時間:10:00

 

誰しもが持つ懐かしい故郷と、そこに繋がる東京の旅へ。体験型ショートフィルム『HOME AWAY FROM HOME』

日本人の女性・アキコとともに、タクシー運転手、少女、バックパッカーがそれぞれの故郷であるアフリカ、ヨーロッパ、アジアと繋がった幻想的な東京の旅をする。一方、パリの作家は、東京で出会ったアキコを思い出し執筆を始めていた。幻想的な世界を描いた映像と、物語のキーとなるアキコの存在。未来的でもあり、なんだか昔懐かしいような、時間、場所、世界を飛び交う体験型の作品です。

  • タイトル:『HOME AWAY FROM HOME』
  • 製作国:日本
  • ジャンル:ドラマ
  • 上映時間:12:36

 

あなたの近くのこんな人、実は『乗り遅れた旅人』かも

横浜から出港した船に乗り遅れた旅人。日本語も通じず、荷物もない。携帯の充電もない旅人はある少女に出会う。少女に連れて行かれた店で、ある事実を知った旅人は、異国の地で奮闘する。文化交流、変わりゆく未来、そこで生きる人々との関わり、さまざまな種類の強さや温かさを教えてくれる、世代を問わず楽しめる作品です。

  • タイトル:『乗り遅れた旅人』
  • 製作国:日本
  • ジャンル:ドラマ
  • 上映時間:17:50

 

ベンが教えてくれるのは、私たちのまだ見ぬTokyo『シェイクスピア・イン・トーキョー』

兄の仕事に同行して初来日したダウン症のベン。自分をかまってくれなくなる兄から逃げるように、1人で東京探検に出かける。シェイクスピアの知識と、ベンの即興イラスト、そして持ち前のユーモアで、出会った人々の心を掴んでいく。彼の東京探検はどのようにして終わりを告げるのか。ベンの探検を通して、今まで知らなかった東京の素敵な部分を見つけたり、再確認したり。ぜひあなたもベンと一緒に東京を歩いてみてはいかがですか?

  • タイトル:『シェイクスピア・イン・トーキョー』
  • 製作国:日本
  • ジャンル:フィクション
  • 上映時間:20:34

 

観て、聞いて、ジーンとして…。1本で心揺さぶられる『ゴーストの美味しいレシピ』

ゴーストが住み着いたパン屋にある決意を持ってやって来たアニー。彼女は、完璧なケーキを作るべく、連日連夜ケーキを作り続ける。一体彼女はどうしてゴーストの店でケーキを作り続けるのだろうか?最後にはじんわりと心が暖かくなるストーリー。登場するたくさんのかわいいケーキも見どころです!

  • タイトル:『ゴーストの美味しいレシピ』
  • 配信期間:7月末まで
  • 製作国:アメリカ
  • ジャンル:ドラマ
  • 上映時間:15:00

 

こんな雑貨屋があったなら…?異様な空間に魅了される『不思議な雑貨屋さん』

ある夕暮れ時、1人の男性は、訪れた雑貨屋で店主に何やら不思議なお願い事をする。その雑貨屋には古道具が並び、店主は次々とそれらをその男に手渡していく。男性が探しているものは何なのか、果たして見つけることができるのか。主人公が探しているものを知ったとき、主人公が愛おしくなるような、いろんな解釈と想像を与えてくれる作品です。

  • タイトル:『不思議な雑貨屋さん』
  • 配信期間:7月末まで
  • 製作国:フランス
  • ジャンル:ドラマ
  • 上映時間:08:06

 

どの作品も『ブリリア ショートショートシアター オンライン』の選定基準として、重きを置いている「見終わった後に誰かに語りたくなる」作品ばかりです。ショートフィルムならではの世界で、観て考えて想像する、とっておきの作品に出会ってみてください。

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