フランスビールの名産地!ノールのビール料理『Carbonade flammande <カルボナード・フラマンド>』

こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。2023年のはじめに旅するエリアは、フランスの最北部に位置する「ノール」。フランス語で「Nord」と綴り、「北」という意味なのです。英語の「North」とも似ていますよね。現在は、ピカルディ地方等と合併し、「オー・ド・フランス」と呼ばれています。

今回は、フランスビールの名産地・ノールならではのビールを使った煮込み料理「Carbonade flammande<カルボナード・フラマンド>」のレシピをご紹介。荘厳かつエレガントな建築物にうっとりしてしまう、ノールの旅へお連れします。

 

寒さ厳しい、フランス最北の街・リール

ノールの中心都市リールにあるグラン・プラス。フランス語で「大広場」の意味。ベルギーの首都ブリュッセルのものが有名

ノールはベルギー国境に隣接しており、歴史的にもベルギー北部やオランダ南部と合わせて「フランドル」と呼ばれていました。四方をエレガントな建物で囲まれた大広場や、レンガをちりばめたドールハウスのような建物など、街並にもベルギーやオランダらしさが散見されます。

赤や黄土色のレンガで造られた、フランドルらしい個性を持った建物が並ぶリールの旧市街

パリ、リヨン、マルセイユに次ぐフランス第4の都市であるリールは、パリから訪れると一段と寒さを感じる北部最大の都市です。風情あるフランドル風の街並と都会的な要素がぴたりと調和し、とても住みやすい印象を受けました。実際コロナ以降は、小さなお子さんがいる若い夫婦の移住が増えているそうです。

食に関しても、ワインよりもビールがポピュラーだったり、フライドポテトの専門店があったり、郷土菓子にワッフルがあったりと、ベルギーやオランダを訪れているような錯覚に陥ります。

フライドポテト専門店の揚げ立てポテト!ノールでは、フライドポテトにつけるソースは、もちろんベルギーと一緒でマヨネーズが定番

オランダの郷土菓子「キャラメルワッフル」に似たタイプのノールのワッフル。フィリングの定番は、砂糖のシャリシャリ感が残るヴァニラ風味のバタークリーム

ワインよりビール派!フランスにおけるビール生産の中心地

フランスといえばワインのイメージですが、ここノールは、フランスのビール生産の中心であり、「Bière de garde」(ビエール・ド・ギャルド|貯蔵ビール)という独自製法のビールの発祥地でもあるとか。

これは、瓶詰めする直前まで、樽やタンクなどで低温保存しておくことからついた名前だそう。そのため、芳醇で濃厚な味わいとなり、ワインのように食事と一緒に楽しむビールに仕上がっています。


リールのレストランでサービスのムッシュがすすめてくれたビール。このビールもビエール・ド・ギャルドです

ワインの産地のブルゴーニュには「ブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)」をはじめとするワインを使った料理があるわけですから、ビールの名産地・ノールにビールを使った料理があるのは、いうまでもありません。

例えば、イギリスの郷土料理でクロック・ムッシュのルーツともいわれる「ウェルシュ・レアビット」に似たその名も「Welsh」(ウェルシュ)は、パンにたっぷりのビールをしみ込ませたパンとチーズのグラタンのようなもの。そのほかにも、雄鶏のワイン煮ならぬ「雄鶏のビール煮」があったり、何種類もの肉をビールで煮込んでテリーヌ型でかためた「Potjevlesh」(ポットジュヴレーシュ)などがあったり、ノールの郷土料理はビールを使ったレシピのオンパレードです!

ノールでいただくカルボナード・フラマンドは、パン・デピス(甘いスパイスブレッド)が入ることが多く、つけ合わせはフライドポテトが定番

今回はその中でも、1番ポピュラーなビールを使った料理、「Carbonade flammande」(カルボナード・フラマンド|牛肉のビール煮込み)をご紹介。さらっとしていながら濃厚で少しの甘味のあるこの料理は、その昔、領土を同じくしたベルギーの郷土料理でもあります。コクのある風味豊かなエールタイプのビールと一緒にお楽しみください。

Carbonade flammande<カルボナード・フラマンド>の作り方

レシピによっては、パン(カンパーニュ)やパン・デピスを加えてかさ増しをさせますが、それをせず、牛肉と玉ねぎとビールで煮込んでいます。本場のものは砂糖を多く使い甘味が強いので、甘さを抑えた仕上がりに。煮込み料理用の豚肉に替えてもOKですよ。

【材料】(3〜4人分)
牛肉(バラ・モモ・スネ肉など/カレー・シチュー用):500g
牛脂:2個 ※1
ベーコン:100g
玉ねぎ:1個(200g)
タイム:2枝
ローリエ:2枚
クローブ:2本
ビール:2本(660ml)※2
薄力粉:大さじ2
バルサミコヴィネガー:大さじ2
砂糖:大さじ2 ※あればきび砂糖のような未精製糖
塩:小さじ1
粗びき黒こしょう:適量
水:200ml

レッドソレル(酸味のあるマイクロハーブ):適量 ※3

※1:バター20gで代用してもOK
※2:ビールはノールのビールに近い味わいで、手には入りやすいベルギービールのブロンドがおすすめ。なければ、普通のビール(ラガー)と黒ビール(エール)を1:1で混ぜたものを使用してください。
※3:色や形、香りにアクセントがあればなんでも◎。スプラウト、クレソン、イタリアンパセリなどがおすすめです。

【作り方】
1. 材料をカットします。
・牛肉は3〜4cm角に切り(カレー・シチュー用はそのままでOK)、塩小さじ1/2とこしょうを少々まぶします。ベーコンは1cm弱幅の拍子切りにし、玉ねぎは薄皮をむいて薄切りにします。

2. 炒めて、煮込みます。
・鍋に牛脂1個を入れ、弱火にかけます。牛脂から十分な脂が出たら、中火にし、牛肉を加え、表面全体にしっかり焼き色がつくまで焼き、バットに移します。
・同じ鍋に残りの牛脂を入れ、脂が出たら、玉ねぎとベーコンを加え、玉ねぎがべっこう色くらいになるまで炒めます。
・薄力粉をふり入れ、軽く炒めます。
・バルサミコヴィネガー、ビール、水、ハーブ・スパイス類、砂糖、塩小さじ1/2を加え、軽くかき混ぜてふたをします。弱火で約1時間煮込みます。
・肉が十分にやわらかくなったら味をみて、足りないようなら塩を加えます。仕上げにこしょうをふったら完成です。

牛肉をコクのあるビールで煮込んだカルボナード・フラマンド、ぜひ料理で余った(笑)ビールとマリアージュしてくださいね!

★イベント情報
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